2006-07-17(Mon): 白田秀彰さんとの縁

昨日、『インターネットの法と慣習 かなり奇妙な法学入門』(ソフトバンク新書、735円)の出版記念パーティーにお招きいただいた白田秀彰さんとの縁はいつに始まるのだろう、と思って、メールボックスを漁ってみた。判明。
私が白田さんを初めて紹介したのが本誌第007号(1998-10-04)で、その翌日に直接メールのやりとりをしている。実に8年前のことだ。当時、白田さんは日本学術振興会の特別研究員で、サイト「白田の情報法研究報告」はまだ白田さんの母校である一橋大学のサーバーで公開されていた。
ひるがえって、自分はとなると、まだACADEMIC RESOURCE GUIDE(ARG)を初めて3ヶ月目の時期であり、メールマガジンのレイアウトが非常に拙いことがまず目につく。そして、編集後記で書いていることが、自嘲するのではなく若さに満ちている。
この間、白田さんは学位論文を本としてまとめ、法政大学に職を得、学界にとどまることなく、インターネットをはじめ、ほうぼうで活躍してきている。すばらしい。
またひるがえって自分自身はどうだろうか。ようやく自著を刊行するところまではたどりつきそうだが、ほかにこれはといえる仕事をしてきただろうか。8年前、白田さんにいただいたメールをいま読み返すと、二つのことがわかる。
すでに当時から学術サイトを網羅して批評することの意義を高く評価してくださっていたこと、そして出版社の役割が変容していくとしたら、そのときはACADEMIC RESOURCE GUIDE(ARG)が一つのモデルとなるよう期待を寄せていただいていたことだ。自己採点ではこの二つの可能性を現実のものとできたとは、とうてい言えないだろう。もっと真剣にがんばらなくてはいけないと痛感する。

さて、白田さんについて、もう一つ語りたい。まず文章の拙さを恥じつつも、自分が初めて白田さんを紹介したときの文章を引こう。

【発行者】白田秀彰日本学術振興会特別研究員)
【所 在】http://leo.misc.hit-u.ac.jp/hideaki/indexj.htm
【解 説】「研究している内容をリアルタイムに提供することを目的として」開設されたという制作者の言葉に背かないサイトです。制作者の最近の業績の多くがPDFファイルで提供されており、近年の著作権法の研究動向を垣間みることができるような気がします。しかし、このサイトの制作者について述べるべきより重要な点は、「青空文庫」(http://www.voyager.co.jp/aozora/)とのかかわりでしょう。このサイトでも公開されている「もう一つの著作権の話 ― 中学生、高校生のための著作権の基礎理論 」は、「青空文庫」に収録された白田氏の論文に対して中学生の読者から寄せられた「難しい」という言葉を受けて白田氏が書き下ろし、エキスパンドブック形式で電子出版したものとのことです。現実と切り結ぶこの果敢な新進の研究者に心からの拍手を送りたくなります。

ACADEMIC RESOURCE GUIDE(ARG)第007号(1998-10-04)
http://www.ne.jp/asahi/coffee/house/ARG/004.html
※掲載時のママ。文中のURLはその後、変更されている。

出版記念パーティーで白田さん自身が青空文庫へのコミットについて語っていたが、この8年間、白田さんの姿勢が一貫して変わらず、青空文庫への深い支持を持ち続けていることに感動する。いまでこそ青空文庫は知られた存在であり、日本語の電子テキストの公開サイトとしては一つの権威になったとすらいえるだろう。そして、テキストの公開に至る深い哲学と、一種の運動体としての成熟度合いも知られている。
だが、白田さんが青空文庫への支持を行動をもって示したのは8年も前である。まだ青空文庫の評価が確立していないどころか、そもそもその先行きが不透明なころである。青空文庫に対する考え方は人ぞれぞれだろう。それはそれとして、研究者としての将来も決して定まっていなかった時期に進んで自らの専門性を生かし、青空文庫にコミットした白田さんの姿に感動を覚えるのだ。

・『インターネットの法と慣習 かなり奇妙な法学入門』
 (白田秀彰著、ソフトバンク新書、735円)
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4797334673/arg-22/
・「インターネットの法と慣習」(Hotwired Japan
http://hotwired.goo.ne.jp/original/shirata/
・白田の情報法研究報告
http://www.welcom.ne.jp/hideaki/hideaki/indexj.htm