2008-01-23(Wed): 最近のブログから−三重大学長ブログの由来、批判のあり方、ネットと匿名性、引用の喜び

三重大学学長の豊田長康さんが学長ブログを始めた経緯にふれている。

私がブログを始めようと思いたったのは、7月15日付けでブログを永久に凍結するという廣岡先生の悲しいメッセージを見てからです。彼の遺志を継ぎたいという気持ちで、もし、ブログを書くなら“つぼやき”を名前につけさせていただきたいな、と思っていました。そして、ブロガーの児玉克哉教授から、「学長も書いてみたらどうですか。」と背中を押されて、最終的にブログを書くことに踏み切りました。

・「"つぼやき"の由来」(ある地方大学長のつぼやき、2008-01-09)
http://www.mie-u.ac.jp/blog/2008/01/post-27.html

豊田さんお一人だけではなく、様々な人の思いが詰まっていることがよくわかる。

・「三重大学、学長ブログ「ある地方大学長のつぼやき」を公開」(新着・新発見リソース、2007-12-02)
http://d.hatena.ne.jp/arg/20071202/1196603226
・「廣岡秀一さん逝去(50歳)」(編集日誌、2007-08-10)
http://d.hatena.ne.jp/arg/20070813/1186932853

「blogする教育学者」を掲げる中原淳さんが、批判のあり方を考えている。

研究発表するということは、自分を「ヴァルネラブルな立場(脆弱な立場)」におく行為である。
(中略)
「批判」には、その人の「知性」が如実に反映されている。
(中略)
研究者にとって本当に辛いことは「反応がないこと=無視されること」である。

・「「批判すること、されること」考」
http://www.nakahara-lab.net/blog/2008/01/post_1127.html

どの言葉も重い。

「ヴァルネラブルな立場(脆弱な立場)」は、

ボランティア―もうひとつの情報社会 (岩波新書)

・『ボランティア もうひとつの情報社会』(金子郁容著、岩波書店、1992年、819円)
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4004302358/arg-22/

に依っているのだと思うが、サイトやブログをやる研究者には、特に知っておいてほしい考え方だ。同じ言語を有する研究者の世界での発言と異なり、ウェブでの発言は、様々な人々に自らをさらけだしていることになる。誰もがアクセスできるウェブで発言するということは、研究者自身にその意思がなくても、見知らぬ誰かから批判を受ける立場に身を置くということだ。そもそもは、ウェブでの発信のあるとなしとを問わず、研究自体がいつどこでだれにどのように言及されようと、当然のことであるのだが……。

・「それで学術研究が成り立つのだろうか」(編集日誌、2007-02-26
http://d.hatena.ne.jp/arg/20070228/1172616083

さて、中原さんは「よい批判者」であるためのチェックポイントも挙げている。

  1. あなたの批判には「誰もが納得できる根拠や理由」があるかどうか。
  2. あなたの批判している対象が明確かどうか。
  3. あなたの批判には「代替案」が含まれているかどうか。

参考にしたい。

昨年末に博士号を取得した折田明子さんが、長年の研究テーマの一つである「インターネットと匿名性」について連載を始めている。

匿名vs実名、という議論は現実に即さないのではないか、というのが私の問題意識です。個人が特定されることへ抵抗感は、必ずしも発言の無責任さとは結びつかないでしょうし、時には実名の人間関係に対する配慮が理由のこともあるでしょう。一方で、ころころと名前を変えられては、同一人物だとわからないという見方もあるでしょう。
インターネットがもたらす匿名性について、これからしばらく書いて行こうと思います。
・「No.0 これからインターネットと匿名性の話をします」(Empowerment blog、2008-01-21)
http://blogs.itmedia.co.jp/ako/2008/01/no0-b671.html

これは楽しみな企画。実名・匿名という二項対立で語られることが多い話題だが、感情論に陥らず、実証的な研究に基づく討論が必要とされてきている。まずは折田さんの考えにじっくりと耳を傾けるところから始めたい。

米澤誠さんが「引用される喜び」を語っている。

最近、立て続けに自分の文献が活用されていることを知り、少しは社会に貢献できてきたなあと喜んでいます。

・「引用される喜び」(ヨネザアドの学びの杜・遊びの海(米澤誠の公式ブログ)、2008-01-18)
http://blogs.yahoo.co.jp/bpxdx655/29448648.html

この喜びには非常に共感する。自分は大学に籍を置く研究者ではないので、いまのところ業績のようなものはいまのところ気にならない。それでも引用されるとうれしいのは、米澤さんが語っているように「少しは社会に貢献できてきた」という実感があるからだろう。

ちなみに、米澤さんには次の論考を書いていただいている。

・米澤誠「図書館で研究成果の発信を:東北大学研究者作成データベースの公開事業」(本誌第171号、2003-09-28)
http://www.ne.jp/asahi/coffee/house/ARG/171.html