2007-03-09(Fri): 情けは人のためならず−出版社による他社刊行物の紹介

東京大学出版会東大出版会メールマガジン(文系)の編集後記にこんなコメントがあった。残念ながらバックナンバーは公開されていないが、

南原繁二題」でもふれられていますが、岩波書店が「南原繁著作集」全10巻を、限定250セットでしています。南原の全著作をご覧になりたい方はこの著作集を、『文化と国家』『政治理論史』だけ欲しいのだがという方は、小会からこのたび刊行した新装版をお求めください。
なぜ東大出版会のメルマガで岩波書店の宣伝をするのだろう、と疑問を感じた方は、
http://www.utp.or.jp/bd/978-4-13-001004-7.html
http://www.iwanami.co.jp/moreinfo/2004860/index.html
を見比べてみてください。(と)

という内容である。

東大出版会メールマガジン(文系)
http://www.utp.or.jp/mm/index.html

東京大学出版会岩波書店が刊行する『南原繁著作集』にふれたことはえらいのだが、「なぜ東大出版会のメルマガで岩波書店の宣伝をするのだろう」という疑問を読者に持たれてしまうかもしれない、と思ってしまうところに出版社のPRに対する考えの甘さがないだろうか。別に同じ著者の本だから紹介することが文化的であると考える必要はなく、本を売ることを考えたときに、自社の本をより効果的にPRすることを考えればいいのだと思う。
実際、「東大出版会メールマガジン(文系)」の編集後記には、「『文化と国家』『政治理論史』だけ欲しいのだがという方は、小会からこのたび刊行した新装版をお求めください」とあり、岩波書店版の全集の存在にふれることで、あらためて著者である南原繁への関心を高めつつ、東京大学出版会が刊行している『文化と国家』と『政治理論史』の二著の魅力を語っている。まったくもって正しい。ただただ自社の本を広めることを考え抜けば、同じ著者による本、同じテーマの本に積極的にふれることが、本のマーケティングとして正攻法であるはずだ。
出版社が共同で特定テーマの図書目録(例「歴史図書総目録」)をつくるという手法もあるが(かつて私も教育書の総目録をつくる仕事をしていた)、そんな大がかりなことでなくていい。もっとニッチなレベルでよいので、同一の著者や類似のテーマの本を出版社の垣根を越えて紹介することが、最終的に自社の利益へとつながるはずだ。