国立国会図書館、カレントアウェアネス・ポータルをリニューアル(2008-03-03)
2007年12月21日に予告された通り、国立国会図書館がカレントアウェアネス・ポータルをリニューアルした(2008-03-03)。
・カレントアウェアネス・ポータル
http://current.ndl.go.jp/
・カレントアウェアネス・ポータルの過去のサイト
http://web.archive.org/web/*/http://www.dap.ndl.go.jp/ca/
・「国立国会図書館、カレントアウェアネス・ポータルのリニューアルを予告」(新着・新発見リソース、2008-01-05)
http://d.hatena.ne.jp/arg/20080105/1199513224
・国立国会図書館
http://www.ndl.go.jp/
なお、リニューアルに伴って、URLがhttp://www.dap.ndl.go.jp/ca/からhttp://current.ndl.go.jp/へと変更されている。
リニューアルにあたってのお知らせでは、次のように述べられている。
当サイトでは、『カレントアウェアネス』『カレントアウェアネス-E』など国立国会図書館が刊行する図書館関係情報誌・報告書のウェブ版や、最新の図書館ニュースブログ『カレントアウェアネス-R』などをこれまで同様に提供いたします。さらに4月にかけて、新たな機能、コンテンツを加えて、よりいっそう、皆様のお役に立てるウェブサイトを目ざしてまいります。
・「カレントアウェアネス・ポータルはリニューアルしました。」
http://current.ndl.go.jp/node/7362
従来の内容はそのままに、今後さらなる改善と拡充が図られていくようだ。さて現時点での変更点としては、先にふれたURLの変更以外に、
- タグによる記事検索の追加
- 記事へのトラックバックの受付
- 動的URLから静的URLへの変更
の3点が特徴的だろうか。
トップページの右にあるタグによる記事検索では、国立国会図書館の担当者がつけるタグによって、同一テーマの記事を検索できる。タグといえば利用者が自由につけるスタイルが主流だが、あえてこのような形式を選択したのだろう。記事の一本一本に統制されたルールのもとでタグをつけているという自負がうかがえる。
また、タグという日本語にはなじまない概念をそのまま用いず、「テーマ」「館種」「組織・機関名」「国・地域」という言葉を用いている点がすばらしい。ただ、それだけにすべての「テーマ」「館種」「組織・機関名」「国・地域」をみるためのリンクのテキストが、「more tags」となっているのは惜しい。このような細部にもタグという概念をそのまま用いないという方針を貫いてほしい。
だが、「テーマ」「館種」「組織・機関名」「国・地域」といった様々な概念レベルでつけられるタグをすべて一緒くたにするのではなく、「テーマ」「館種」「組織・機関名」「国・地域」と分類したことはタグというものの性格をよくとらえている。
・「タグ=件名説」(信月記、2005-12-19)
http://d.hatena.ne.jp/sinngetu/20051219/1134998591
で指摘されているように、タグはいってみれば、図書館における件名であるということをよく考えているのだろう。
2点目の記事へのトラックバックの受付は、まだすべての記事では行われていないが、「お知らせ」に分類されている記事には、
Trackback URL for this post:
http://current.ndl.go.jp/trackback/2375・「当サイト、試験公開から1周年!」(2007-03-28)
http://current.ndl.go.jp/node/2375
と、トラックバックURLが表示されており、実際にトラックバックを受け付けている。現時点ではまだ全面的なトラックバック受付は実現していないが、トラックバックの受付は国のサイトとしては初めてとなる試みであり、ぜひ全面的な導入に向けて進んでほしい。
3点目の動的URLから静的URLの変更は、これまでは
http://www.dap.ndl.go.jp/ca/modules/car/index.php?p=4726
というURLだったものを、
http://current.ndl.go.jp/node/7048
という形式に変えたことをいう。URLの長さを短くしたことでメールの本文に張りつけても自動的に改行されることがなくなるといったメリットがあることだろう。このURLの変更に際しては、旧URLから新URLに自動転送(リダイレクト)するようになっているのだが、
ただ、確認した範囲では「カレントアウェアネス-R」の記事については、旧URLにアクセスすると同じ記事の新URLに移動せず、別の記事が表示されてしまう。たとえば、
・「レファレンスの新たな定義」(編集日誌、2008-02-09)
http://d.hatena.ne.jp/arg/20080211/1202657472
で紹介した
・「RUSA、「レファレンス」の新しい定義を発表」(カレントアウェアネス-R、2008-01-08)
http://www.dap.ndl.go.jp/ca/modules/car/index.php?p=4956
だが、上記のURLをクリックすると、
・「DPC、電子情報保存の標準としての“JPEG2000”に関するレポートを発表」(カレントアウェアネス-R、2008-02-28)
http://current.ndl.go.jp/node/7353
に移動してしまう。リニューアル直後の混乱に伴う設定ミスだろうか。ともあれ、これまでカレントアウェアネス-Rに対して外部のサイトから張られてきたリンクに影響することであり、早々に対応してほしい。
その他、細かな点を挙げれば、各ページの右上にある
____ ____
Search this site:| | |Search|
 ̄ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄
という検索ボックスがすべて英語で表記されているが、ここは日本語に直し、
____ ___
このサイトを検索する:| | |検索|
 ̄ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄
としてほしい。
同様のことは前述の「More Tags」や記事ごとのページの上部にある「Home」、トップページ等の記事のリード文の下にある「Read more」についてもいえる。カレントアウェアネス・ポータルの大多数の利用者には、いずれも平易な英語だろうが、より多くの利用者を獲得していくためには、このわずかな一手間が欠かせないと思うのだ。
サイトの全体的な使い勝手についていえば、リニューアル後はトップページの左側に「メニュー」と「新着記事」を、中央に記事本文を、右側にタグからの検索を置いている。記事の個別ページはページが左右に二分割され、左側に「メニュー」と「新着記事」を、中央に記事本文を置いている。
使い勝手の良し悪しの感覚は個人差が大きいが、今回のレイアウト変更によって「新着記事」が探しにくくなったのではないだろうか。使い方もまた人それぞれとは思うが、トップページから定期的にカレントアウェアネス・ポータルを訪れる利用者には新着記事が目に入りにくいように思う。また、RSSリーダーで気になる記事をみつけ、カレントアウェアネス・ポータルの個別の記事にアクセスしたきた利用者、あるいは検索エンジンの検索結果を経由して個別の記事にアクセスしたきた利用者にも同様のことがいえる。記事を読み終えて、視線をページ全体に向けたときにどうしても「メニュー」が先に目に入るので、「新着記事」を見落としがちになるだろう。特にカレントアウェアネス-Rは記事が短いことが多く、ページをスクロールすることが少ないために上記のようなパターンに陥ることがあるだろう。例として次の記事を挙げておこう。
・「研究推進のため、Yahoo!が検索語データをNIIへ提供」(カレントアウェアネス-R、2008-02-29)
http://current.ndl.go.jp/node/7361
現状のレイアウトはウェブデザインの鉄則の一つである「ページをスクロールしないで一覧できる範囲に重要な要素を盛り込む」(Above the fold)を意識しているとは思われるが、それよりもいっそ「メニュー」を別の場所に移動し、「新着情報」を全体的に上に押し上げたほうがいいのではないだろうか。実際、
カレントアウェアネス-R
カレントアウェアネス-E
カレントアウェアネス
図書館調査研究リポート
図書館研究シリーズ
このサイトについて
という内容で構成されるメニューは、「このサイトについて」以外はあくまで記事の種別に過ぎず、利用者はそれほど気にする区分ではないだろう。利用者にとって重要なのは、記事の本文であって記事の種別ではないからだ。ここは思い切って「メニュー」をページの左側から上部に移動し、「グローバルナビゲーション」と呼ばれる形式にするよう提案したい。たとえば、
・Yahoo!ヘルスケア
http://health.yahoo.co.jp/
で用いられている
「トップ」「病院情報」「家庭の医学」「からだ相談」「コラム」
という箇所がそれにあたる。
以上、注文も含め、様々な点についてコメントしたが、最終的には前身のCurrent Awareness Portalが試行版から正式版に切り替わる際に行ったように、一定期間をおいてから利用者の声を集めつつ、改善していけば十分だろう。
・「Current Awareness Portalに関するご意見をお寄せください」(2006-05-02)
http://current.ndl.go.jp/node/2353
他のサイトにとっても参考になると考え、細かな点にも言及したが、カレントアウェアネス・ポータルの今回のリニューアルの最大の肝は、「タグによる記事検索の追加」や「記事へのトラックバックの受付」だろう。前者のただ流行を追うのではなくカレントアウェアネス・ポータルの特性に対する熟慮を、後者の批判やトラブルを恐れずトラックバックの受付に踏み出し、試行しようとする姿勢を讃えたい。
なお、あまり話題にならないことだろうが、ページの左側の下部に
・「国立国会図書館関西館がシンボルマークを制定」(編集日誌、2008-02-23)
http://d.hatena.ne.jp/arg/20080225/1203873704
で紹介したシンボルマークが顔を出していることにぜひ気づいてほしい。国立国会図書館関西館のシンボルマークが初めてウェブに登場した例となることだろう。