源氏物語の本文資料の再検討と新提言のための共同研究、サイトを公開

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源氏物語の本文資料の再検討と新提言のための共同研究のサイトが公開された(2007-09-27)。正式には源氏物語の研究支援体制の組織化と本文関係資料の再検討及び新提言のための共同研究というこの研究は、2007年度から2010年度にかけての4年計画で行われ、大きくは、

  1. 統一テーマ「源氏物語諸伝本の再検討を通して新提言へ」
  2. 源氏物語河内本に関する研究
  3. 源氏物語本文の位相に関する研究
  4. 定家本本文と注釈の生成過程に関する研究
  5. 共有資源としての源氏物語本文データベースの構築と公開

の5つに取り組むという。特に「共有資源としての源氏物語本文データベースの構築と公開」は、「データベース構築から情報発信へ」をテーマに

  1. 源氏物語本文のデータベース構築(2007年度〜2010年度)
  2. 構築過程でシステムを設計(2007年度〜2008年度)
  3. 公開用閲覧検索システム開発と運用(2009年度〜2010年度)
  4. 国文学研究資料館との連携をはかり情報を発信(2010年度)

が予定されている。『源氏物語』といえば、2008年に千年紀を迎えるということで注目を集めているが、このサイトによれば、盛り上がりとは裏腹に源氏物語研究の現状は非常に心許ない状況にあるようだ。特に研究の基盤となるテキストの整備状況について、研究グループの危機意識が語られている。

源氏物語』の本文に関する研究は、池田亀鑑の『校異源氏物語』(昭和17年中央公論社)に始まり、『源氏物語大成』(昭和28年、中央公論社)をもって止まったままの状態にあります。『源氏物語大成』の「校異源氏物語凡例」に「原稿作成ノ都合上、昭和13年以後ノ発見ニ係ル諸本ハ割愛シタ」(5頁)とあるように、そこで本文研究は中断したままなのです。今から70年前に、『源氏物語』の本文について考える資料は凍結されていたといってよいでしょう。
その後、多くの資料が発見されて現在に至っているのですが、本文についての再検討は、個人の努力の中に埋没しつつあるというのが現状です。

・「研究の意義」
http://www2.kokugakuin.ac.jp/projectg/03_igi.html

幸いなことに研究分担者に、サイト「源氏物語電子資料館」や「源氏物語の世界」でまさに「個人の努力」を続けてきた伊藤鉄也さんと渋谷栄一さんが名を連ねている。ぜひ、このお二人に限らず、一人でも多くの源氏物語研究者に参画してほしいものだ。しかし、科学研究費補助金データベースによれば、この共同研究に投じられる科学研究費補助金は2007年度でわずか1183万円(直接経費910万円、間接経費273万円)という。文科系の学問への金銭的な手当の不備を思わずにはいられない。

源氏物語の本文資料の再検討と新提言のための共同研究
http://www2.kokugakuin.ac.jp/projectg/
・「源氏物語の本文資料の再検討と新提言のための共同研究●ホームページが開設されています」(笠間書院のブログ、2007-09-27)
http://kasamashoin.jp/2007/09/post_246.html
・「シンポ「一千年目の源氏物語」 「新しさ」解きほぐす」(朝日新聞、2007-10-10)
http://www.asahi.com/culture/news_culture/TKY200710100082.html
源氏物語千年紀委員会
http://www.2008genji.jp/
源氏物語千年紀事業−紫のゆかり、ふたたび−
http://www.pref.kyoto.jp/2008genji/
源氏物語電子資料館(伊藤鉄也さん)
http://www.nijl.ac.jp/~t.ito/
源氏物語の世界(渋谷栄一さん)
http://www.sainet.or.jp/~eshibuya/
・渋谷栄一研究室
http://www.takachiho.ac.jp/~eshibuya/
・科学研究費補助金データベース - 源氏物語の研究支援体制の組織化と本文関係資料の再検討及び新提言のための共同研究
http://seika.nii.ac.jp/search_pjno.html?PJNO=19202009
・科学研究費補助金データベース
http://seika.nii.ac.jp/