2008-04-30(Wed): 平城遷都1300年記念 国宝 薬師寺展

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機会があり、

・平城遷都1300年記念 国宝 薬師寺
http://www.yakushiji2008.jp/
薬師寺展日記
http://yakushiji.cocolog-nifty.com/blog/

を見に行く。

展示への感想を少々。東京国立博物館の平成館での展示は大きく分けて4部構成。

  • 第1章「薬師寺伽藍を行く」(特別展示室第3室・第4室)
  • 第2章「草創期の薬師寺」(特別展示室第1室)
  • 第3章「玄奘三蔵と慈恩大師」(特別展示室第1室)
  • 第4章「国宝 吉祥天像」(特別展示室第2室)

この展示会では日光菩薩立像、月光菩薩立像、聖観音菩薩立像、慈恩大師像、吉祥天像、八幡三神坐像など、国宝多数が出展されており、注目度が高い。実際、来場者も相当数に上っているようだ。

自分としては仏像はやはり寺の中でみてこそ意味があると思っており、博物館での展示にはあまり関心がない。しかし、最近テレビで東京国立博物館の展示は非常にレベルが高いことを知り、今回訪れてみた次第。

さて、展示について。

  • 第1章「薬師寺伽藍を行く」(特別展示室第3室・第4室)

はまず仲津姫命、僧形八幡神神功皇后からなる八幡三神坐像から始まる。八幡三神坐像が祀られていた鎮守休ヶ岡八幡宮の社殿を復元した展示になっており、往時と現地を偲ばせる。博物館での展示ならではの工夫を感じさせられた。

再現された休ヶ岡八幡宮を抜けていくと、展示の目玉である日光、月光の両菩薩立像に行きつく。ここでも展示に非常に工夫がある。展示コースには高台が築かれており、そこから菩薩立像を眺められる。薬師寺の金堂で両像をみると、どうしても見上げる形になってしまうが、展示では高台からの眺めなので菩薩の顔をほぼ正面から見つめられる。平均的な身長からすれば、菩薩の頭部は頭一つ二つ高いところにあるが、顔はがうつむき加減につくられているので、観覧者と菩薩の視線がちょうど釣り合うようになる。見事に計算された展示につくづく感心させられた。光背(大辞林:仏身から発する光明をかたどった、仏像の背後にある飾り)は外した背中はもちろん必見。

ところで、光背は少女漫画に多い背後に花を背負っている主人公の絵柄と相通ずるように思うのは自分だけだろうか。

なお、第1章「薬師寺伽藍を行く」がある特別展示室の第3室と第4室は、造作物がすべて朱色になっており、伽藍の中に自分がいるような錯覚を与えてくれる。再現された雰囲気にも感心することしきり。

  • 第2章「草創期の薬師寺」(特別展示室第1室)

は、薬師寺から出土した塑像残欠や瓦などで構成されている。特に100体以上の塑像残欠がずらりと並べられたさまは圧巻。単体では地味な展示物だが、量で演出することで強いインパクトを与えている。

  • 第3章「玄奘三蔵と慈恩大師」(特別展示室第1室)

は、自分としてはそれほど印象が残らなかった。薬師寺法相宗大本山であり、玄奘三蔵法相宗の始祖とするという経緯を考えると、この展示の意味はわかるのだが、全4章の展示の中ではやや浮いているように思う。他の展示に比べて、薬師寺での実際の展示空間の再現が弱かったことも一因かもしれない。

最後の

  • 第4章「国宝 吉祥天像」(特別展示室第2室)

吉祥天像のみのシンプルな展示。展示室の入口でまず吉祥天像の各部の拡大画像を見せ、その向かい側では吉祥天像を本尊として行われる吉祥悔過会(きっしょうけかえ)を記録した映像が流されている。ここで吉祥天像の位置づけを理解しつつ、奥の吉祥天像へ。吉祥天像が思いのほか小さいことに驚く。これも図録ではわからない実物展示の魅力だろか。再現という観点でいえば、金堂薬師三尊像の前に置かれるという吉祥悔過会の風景を再現し、そこに展示してもよかったと思う。

以上、非常に満足度の高い展示だった。展示物自体の魅力もさることながら、展示手法の工夫が見事だ。近年、東京国立博物館が催す展示会が軒並み好評なのもよくわかる。

先日NHKスペシャルで、

NHKスペシャル「日光・月光菩薩 はじめての二人旅−薬師寺1300年の祈り
http://www.nhk.or.jp/special/onair/080428.html

が放送されたこともあり、連休中は相当混雑することだろう。

・「新聞・TVの影響はすごい」(薬師寺展日記、2008-04-29)
http://yakushiji.cocolog-nifty.com/blog/2008/04/post_382b.html

だが、東京国立博物館での展示は6月8日まで続いている。ぜひ、大勢の方に上野までお出かけになるようおススメしたい。

薬師寺
http://www.nara-yakushiji.com/
東京国立博物館
http://www.tnm.jp/