2007-06-14(Thu): 『大企業のウェブはなぜつまらないのか』(本荘修二著、ダイヤモンド社、2007年、1680円)

・『大企業のウェブはなぜつまらないのか‐顧客との対話に取り組む時機と戦略』(本荘修二著、ダイヤモンド社、2007年、1680円)
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大企業のウェブはなぜつまらないのか―顧客との対話に取り組む時機と戦略

を読了。「まえがき」で著者の本荘さん自身が書いているように「この本は、ウェブの本というより経営書」であるという位置づけを見落とさないことが重要だ。ここを見落とすと、本書は書名から想像する内容と実際の内容に違いがあるように思えるだろう。逆に経営書ととらえれば、書名と内容がずれているとはあながち言えないように思う。本庄さんのブログに、

こういう本があったらなという大企業のマネジャーの声が本書を著すきっかけとなった。そして大企業数社の経営幹部・マネジャーとの議論が本書のベースとなっている。

・「新著『大企業のウェブはなぜつまらないのか』その1」(Dr.本荘の新事業Blog、2007-02-17)
http://www.honjo.biz/blog/index.php?UID=1171674000

とあることから察せられるように、本書の基本的な読者は自社のウェブ活用に満足できない大企業の経営者や管理職だろう。ウェブに不満を持っていたり、ウェブを敬遠していたり、という大企業のなかの人には、抵抗感なく読み進められるのではないだろうか。

そして、もう一方の読者として、企業や団体にウェブの活用を進めるコンサルタントや営業職もまた本書を重宝したほうがいいと思う。具体的なノウハウはそれほど語られるわけではない。また、語られているノウハウの多くも、ITの世界に身を置く人間にとっては当然のことが多いだろう。だが、そういったある意味小手先のテクニックではなく、より本質的な方法論が語られているのが本書の魅力ではないか。特に第七章「ロードマップ」で語られる、

  1. なぜネット化するのか、なにを目指すのか
  2. ネット化戦略を考えるにあたって必要な条件は何か
  3. ビジネスの機会をどうとらえればよいのか

には大いに学ぶところがあるように感じられる。たとえば、

ネット化戦略を立てるにあたって重要なことがある。それは、自社のアイデンティティを再確認することだ。自社という主語がなければ戦略はつくれない(192頁)。

という指摘がある。自分自身、ウェブ戦略やWeb2.0への対応といったテーマで講演する際には、結局最後はウェブに対するビジョンを持つことや、その組織のミッションを確かめることを強調することが多いだけに、この言葉には深くうなずくものがある。他にも数点、今後の自分の講演や執筆の活動に生かしたいと思える指摘が散見されたが、ここでは割愛したい。

ウェブについて、あるいはWeb2.0について、とにかくもっと知りたいという方には積極的にはお勧めしない。だが、ウェブやWeb2.0にとかく懐疑的になりがちな方、あるいはそういう方々に相対しなければいけない方々には、一見似通った類書からは得られない刺激と知見を与えてくれる一冊ではないだろうか。

・「新著『大企業のウェブはなぜつまらないのか』その1」(Dr.本荘の新事業Blog、2007-02-17)
http://www.honjo.biz/blog/index.php?UID=1171674000
・「新著『大企業のウェブはなぜつまらないのか』その2」(Dr.本荘の新事業Blog、2007-02-18
http://www.honjo.biz/blog/index.php?UID=1171807200