2006-03-06(Mon): 公共財としての議会議事録

朝日新聞に「環境問題、戦前から 帝国議会論議DB化 大阪電通大」(asahi.com2006-03-04)という記事。小田康徳さんを中心に帝国議会の「衆議院本会議の議事録から、公害・環境問題に関連する質問や答弁など約650件、700万字分を抜き出し」、「今後数年かけてデータベース化する。」という。小田康徳さんのサイト「猪名川歴史研究所」では、帝国議会衆議院公害関係議事目録が公開されており、おそらくこういった資料がデータベース作成の基礎資料となるのだろう。小田さんの活動に期待したい。
さて、こういうニュースにふれると、国立国会図書館には帝国議会会議録検索システムの完成をぜひ急いでほしいと思う(「国立国会図書館帝国議会会議録検索システムにデータを追加」を参照)。そして、ぜひ構築されたデータベースを第三者が自由に使えるようにしてほしい。そうすれば、今回の小田さんたちの取り組みでも、一からデータを入力する必要がなくなり、資金と労力を節約できる。たとえば、帝国議会会議録検索システムや国会会議録検索システムに収められたデータは公共の財産として扱い、電子化されたテキストを第三者が自由に利用できるようにできないだろうか。
そもそも帝国議会や国会の議事録の著作権はどのように扱うべきなのだろうか。著作権法第40条には、

(政治上の演説等の利用)
第40条
公開して行なわれた政治上の演説又は陳述及び裁判手続(行政庁の行なう審判その他裁判に準ずる手続を含む。第42条において同じ。)における公開の陳述は、同一の著作者のものを編集して利用する場合を除き、いずれの方法によるかを問わず、利用することができる。
2 国若しくは地方公共団体の機関、独立行政法人又は地方独立行政法人において行われた公開の演説又は陳述は、前項の規定によるものを除き、報道の目的上正当と認められる場合には、新聞紙若しくは雑誌に掲載し、又は放送し、若しくは有線放送することができる。

とあるが、どのように解釈していいのか判断がつかない。詳しい方、ぜひご教示ください。
さて、著作権法の問題をひとまず脇に置き、帝国議会や国会の議事録が自由に利用できるようになれば、さまざまな研究者や一般の市民が独自の観点で議事録を編みなおすことができる。今回小田さんらが取り組もうとしている公害・環境というテーマでのデータベースづくりや、すでに田中明彦さんが取り組んでいる「帝国議会・国会における総理大臣演説、国会での外務大臣・大蔵大臣・経済企画庁長官の演説」は、その一例だろう。
特に資金面での節約効果は大きいはずだ。田中明彦さんによる「帝国議会・国会における総理大臣演説、国会での外務大臣・大蔵大臣・経済企画庁長官の演説」は、戦後日本政治・国際関係データベースのコンテンツの一つとして公開されている。このデータの作成には、3つの科学研究費補助金が使われている。実際にどれだけの費用が支給され、そのうちどれだけの金額が議会議事録の電子化に費やされたのかはわからない。しかし、もし国立国会図書館が作成しているデータが利用できるなら、今後は大幅に費用を節約できることだろう。
国立国会図書館には、ぜひこのような形でのデータの利用方法を視野に入れつつ、帝国議会会議録検索システムの完成に進んでいってほしい。

・「環境問題、戦前から 帝国議会論議DB化 大阪電通大」(asahi.com2006-03-04
http://www.asahi.com/kansai/news/OSK200603040036.html
猪名川歴史研究所(小田康徳さん)
http://www.jttk.zaq.ne.jp/bacas400/
帝国議会衆議院公害関係議事目録
http://www.jttk.zaq.ne.jp/bacas400/inareki/kankyosi/gijimoku.htm
国立国会図書館帝国議会会議録検索システムにデータを追加
http://d.hatena.ne.jp/arg/20060306/1141639222
帝国議会会議録検索システム
http://teikokugikai-i.ndl.go.jp/
・国会会議録検索システム
http://kokkai.ndl.go.jp/
国立国会図書館
http://www.ndl.go.jp/
・戦後日本政治・国際関係データベース(田中明彦さん)
http://www.ioc.u-tokyo.ac.jp/~worldjpn/documents/
・データベース「世界と日本」(田中明彦さん)
http://www.ioc.u-tokyo.ac.jp/~worldjpn/