2007-10-13(Sat): 「専門図書館」に記事掲載

5月末日と6月初日に専門図書館協議会総会・全国研究集会に参加したが、そのときの報告内容が会誌「専門図書館」に「Web2.0と図書館−BlogとRSSの活用を中心に」として掲載された。

・「Web2.0と図書館−BlogとRSSの活用を中心に」(「専門図書館」225、専門図書館協議会、2007-09-25)
http://www.jsla.or.jp/books/kikansi.html

・「専門図書館協議会総会・全国研究集会の1日目」(編集日誌、2007-05-31
http://d.hatena.ne.jp/arg/20070602/1180750016
・「専門図書館協議会総会・全国研究集会の2日目」(編集日誌、2007-06-01
http://d.hatena.ne.jp/arg/20070602/1180750015
・「専門図書館協議会の全国研究集会に参加して」(編集日誌、2007-06-06)
http://d.hatena.ne.jp/arg/20070608/1181235688

今回特にうれしいのは、森本英之さん(コロンビア大学図書館)による参加レポートが附されていることだ。森本さんのレポートは内容を的確にまとめた上で、分科会のあり方に対する鋭い指摘と問題提起を含んでいる。

他方で、この分科会が過度に計画され発表の焦点が合わされ過ぎているのではないかという疑問も完全には払拭できなかった。(中略)。発表では、Web2.0の特徴の内で多くの人々に支持される面が強調され、意見が分かれる面については、殆ど触れられないか肯定的に意見の違いの存在を際立たせない形で示されるにとどまった感がある。これは、分科会の趣旨を提示し進行させるのには効果的ではあるものの、Web2.0の図書館への導入が何が何でも促進されるべきであるのかという問題への答えに繋がらないばかりか、フォクソノミー、社会タグ付け、ソーシャルネットワーキングといったWeb2.0の特徴とされ又批判されながら第4分科会の発表では間接的にしか触れられなかった面に関して専門図書館でどのように対応したら良いのかに関して手掛かりが与えられなかったと言えるかもしれない。

あくまで第4分科会のスピーカーの一人としての意見だが、第4分科会が十分に準備されたものであったことは事実といえる。3人の講師は事前に何度か顔を合わせ、分科会の方向性に関する議論をしている。当日の方向性について意識を共有し、それぞれの講演内容を確認しあっている。
森本さんが課題として挙げている多角的な議論の不足は確かに事実といえるが、当日はそこまでの議論は少なくとも講師の講演においては最初から射程に入れていなかったように思う。そもそもの前提として、あらためてWeb2.0とは何か、という出発点の確認が必要だったこと、そして観念的なWeb2.0論にしないためには、他の二人の講師による具体的な事例報告による肉づけが必要だった。この前提に立つと、さらなる議論の深みを求めるのは難しい。Web2.0への危惧等の論点は、むしろ質疑応答で対応するというのが講師陣の意識ではなかったかと思うし、私自身はそう考えていた。ここは森本さんとの間に認識のずれがあるようにも感じるが、森本さん自身がレポートの中でふれているようにWeb2.0を論じる講演会やセミナーを大学図書館等が積極的に開催するアメリカに比して、日本の現状ははるかに立ち遅れているという実情も考慮する必要があるだろう。

また、当日の講演内容はいずれも図書館側からの情報発信を活発化するためにBlogやRSSの活用を説くものだった。言ってみれば、専門図書館がBlogやRSSの活用を通してWeb2.0を体感することを勧めるまでが第4分科会の主張範囲だったと思う。森本さんが挙げているフォクソノミー、社会タグ付け、ソーシャルネットワーキングの活用は、これより一歩進んだ専門図書館Web2.0のプラットフォームを提供し、利用者の参加を促す主体となるものであり、次元が一つ異なる一歩先の話だろう。正直なところ、いまの専門図書館の世界はそこまでの議論をするところには来ていないと感じる。そこまで踏み込んだ議論をするためにも、まずは一つでも多くの専門図書館が借り物の思想や聞きかじりの体験談に基づいてWeb2.0を夢想する段階を越えていかないといけないだろう。具体的な体験と体験に裏付けられた知識なしには、Web2.0の可能性も危険性も論じることに意味はないと思う。

決して体験を絶対視するわけではないが、現在の専門図書館はとかく否定から入りがちな状況にあると考えると、我が事としての経験抜きにことの是非を論じることは、Web2.0に対する否定や静観に通じてしまい建設的な議論は生まれにくいのではないだろうか。