2008-12-27(Sat): 日進市立図書館のAmazonに思うこと

予想以上に反響が大きかった

・「日進市立図書館が「Amazonで買う」「Amazonで書評を見る」ボタンを設置している」(編集日誌、2008-12-26)
http://d.hatena.ne.jp/arg/20081227/1230348172

だが、

これは論議となりそうだ。自分自身も幾つか思うところがある……

という一節が波紋を呼んでしまっただろうか。ともあれ、自分の思うところを記しておく。

まず、基本的なところだが、私は今回のような取り組みには当然肯定的だ。というよりも、このような取り組みを図書館業界に説いてきたのは自分だという自負もある。それは、たとえば以下のような過去の講演に明らかだろう。

・「図書館・図書館員のためのWebの情報発信」【PPT】(大学図書館問題研究会京都支部京都ワンディセミナー、2006-09-23、於・京都市国際交流会館)
http://www.ne.jp/asahi/coffee/house/doc/daitoken_kyoto(20060923).ppt
・「講演「図書館・図書館員のためのWebの情報発信」@京都市国際交流会館」(編集日誌、2006-09-23)
http://d.hatena.ne.jp/arg/20060927/1159310636
・「インターネット時代のライブラリアン−県内公共図書館のウェブ対応を中心に」【PPT】(静岡県市立図書館協議会職員研修会、2008-01-17、於・沼津市立図書館)
http://www.ne.jp/asahi/coffee/house/doc/cmls(20080117).ppt
・「静岡県市立図書館協議会職員研修会で講演」(編集日誌、2008-01-17
http://d.hatena.ne.jp/arg/20080118/1200610012

論議となりそうだ」と書いたのは、図書館業界の中で賛否両論、紛糾しそうだということ。様々な場で実際に発言しているように、図書館に身を置くわけではない自分としては正直その議論にあまり関心はない。

ちなみに、以前、

・「播磨町立図書館のアフィリエイトへの違和感」(編集日誌、2007-06-21
http://d.hatena.ne.jp/arg/20070622/1182446999

という記事で播磨町立図書館によるアフィリエイト導入を問題視したことがあるが、今回の日進市立図書館とは意味合いが異なるだろう。

さて、「自分自身も幾つか思うところがある」の内容だが、大きく言って2つある。まずはデザイン面。

・例:『夢をかなえるゾウ』
http://lib.city.nisshin.lg.jp/opw/OPW/OPWSRCHTYPE.CSP?SID=419372_3e2elHkf00_54392&DB=LIB&MODE=1&PID2=OPWSRCH1&FLG=LIST&SRCID=1&SORT=-3&HOLD=NOHOLD&WRTCOUNT=50&PAGE=1&LID=3

を見ると、ページの左側に書影・カバー画像、「Amazonで買う」ボタン、「Amazonで書評を見る」ボタンがあり、中央に書誌情報、右側に「予約処理」ボタン他がある。書影・カバー画像はよいが、「Amazonで買う」ボタンや「Amazonで書評を見る」ボタンの場所には、本来は「予約処理」ボタンがあるべきではないか。そもそも、このページの一義的な目的は、本を借りることにあるのだろうから。もっと言えば、ページ下部にある

【所蔵】○冊
(予約確保:○件)
(予約待ち:○件)

の右横にこそ、「Amazonで買う」ボタンがあるべきだと思う。たとえば、

【所蔵】○冊
(予約確保:○件)
(予約待ち:○件) - 予約を待たずAmazonで買う

というように。

もう1つは、「論議となりそうだ」にいささか関係する。なぜ、Amazonだけなのか?という点は公の機関だけに議論とはなるだろう。だが、すでに述べたように、指定管理者の図書館流通センター(TRC)が、自社が運営するオンライン書店bk1アフィリエイトだけを導入していた播磨町立図書館とは事情が異なる。そして、すべてのオンライン書店にリンクしなければいけないというのも不合理だろう。もし、やたらとアフィリエイトのパートナーを増やし、リンク先を増やせば、蔵書検索(OPAC)の使い勝手が落ちるのは明らかだ。であれば、ある程度、アフィリエイトのパートナー数を絞り込む必要がある。

そこで「思うところ」だが、いっそ様々なオンライン書店の中で最も高い紹介料率を提示するオンライン書店アフィリエイト契約を結んではどうだろうか。この場合、別にオンライン書店に限る必要はないかもしれない。オフラインで展開する地元書店も、品揃えが可能ならこの競い合いに加われるだろう。たとえば、

・平安堂 - 長野を中心に展開
http://www.heiando.co.jp/
・谷島屋 - 静岡を中心に展開
http://www.yajimaya.co.jp/
大垣書店 - 京都を中心に展開
http://www.books-ogaki.co.jp/

といった県単位でチェーン展開をする書店は勝負できるのではないか。などと考えた次第。要するに、どうせやるならAmazonアフィリエイト導入に留まらず、図書館から書店に対してこのリンク枠を売りつけ、買わせるくらいの意気込みで取り組むといいのではないかということ。いかがだろうか。

なお、図書館の業界では否定的な意見も出るだろう。だが、意欲的に挑戦している他の図書館の足を引っ張る暇があるなら、自館のサービス改善に努めてほしい。

統計数理研究所、新機軸創発センターのサイトを公開(2008-11-20)

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統計数理研究所が新機軸創発センターのサイトを公開した(2008-11-20)。

・新機軸創発センター
http://www.ism.ac.jp/innovation/
統計数理研究所
http://www.ism.ac.jp/

同センターは2008年4月に発足しており、センター内には、

  1. 社会調査情報研究グループ
  2. 関数解析的統計推論グループ
  3. モンテカルロ計算研究グループ
  4. 乱数研究グループ

の4つの研究グループが設けられている。

統計数理研究所には、同センターのほかに、

  1. 統計科学技術センター
  2. 予測発見戦略研究センター
  3. リスク解析戦略研究センター

がある。このうち、予測発見戦略研究センターは下部のグループのうち幾つかが独自のサイトを公開している。新機軸創発センターにも、同様にグループごとのサイトを公開し、研究内容を紹介していってほしい。

国文学研究資料館、サイトをリニューアル(実施日不明)

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国文学研究資料館がサイトをリニューアルしている(実施日不明)。

国文学研究資料館
http://www.nijl.ac.jp/
国文学研究資料館の過去のサイト
http://web.archive.org/web/*/http://www.nijl.ac.jp/

おそらく、今秋行われた所在地の立川移転に伴うものだろう。ただし、変更が加えられたのは、ほぼトップページに留まっている。国文学研究資料館のサイトには、多数のデータベースがあり、人文系の学術資源の一方の雄となっている。しかし、サイトのつくり方には課題が多いままだ。トップページのリニューアルに留まらず、使い勝手を細部にまで意識した全体的なリニューアルに取り組んでほしい。

国立情報学研究所(NII)、CiNiiとJ-STAGE、Journal@rchiveの連携を開始(2008-11-17)

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国立情報学研究所(NII)がCiNii(NII論文情報ナビゲータ)とJ-STAGE(科学技術情報発信・流通総合システム)、Journal@rchiveの連携を開始した(2008-11-17)。

・CiNii(NII論文情報ナビゲータ)
http://ci.nii.ac.jp/
国立情報学研究所(NII)
http://www.nii.ac.jp/
J-STAGE(科学技術情報発信・流通総合システム)
http://www.jstage.jst.go.jp/browse/-char/ja
・Journal@rchive
http://www.journalarchive.jst.go.jp/japanese/top_ja.php
科学技術振興機構JST
http://www.jst.go.jp/
・「CiNiiとJ-STAGE,Journal@rchiveとのシステム連携を開始しました」(国立情報学研究所(NII)、2008-11-17)
http://ci.nii.ac.jp/cinii/pages/index.html#20081117

一部の文献について、CiNiiの検索結果ページや詳細ページから、J-STAGEやJournal@rchiveの詳細ページへのリンクが表示されるようになっている。J-STAGEやJournal@rchiveに本文が収録されているすべての文献にリンクが設けられているわけではないが、まずは重要な一歩と言えるだろう。

東京大学附属図書館、電子展示「かわら版・鯰絵にみる江戸・明治の災害情報−石本コレクションから」を公開(2008-11-21)

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東京大学附属図書館が電子展示「かわら版・鯰絵にみる江戸・明治の災害情報−石本コレクションから」を公開した(2008-11-21)。

・電子展示「かわら版・鯰絵にみる江戸・明治の災害情報−石本コレクションから」
http://www.lib.u-tokyo.ac.jp/tenjikai/tenjikai2008/
・「地震火災版画張交帖」(石本コレクションI)目録
http://gazo.dl.itc.u-tokyo.ac.jp/ishimoto/
・「平成20年度東京大学附属図書館特別展示<電子展示>の公開について」(東京大学附属図書館、2008-11-21)
http://www.lib.u-tokyo.ac.jp/koho/news/news/fuzokuto_08_11_21.html
東京大学附属図書館
http://www.lib.u-tokyo.ac.jp/

同展は、2008年10月24日(金)から11月26日(水)まで、東京大学総合図書館で行われていたもので、展示内容を再現している。展示内容は東京大学地震研究所の第2代所長を務めた故・石本巳四雄さん(1893年〜1940年、在任:1933年〜1939年)の遺品からなる石本コレクション。今回の展示会にあたってコレクションは石本コレクションIと石本コレクションIIに分けられ、石本コレクションIの478点はすべて画像が公開されている。

なお、石本旧蔵資料の一部は所長を務めたは東京大学地震研究所にも寄贈されており、その一部は東京大学地震研究所のサイトで公開されている。

東京大学地震研究所
http://www.eri.u-tokyo.ac.jp/Jhome.html
東京大学地震研究所図書室
http://www.eri.u-tokyo.ac.jp/TOSHO/lib.html

一連の事情は、北原糸子さん(神奈川大学教員)による

・石本コレクションについて
http://www.lib.u-tokyo.ac.jp/tenjikai/tenjikai2008/thema.html
http://gazo.dl.itc.u-tokyo.ac.jp/ishimoto/about.html

に詳しい。

1994年以降、毎年の展示会の内容を電子展示として保存・提供し続ける東京大学附属図書館には頭が下がる。

東京大学附属図書館 - 特別展示会
http://www.lib.u-tokyo.ac.jp/koho/tenjikai/

継続的な取り組みに感謝しつつ、今後は今回の石本コレクションが示すように学内で分散する資料をさらに統合して提供していくような活動の広がりを期待したい。

郡山女子大学図書館、SBMを応用した郡山女子大学図書館パスファインダーを試験公開(2008-11-21)

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郡山女子大学図書館がソーシャルブックマークSBM)を応用した郡山女子大学図書館パスファインダーを試験公開した(2008-11-21)。

郡山女子大学図書館パスファインダー
http://library.koriyama-kgc.ac.jp/path/
・「パスファインダーを試験的に運用します」(郡山女子大学図書館、2008-11-21)
http://library.koriyama-kgc.ac.jp/modules/bulletin/index.php?page=article&storyid=147
・「SBMを応用した「パスファインダー」の試験的な運用を始めます」(郡山女子大学図書館、2008-11-21)
http://library.koriyama-kgc.ac.jp/modules/bulletin/index.php?page=article&storyid=148
郡山女子大学図書館
http://library.koriyama-kgc.ac.jp/

  1. 必読文献
  2. 論文の書き方
  3. 資料の探し方
  4. 参考図書

の4つのテーマについて、情報源情報がまとめられている。

この取り組みについては、

・「図書館によるソーシャルブックマーク活用−パスファインダーに代えて」(編集日誌、2007-12-04)
http://d.hatena.ne.jp/arg/20071210/1197214871
・「方々で話しまくり、書きまくる意義」(編集日誌、2008-02-27)
http://d.hatena.ne.jp/arg/20080302/1204429768
・「声にしても何も変わらないかもしれないが、声にしなければ何も変わらない」(編集日誌、2008-04-07)
http://d.hatena.ne.jp/arg/20080408/1207608012

と、これまで何度か取り上げてきているが、ついに日の目を見たようだ。大学図書館公共図書館パスファインダーの多くが、旧来の紙媒体の発想から抜け出られない中、おそろしく画期的な取り組みだ。しばらくは試行錯誤が続くだろうが、パスファインダーの未来を先取りするものとなるだろう。

なお、SBMの応用に関しては、私自身、日本病院ライブラリー協会第32回総会および2007年度第1回研修会で講演し、

・「病院ライブラリアンにとってのWeb2.0−そのビジョンとミッションを踏まえて」【PPT】(第32回日本病院ライブラリー協会総会および2007年度第1回研修会、2007-05-12、於・全米販食糧会館)
http://www.ne.jp/asahi/coffee/house/doc/jhla(20070512).ppt
・「日本病院ライブラリー協会第32回総会および2007年度第1回研修会1日目」(編集日誌、2007-05-11)
http://d.hatena.ne.jp/arg/20070511/1178883071
・「日本病院ライブラリー協会2007年度第1回研修会で講演」(編集日誌、2007-05-12)
http://d.hatena.ne.jp/arg/20070512/1178958638

その内容を記録として残している。

・「「ほすぴたる らいぶらりあん」に記事掲載」(編集日誌、2007-10-04)
http://d.hatena.ne.jp/arg/20071006/1191602742

明治大学史資料センター、閲覧室開架図書目録を公開(2008-11-22)

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明治大学史資料センターが閲覧室開架図書目録を公開した(2008-11-22)。

・「閲覧室開架図書目録の公開」(明治大学、2008-11-22)
http://www.meiji.ac.jp/koho/hus/html/dtl_0003469.html
明治大学史資料センター
http://www.meiji.ac.jp/history/

同センターが所蔵する大学史関係書籍約500冊が一覧できる。公開は喜びたいのだが、Excel形式だけでの公開にはやはり残念な思いが残る。ダウンロードした後の利便性という意味では、もちろんExcel形式のファイルは有用なのだが、軽く閲覧したいときはかえって不便なものだ。Excel形式のファイルをhtml形式のファイルに直すことはそれほどの手間ではない。せっかく公開するのであれば、htmlでの公開もお願いしたい。

埼玉大学図書館、埼玉大学学術情報発信システム「SUCRA」を埼玉県地域共同リポジトリ「SUCRA」に移行(2008-11-21)

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埼玉大学図書館が埼玉大学学術情報発信システム「SUCRA」を埼玉県地域共同リポジトリ「SUCRA」に移行し、文教大学の研究成果の収録を開始した(2008-11-21)。

・埼玉県地域共同リポジトリ「SUCRA」
http://sucra.saitama-u.ac.jp/
・「埼玉県地域共同リポジトリの運用を開始! 文教大学の研究成果が登録されました。」(2008-11-21)
http://sucra.saitama-u.ac.jp/modules/news/article.php?storyid=40
埼玉大学図書館
http://www.lib.saitama-u.ac.jp/

なお、移行に伴い、「SUCRA」の正式名称を「Saitama University Cyber Repository of Academic Resources」から「Saitama United Cyber Repository of Academic Resources」へと変更している。

現時点では文教大学の研究成果は18件登録されているに過ぎないが、今後は、

・埼玉県大学・短期大学図書館協議会
http://www.sala.gr.jp/

の加盟館を中心に参加機関を拡大していく予定という。

画期的な取り組みだが、埼玉大学図書館のトップページでは依然として「SUCRA 埼玉大学学術情報発信システム」としてリンクされていることや、文教大学側からSUCRAへのリンクがないことは残念。地域共同リポジトリという理念を掲げる以上は、このような点の小さな改修を欠かしてはいけないだろう。

・「埼玉大学図書館、埼玉大学学術情報発信システム「SUCRA」を試験公開(2007-03-20)」(新着・新発見リソース、2007-04-10)
http://d.hatena.ne.jp/arg/20070410/1176137250
・「埼玉大学図書館、埼玉大学学術情報発信システム「SUCRA」を正式公開(2008-03-01)」(新着・新発見リソース、2008-03-23)
http://d.hatena.ne.jp/arg/20080323/1206283996