2007-04-27(Fri): 「ウェブ研究」という枠組み

・『ウェブがわかる本』(大向一輝著、岩波ジュニア新書、2007年、987円)
http://www.amazon.co.jp/gp/product/4005005624/arg-22/

を上梓した大向 一輝さんがブログ「清澄日記5.0」に

・「ウェブ研究をはじめましょう」(清澄日記5.0、2007-04-20)
http://d.hatena.ne.jp/i2k/20070420/start_web_research

という記事を書いている。ウェブプロデューサーを生業としつつ、インターネットの学術利用に関心を持つ自分としては、特に次の一節にうなずく。

ウェブ研究はサイエンスなのかエンジニアリングなのか
そんなことを問うような時代ではないのかも知れませんが、やはり立場によってアプローチは変わってくるのではないかと思います。ものすごく乱暴に言えば、サイエンスとは自然の中から真理と呼べるような仮説を見出す作業で、エンジニアリングは人の役に立つものを提供する作業です。これをウェブに対応させると、ウェブという社会現象には何らかの本質があり、掘り下げていくことでそれを見つけようというのがサイエンスの立場で、社会現象を生み出すにはどのようなしくみが必要なのかを考えるのがエンジニアリングの立場と言えます。もちろん、研究の時々に応じて立場が入れ替わったり、複合的なアプローチを取ることは十分にあり得ます。

大向さんも書いているが、サイエンスとエンジニアリングの「複合的なアプローチ」がありうるところ、そのハードルがきわめて低いところが、ウェブの面白さではないだろうか。
しかし、研究者であり、開発者であり、経営者でもある大向さんの下で学べる学生がうらやましい。

ところで、上に引いた節の上に

ウェブの何を研究すべきか
ひとくちにウェブ研究といっても、その内実は多種多様です。ウェブを構成しているのはハードウェア、ネットワーク、プロトコル、ソフトウェア、サービス、ユーザー、その組み合わせとしての社会現象まで、数え上げるときりがありません。そのすべてをひとりで研究し尽くすことができない以上、ウェブのどういった要素について研究をしたいのかをまず考える必要があります。

という一節がある。この点は自分自身でもよく考えてみなければいけないかもしれない。小著『これからホームページをつくる研究者のために』では、その時点で自分が持っている問いを以下のように分類してみた。

  1. インターネットを情報入手の手段として利用することは、
    1. 研究の手段を変えていくのか
    2. 研究の対象を変えていくのか
    3. 研究の過程を変えていくのか
    4. 研究の成果を変えていくのか
  2. インターネットを情報共有の手段として利用することは、
    1. 研究の手段を変えていくのか
    2. 研究の対象を変えていくのか
    3. 研究の過程を変えていくのか
    4. 研究の成果を変えていくのか

だが、その後のWeb2.0の浸透もあり、もっと考えを深める必要がありそうだ。