2006-03-25(Sat): 「機関リポジトリ」のままでよいのか −訳すことを通した理解と浸透

1年ほど前の日誌(2005-02-14(Mon))で「リポジトリ(repository)」という言葉を日本語に翻訳する努力をすべきではないか、と書いた。

■[編集日誌]2005-02-14(Mon):

昨日の日誌にある「リポジトリ」という言葉だが、日本語に訳さなくてよいのだろうか。Repositoryは、集積所、貯蔵室、あるいは宝庫といった意味合いだが、日本での認知度ははてしなく低い単語だろう。すでに「NII-REO(NII電子ジャーナルリポジトリ)」「千葉大学学術成果リポジトリ」といった具合に実際に使われており、「学術機関リポジトリ」という言葉は、三省堂の「デイリー新語辞典」に収録されている。

「〔リポジトリ(repository)は容器・(資源・情報の)宝庫などの意〕

大学や学術機関が設ける,インターネット上の電子書庫のこと。論文や実験データなどの知的生産物を収集・蓄積・保存し,内外へ発信する。

〔海外では大学図書館を中心にしてシステムを構築する事例が増えており,日本でも普及が期待される〕」(デイリー新語辞典)。

やはり、わかりにくい印象が強い。図書館用語をわかりやすくしようという、図書館用語読みかえ辞典のような試みもある。「リポジトリ」についても適訳を探し、根づかせる試みを関係者に期待したい。

・NII-REO(NII電子ジャーナルリポジトリ
http://reo.nii.ac.jp/
千葉大学学術成果リポジトリ
http://mitizane.ll.chiba-u.jp/curator/
・図書館用語読みかえ辞典
http://f53.aaa.livedoor.jp/~ninonino/

しかし、特にそのような動きはみられないまま、主に大学図書館が中心となって自校の研究者の研究成果を収集・保存・公開する機関リポジトリが相次いで登場している。その一方、機関リポジトリに対する研究者の理解が深まらないという指摘もなされているようだ。

このような状況を踏まえ、あらためて提案したい。「リポジトリ」に日本語で適切な訳語を与えることを。

こう主張する理由として以下の点を挙げておこう。

1. 「リポジトリ」は見聞きして一瞬でだれもが意味が理解できる言葉ではなく、浸透が期待できない。
2. 「Repository」をカタカナにすると、「リポジトリ」と「レポジトリ」に表記がわかれ混乱の元である。
3. 翻訳することはその概念の意味を理解することであり、「リポジトリ」の使用はその努力を結果的に怠っている。

特に懸念するのは、3.である。「Repository」を「リポジトリ」に、「Institutional Repository」を「機関リポジトリ」にそのまま置き換えている現状には、リポジトリを推進する方々が欧米圏で先行している「機関リポジトリ(Institutional Repository)」をどのように理解しているのかがうかがえない。

研究者が抱くであろう「機関リポジトリ(Institutional Repository)とは何か?」という問いかけに対して求められている答えは、直訳調の解説だろうか。そうではないだろう。求められているのは、その意味するところをより簡潔に言い表す一語である。どのような日本語に翻訳されるのか、どのような日本語で表現されるのか、そこには「機関リポジトリ(Institutional Repository)」を推進する方々の思想が現れていなければいけない。もちろん、それほどの適訳を見つけ出すことは簡単ではないだろう。だが、悩み苦しんだ末に生み出された訳語は、「機関リポジトリ(Institutional Repository)」を論じる何本の論文よりも、「機関リポジトリ(Institutional Repository)」をPRする何回のセミナーよりも、雄弁で説得力を持つはずだ。

賛否は別として、せっかく様々な「機関リポジトリ(Institutional Repository)」が整備されつつある。その広報と普及を兼ねて、たとえば「機関リポジトリ(Institutional Repository)」の適訳を研究者と一般の市民に広く募集してみてはどうだろうか。そのような催しを行うことで、いま「機関リポジトリ(Institutional Repository)」と呼ばれているものに対して、関係者一人ひとりが理解を深め、より多くの人々に浸透させていくことができるのではないか。

関係者の方々にはぜひ検討してほしい。

さて、私であれば、なんと名づけるだろうか。自分自身、少し考えてみたい。あわせて、この日誌をお読みの方々からのご提案を受け付けたい。ご自分のブログをお持ちの方はぜひトラックバックしてほしい。ブログをお持ちでない方はぜひコメントを書き込んでほしい。みなさんのご提案を心待ちにしている。

・2005-02-14(Mon)の編集日誌
http://d.hatena.ne.jp/arg/20050220/1134889326