2008-03-15(Sat): 学会サイトのウェブ対応−特に年次大会サイトの充実への期待と希望

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・「DEWS2008で宮崎へ」(編集日誌、2008-03-08)
http://d.hatena.ne.jp/arg/20080309/1205053491

で記したように、

2008-03-09(Sun)〜2008-03-11(Tue):
電子情報通信学会第19回データ工学ワークショップ・第6回日本データベース学会年次大会(DEWS2008)
(於・宮崎県/フェニックス・シーガイア・リゾート
http://www-nishio.ist.osaka-u.ac.jp/dews2008/

に行っていた。私の大学時代の専攻は日本政治思想史。蛇足だが、律令制における日本と中国の比較を特に天皇と皇帝の権限がどのように定められていたか、という観点から調べていた。ともあれ、そのようなバックグランドの人間がこのような情報処理・言語処理系の学会に参加するようになってつくづく思うことは、いわゆる文系と理系とでは学部段階からまったく学問経験が異なるということ。たとえば、この分野では学部学生でも学会発表に参加するころが稀ではない。

・電子情報通信学会第19回データ工学ワークショップ・第6回日本データベース学会年次大会(DEWS2008)
http://www-nishio.ist.osaka-u.ac.jp/dews2008/

の場合、ポスターセッションを中心に学部4年生が卒業研究で取り組んだテーマについて、一生懸命発表していた。その発表に対して、会場を埋める他大学の教員から妥協のないコメントが集まっていく。実に感心する。こうやって、どこの大学のどこの研究室に所属しているかに関わらず、その分野の学生や院生を学界全体で育てていくのだろう。

ところで、今回参加したDEWS2008では口頭発表だけで約250本。複数のセッションが同時に行われるので、聴講できるのは最大でも10セッション、報告数にして60本。

・DEWS2008 - 口頭発表プログラム
http://www-nishio.ist.osaka-u.ac.jp/dews2008/program.php
・DEWS2008 - ポスター発表プログラム
http://www-nishio.ist.osaka-u.ac.jp/dews2008/interactive.php

それだけの報告をいかにして効率的に聞いて回るかに毎回頭を悩ませる。結局、王道はなくプログラムが公開されるやいなや、すべてに目を通し、まずは必ず聴きたい研究報告をチェックする。しかし、この段階では同じ時間帯に開催されるセッション間をまたがってチェックが入っていることがよくある。そこで次にチェックが入っている研究報告が比較的多いセッションにチェックを入れる。ここまでですんなり聴講スケジュールが決まればよいのだが、ときとして1セッション6本の報告のうち、どうしても聞きたい1本があるセッションと、とりあえず聞いてみたい報告が3本ほどあるセッションが時間的にバッティングしていることに気がつく。そこからが悩ましい。

実際に大会の会場では、セッション間を行き来する姿もみられる。だが、かなり厳密な時間管理がされているとはいえ、決して予定通りに進むものではない。聴きたい報告を求めて各セッションの会場間を行き来すると、「二兎追うもの一兎も得ず」になりやすい。ということを経験的に感じているので、基本的には参加すると決めたセッションからは移動しないのが自分の場合は鉄則。

そこでバッティングしているセッションのうち、どちらをとるか判断せざるを得なくなる。その際の判断基準は、まずはその研究発表の内容を聞く機会が別にあるかということ。たとえば、知り合いの教員が指導する学生や院生であれば、後日研究室を訪れてあらためてお話いただくこともできる。また、発表者の研究内容をすでに知っていれば、発表内容もおおよそ推測がつくので、未知の発表者を優先しよう、という判断も働いてくる。その他、発表者本人に「今度の発表、必ず聴きに来てくださいね」と言われていると(そして、「はい、もちろん」と安請け合いしていると)、それはそれで聴きにいかざるを得ないということもなくはない。

と、悩みはつきないまま、当日現地入りする飛行機や新幹線の中で最後まで悩み、一定の結論を出すのだが、大会会場で知り合いの教員に「研究室の学生の発表は役に立つと思うから聴いてコメントしてくれよ」と声をかけていただいたり、懇親会で意気投合した発表者に「明日は必ず聴きに来てくださいね」と言われたりすると、また振り出しに戻る……。

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と、つらつらと書いてまた振り出しに戻ってしまう無限ループなのだが、要するに言いたいことは「理想的な大会支援システムをつくれないだろうか?」ということ。自分のこれまでの経験では、

・イベント空間情報支援プロジェクト
http://unit.aist.go.jp/itri/itri-rwig/ESISP/

が非常によくできていたように思う。だが、これもまだまだ完璧にはほど遠い。

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たとえば、ファッションショーとオンライン通販を巧みに組み合わせた

東京ガールズコレクション
http://www.tgc.st/

のようなことが学問の世界でもできないものだろうか。オフラインイベントとしての研究発表とその聴講、そしてオンラインイベントとしてのコメント投稿とディスカッションができるようになると、非常におもしろいのだが。

なお、ARGの読者の大多数にはなじみがないと思うので補足しておくと、東京ガールズコレクションは「girlswalker.com」というファッションを中心とした女性向けポータルサイトを運営する株式会社ゼイヴェルが手がけるイベントのこと。

・株式会社ゼイヴェル
http://www.xavel.com/
・girlswalker.com
http://www.girlswalker.com/

やや脱線したが、上記のようなオンライン/オフラインの結合以上に必要なのが、つらつらとつづった悩みを解決してくれるシステムだ。つまり、「あなたにオススメの研究発表はこれ!」と推薦してくれ、かつ理想的な聴講スケジュールを組み立ててくれるとうれしい。当然その際には、発表者や指導教員との関係や、過去に聴いたことがある発表や読んだことがある論文といった、自分のバックグラウンドを綿密に考慮してほしい。さまざまな小技が利いていて、自分の研究内容に依拠・言及している発表があれば、それも要素として加味してほしい。うまく機能すれば、セッションごとの人手予測ができ、大会主催者の側にもうれしい。

そして、さらに欲をいえば、そのようなシステムが一つの学会や大会に閉じたものでは面白くない。学会と学会、大会と大会の間がすべてつながっていてほしい。

たとえば、私の場合、

2008-03-22(Sat)〜2008-03-23(Sun):
第21回社会言語科学会研究大会
(於・東京都/東京女子大学
http://www.wdc-jp.com/jass/21/

で招待講演として行われる

  • 長尾真「日本的日本語処理」

や、口頭発表が予定されている

  • 田中弥生「ブログの言語表現にみる対人配慮意識−媒体差および世代差に注目して」

あるいは、ポスター発表が予定されている

  • 相澤正夫、小椋秀樹「白書コーパスに基づく常用漢字の使用実態調査」
  • 田中牧郎、金愛蘭、桐生りか、近藤明日子「コーパスによる難解語・重要語の抽出−医療用語を例に」

はぜひ聴きに行きたいところだ。しかし、社会言語科学会は通常は私の関心より少し外にあるので、このような発表が予定されていることにはまず気がつかない。今回はたまたま気づいたものの、実際は気づかずに見過ごしている面白い研究発表がゴマンとあることだろう。個人の関心にあわせた情報の抽出と発見。ウェブ研究でも花盛りなテーマであるが、ぜひこういうシステムがほしいものだ。

ここで述べたことは、まだまだ夢想じみた願望に過ぎないのだろう。だが、必ず実現させたいものだ。まだまだ時間はかかるだろうが。

ともあれ、当面のところでは、複数のセッションの中から聴きに行くべき発表をどのように選んでいるのか、読者の方々の方法もうかがいたい。コメントやメールでぜひご教示を。また、過去に参加したイベントで役に立ったと感じた支援システムがあれば、ぜひそのお話もぜひご教示を。もちろん、学術的な大会に限らず、オフライン開催のイベントであれば、ファッションショーでもビジネスショーでも形態は不問。