2007-07-26(Thu): 時実象一さんの「ウィキペディア−安易な引用はやめよう」(朝日新聞「私の視点」)をめぐって

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7月24日の朝日新聞「私の視点」欄に時実象一さんが「ウィキペディア−安易な引用はやめよう」という記事を寄せている。

・ときざねそういちのホームページ(時実象一さん)
http://home.highway.ne.jp/tokizane/

時実さんの意見に対しては、

・「ていうかWikipediaも引用するだろ。実際。」(かたつむりは電子図書館の夢をみるか、2007-07-25)
http://d.hatena.ne.jp/min2-fly/20070725/1185374072
・「ウィキペディアを引用するな」(Okumura's Blog、2007-07-25)
http://oku.edu.mie-u.ac.jp/~okumura/blog/node/1566

といった反応がすでにある。あえてここでコメントを重ねることはないだろうが、

教師は学生・生徒のインターネット乱用の現状を認識し、ウィキペディアを含むインターネットの情報については、「利用はするが引用はしない」ことを徹底していただきたい。

という主張には首をかしげてしまう。教育・研究の場を含め、インターネットはすでに我々の生活の一部になっている。インターネットからの引用を禁止することは、あまりにも前時代的ではないだろうか。我々は否応なくインターネットと共に生きている。「利用はするが引用はしない」という姿勢で、インターネットに相対することは非建設的な発想と思う。

なお、本誌掲載の記事を紹介しておこう。

・指宿信「ネット文献の引用方法について」(本誌第054号、2000-02-05)
http://www.ne.jp/asahi/coffee/house/ARG/054.html

この記事は本誌で最も読まれており、最も多く紙の文献に引用されている。

ところで、時実さんが記事の中で引用しているのは、Santa Cruz Sentinelという新聞のインターネット版だったりする。時実さんが引いているウィキペディアの広報担当サンドラ・オルドネスさんのコメントは次の通り。

学生はウィキペディアで見つけた情報については出典に当たって調査すべきである。ウィキペディアを引用することは好ましくない。

英語の原文は、以下の通り。

"Wikipedia is the ideal place to start your research and get a global picture of a topic. However, it is not an authoritative source," said Sandra Ordonez, a Wikipedia spokeswoman. "We recommend that students check the facts they find in Wikipedia against other sources. It's usually not advisable, particularly at the university level, to cite an encyclopedia"

・Professors crack down on students' latest ally: Wikipedia(2007-06-17)
http://www.santacruzsentinel.com/archive/2007/June/17/local/stories/04local.htm

また、問題の発端となったミドルベリー大学のサイトには次のようなまとめがある。

Wikipedia in academia: History department decision still fueling debate(Middlebury College、2007-03-23)
http://www.middlebury.edu/about/newsevents/archive/2007/newsevents_633084484309809133.htm

ウェブがわかる本 (岩波ジュニア新書)

結局、人それぞれ様々な考えがあるだろうが、私の場合は、大向一輝さんが

・『ウェブがわかる本』(岩波ジュニア新書、2007年、987円)
http://www.amazon.co.jp/gp/product/4005005624/arg-22/

で示している姿勢が教育の場に最もふさわしいと思う。Wikipediaに限らず、インターネットの利用方法に悩む方には、ぜひ一度『ウェブがわかる本』(岩波ジュニア新書、2007年、987円)を手にしてほしい。