2008-05-07(Wed): 『ファシリテーターの道具箱』と『アウト・オブ・コントロール』

ファシリテーターの道具箱―組織の問題解決に使えるパワーツール49

・「ブログ読み−『ファシリテーターの道具箱』、PDF-XChange Viewer、カジュアルな会議」(編集日誌、2008-04-16)
http://d.hatena.ne.jp/arg/20080420/1208667376

で紹介したように吉橋昭夫さんのブログに触発されて読む。なるほど、吉橋さんの指摘通り。

ファシリテーションについて、ある程度の経験がある人にはなかなか参考になると思います。こういうやり方もあるんだ、と自分流にアレンジして使えます。
初心者がこれを読んだだけで、実践に使うのはちょっとむずかしいかもしれません。解説してある個々の内容は一見すると簡単そうに思えるのですが、いざやってみると、思うようにファシリテーションの成果を出すのはたいへんなので。

・「ファシリテーターの道具箱」(Information Design?!、2008-04-10)
http://akyoshi.cocolog-nifty.com/design/2008/04/post_f2f6.html

・森時彦・ファシリテーターの道具研究会著『ファシリテーターの道具箱−組織の問題解決に使えるパワーツール49』(ダイヤモンド社、2008年、1500円)
http://www.amazon.co.jp/gp/product/4478003963/arg-22/

好著だが、すでにある程度、会議を掌握する力がある人が使わないと火傷しそうだ。しかし、この本は非常に売れているらしい。企業で管理職が中途半端にこの内容をふりまわすと、部下は迷惑しそうだ……。

アウト・オブ・コントロール―ネットにおける情報共有・セキュリティ・匿名性

・大谷卓史著『アウト・オブ・コントロール−ネットにおける情報共有・セキュリティ・匿名性』(岩波書店、2008年、2205円)
http://www.amazon.co.jp/gp/product/400022039X/arg-22/

を読む。目次は以下の通り。

  • はじめに
  • 第1章 ウィニー−何が問題とされたのか?
  • 第2章 ウィニーは悪なのか?−インターネットの可能性の極限に向けて
  • 第3章 ウィニーの情報所有論
  • 第4章 <匿名性>をどう考えるか
  • おわりに

http://www.iwanami.co.jp/moreinfo/0220390/top.html

書名につながる「情報の制御不能性」という言葉が印象的。以下、気になった個所を挙げておこう。

著作権は著作者や著作物の流通事業者に、著作物の政策・流通に投じた資金や労力に見合うだけの金銭的利益を保証するわけではない。単に著作物の市場において、誰かがその著作物にただ乗りすることで不当に利益を奪われることがない、もしくは利益をあげる可能性が失われることがないということを保障するのに過ぎない。(134頁)

引用文中の「著作物の政策・流通」は、おそらく「著作物の制作・流通」の誤植だろう。
第2章の「インターネットの本来の役割は情報共有である」や第4章の「実名から匿名・実名混在の世界へ」は、研究者の個人レベルでの情報発信の可能性を考える自分にとっては非常に参考になる。

インターネットの場合、パソコン通信と違って、すべてのサービスを一社が管理しているわけではないので、行動・行為に関する痕跡情報と身元情報とが分離していて、この二つを結びつけることが難しいことから、パソコン通信よりも匿名性が高い。(173頁)

さらに、あるインターネット・コミュニケーションにおいてどの程度の匿名性が必要とされるかは、そのインターネット・コミュニケーションの参加者がどの程度の匿名性で満足するかに依存する。(181頁)

また、203頁から206頁にかけてのレコメンドシステムをめぐる議論は非常に示唆的。ここで引き合いに出されている

統治と功利

・安藤馨著『統治と功利』(勁草書房、2007年、4200円)
http://www.amazon.co.jp/gp/product/4326101695/arg-22/

は読んでおきたい。かなり難易度の高そうな本ではあるが……。

以上、まだメモどまりだが、非常に思考をかきたててくれる一冊である。一読をおススメしたい。

・OOTANI TAKUSHI Page(大谷卓史さん)
http://www.venus.dti.ne.jp/~ootani/