2005-12-17(Sat):

国際交流基金図書館が2006年3月末まで一時休館している。情報リソースセンター(仮称)としてリニューアルするための改装工事を行なうためだという。同図書館のお知らせによれば、「これまで海外の日本研究者向けの専門図書館であったものから、一般の日本人のみなさまにも開かれたジャパンファウンデーションの窓口としてのセンターに生まれ変わ」るとのこと。この方針についていま詳しくコメントするだけの知識はないが、「お知らせ」のなかで気になる点が2つある。

1つは「現在所蔵しております図書総数計49,000冊は、今回の改装にともなって約1割程度の数の書籍を処分する」という点であり、もう1つは「旧アジアセンター・ライブラリー(2004年4月に廃止)から継続して受入れてきました図書・雑誌・新聞については、収集および閲覧を中止」するという点である。

1点目の処分対象となる図書は、「印刷物の形態からさまざまなメディアで代替できる書物・資料類や、複本のあるもの、あるいは本来の集書方針には入っていなかった自然科学関連等の書籍や年鑑類」と説明されている。だが、実際にその判断が妥当なのかどうか、サイト上で公開し利用者の判断を受けられるようにするとよいのではないか。そのほうが処分の実施後、つまり取り返しがつかない時点での批判を避けられるだろう。

2点目のアジアセンター・ライブラリーの伝統を受け継いだ図書、雑誌、新聞の収集と閲覧を中止するという方針は賛成できない。かつてあった国際交流基金アジアセンター・ライブラリーは、東南アジアを中心にアジア地域の資料を集めた専門図書館であった。国際交流基金独立行政法人化(2003年10月)とその後の機構改革(2004年5月)によって、母体であるアジアセンターは廃止され、図書館は基金の本部図書館に統合されたという経緯がある。機構改革の趣旨は国際交流基金事業を地域ごとに区分することなく、文化芸術交流、日本語、日本研究・知的交流の3つに再編成することにあったと記憶している。

このような趣旨と経緯に照らして考えたときに、アジア関係の図書館事業を中止するという今回の決定は正しいのだろうか。私自身は大いに疑問である。基金がこの事業を中止しても、その代替となりうる専門図書館がほかにあるとも思えない。

そもそも、独立行政法人において、このような決定はどのように進められているのだろうか。国際交流基金の「平成17年度計画分野別計画」を見る限り、図書館から情報リソースセンター(仮称)への役割転換の方針は示されているものの、アジア関係図書のサービス中止はふれられていない。「分野別計画」は大枠を示すものである以上、ここでふれられていないことはやむをえないのだろうか。それでは、他にこの方針を公にした場はあっただろうか。実際は対外的な事前アナウンスはないまま、事業の中止が決定されているのではないだろうか……。国際交流基金はインターネットでの情報発信に力を入れており、その点では大変評価しているのだが、根本的な情報公開の姿勢にはまだ大きな課題があるのではないだろうか。

さて、話が広がってしまったが、国際交流基金には次の二点を求めたい。

1. 書籍処分の内容を事前に公開すること
2. アジア関係資料の収集・閲覧を中止する方針を一時凍結すること
3. 情報リソースセンター(仮称)の構想を早期に公開すること

国際交流基金の関係者で、この日誌をご覧になっている方もいることだろう。ぜひ組織の内部で検討してほしい。もちろん、この件について直接ご連絡いただいてもよい。
国際交流基金図書館
http://www.jpf.go.jp/j/about_j/library/
・平成17年度計画分野別計画【PDF】
http://www.jpf.go.jp/j/about_j/business/data/17_area.pdf