2007-02-19(Mon): ブログまとめ読み−研究者コミュニティー、科学史家養成、オープンアクセス

最近、RSSリーダーを放置したままだったので、研究者のブログを一気にまとめて読んだ。以下、メモとして特に気になった記事を4点記しておこう。

柳田充弘さんが、

・「研究者コミュニティーを考える」(柳田充弘の休憩時間 Intermission for M. Yanagida、2007-02-15)
http://mitsuhiro.exblog.jp/5533327

で、研究者コミュニティーを4つに分類している。

(前略)研究者を囲むものに四つの「社会」を考えました。社会よりはカタカナですがコミュニティーを使った方がより意味が伝わりやすいような気もします。コミュニティーは、共同体、集合体とも訳されるでしょうが、その中に、共通の特徴を持つ集団という概念が入っています。
それらの四つは、
研究仲間−研究者コミュニティ、国際的な広がりのある関係研究者なかま
研究組織・機関(大学、研究所)内でのコミュニティー
研究費(給与)を出す組織・機関におけるコミュニティー
一般社会のコミュニティー(納税者国民、メディア、家族、地域社会)
研究者はこれら4つのコミュニティーに囲まれて生きているのですが(後略)

研究者コミュニティーとは何か?ということを最近ずっと考えているので、参考になる。自分にとって実態を一番とらえにくいのが、3番目の「研究費(給与)を出す組織・機関におけるコミュニティー」だ。高久雅生さん(国立情報学研究所)が進めている科研費データベースにもとづく研究者情報ブラウジングツールの研究は、まさにこの3番目の研究者コミュニティーの姿を描き出すものになるかもしれない。

・たかくまさおのホームページ(高久雅生さん)
http://masao.jpn.org/

次いで、

・「科学史家養成はいかにあるべきか」(田中浩朗の教育研究日誌、2007-02-13)
http://ohst.jp/nissi/archives/2007/02/post_373.html

日本科学史学会2004年度年会のシンポジウム「科学史家養成はいかにあるべきか 科学技術史大学院教育の現状と課題」を振り返っている。減少傾向にあるとはいえ、日本は文学部所属の歴史学科が数多くある。そのような伝統的な史学の場では科学史はどれくらい扱われているのだろうか。

三番目は、昨年『活字のない印刷屋−デジタルとITと』(印刷学会出版部、2006年)を上梓した中西秀彦さんの

・「オープンアクセスの経済効果」(オーエルジェイ、2007-02-12
http://olj.cocolog-nifty.com/weblog/2007/02/post_4f75.html

である。文章の主旨とは異なるところへの反応で申し訳ないが、次の一節に考えさせられる。

とどのつまり学術雑誌に関しては発信費用が圧倒的に安くなったが、ゼロではない。とすると、オープンアクセスを真に機能させようとすると、どこかで誰かがお金を負担しなければならない。

自分はこの前提は変えたところで、考えを進めていきたいと思っている。著者から集めた掲載料で運営を維持するという著者負担モデルの意味は、むしろ費用を負担してまでも発表したいものを集めるという選別の手段として有効なだけではないだろうか。

・『活字のない印刷屋−デジタルとITと』(中西秀彦著、印刷学会出版部、2006年、1680円)
http://www.amazon.co.jp/gp/product/4870851857/arg-22/

最後は、吉川日出行さんの

・「ブログの分類あれこれ」(ナレッジ!?情報共有…永遠の課題への挑戦、2007-02-13)
http://blogs.itmedia.co.jp/knowledge/2007/02/post_1ab3.html

を紹介したい。先日「情報管理」49-11(科学技術振興機構2007-02-01)に掲載された

・「「Web2.0」時代に対応する学術情報発信へ:真のユーザー参加拡大のためのデータ開放の提案」
http://www.jstage.jst.go.jp/article/johokanri/49/11/49_632/_article/-char/ja

を偶然お読みいただたようで、その中でふれた学術系ブログの6類型について言及していただいている。吉川さんは記事の中で、これ以外のブログの分類方法について幾つかの記事を紹介している。自分の原稿をきっかけに吉川さんがブログの類型を考察していく様子に感動を覚える。
さて、ACADEMIC RESOURCE GUIDE(ARG)らしいコメントをするとすれば、記事が無料で公開されている意味はここにあるということではないか。「ネットサーフィンをしていて偶然見つけた」ということなので、吉川さんは「情報管理」を定期的に読んでいるわけではないのだろう。しかし、一方でナレッジマネジメントを中心としたコンサルティングを仕事とする吉川さんにとって、拙稿は多少なりとも意味があるだろう。ウェブでの無料公開がなければ、吉川さんと拙稿はおよそ出会うことはなかったはずだ。新たな未知の読者に出会える機会を増やすことの意味はやはり小さくない。