2008-07-02(Wed): 西岡達裕著『オンライン情報の学術利用−文献探索入門』(日本エディタースクール出版部、2008年、525円)

オンライン情報の学術利用―文献探索入門

・西岡達裕著『オンライン情報の学術利用−文献探索入門』(日本エディタースクール出版部、2008年、525円)
http://www.amazon.co.jp/gp/product/4888883831/arg-22/

を一読。目次は以下の通り。

  1. OPACWebcatの活用
  2. オンライン出版目録の活用
  3. 雑誌論文の探索
  4. 新聞記事の検索
  5. インターネット・リソースの活用
  6. 外国語文献とオンライン情報

著者の西岡達裕さんは、斉藤孝さんの名著『学術論文の技法』の新訂版版から共著に入っている方。

学術論文の技法

・斉藤孝・西岡達裕著『学術論文の技法 新訂版版』(日本エディタースクール出版部、2005年、1575円)
http://www.amazon.co.jp/gp/product/4888883521/arg-22/

さて、本書の「はじめに」にこうある。

この小冊子は、大学生や社会人が、あるテーマについて調査・研究を始めるときに、オンライン情報をどのように活用することができるかを解説した入門書である。

この言葉が本書の内容をほぼ言い得ているだろう。これ以上でもこれ以下でもないというのが正直な感想だ。もちろん、抑えるべきところはおおむね紹介されている。なお、一部箇所でのインターネットのサービスに関する記述にはやや不正確な印象を受ける。たとえば、第4章「新聞記事の検索」の「a 新聞とニュースサイト」でこう記されている(31頁)。

インターネットには、gooニュース、GoogleニュースYahoo!ニュース、Infoseekニュースなどのニュース配信サイトがある。gooニュースとGoogleニュースには主要な新聞と通信社のニュース速報が配信されているので、最新のニュースについて読み比べることができる。

ここではgooニュースとGoogleニュースが、Yahoo!ニュースやInfoseekニュースとは異なるとされている。ニュース速報の意味するところがよくわからないが、少なくともGoogleニュースYahoo!ニュース、Infoseekニュースの間にはコンテンツ面では顕著な違いはないはずだ。これら3者とGoogleニュースとではビジネスモデルや用いられている技術基盤が異なることは抑えておきたい。

すでに述べたように入門書として一定の意味は持つだろう。ただ、「文献探索入門」という副題があるとはいえ、「オンライン情報の学術利用」と謳う以上はインターネット上のリソースを引用する際の出典記述方法にふれてもよかったのではないかと思う。参照・引用という調査・研究上の利用の出口にふれないと、「オンライン情報をどのように活用することができるか」という問いへの答えとしては不足ではないだろうか。

本書は、

日本語表記ルールブック
日本エディタースクール編『日本語表記ルールブック』(日本エディタースクール出版部、2005年、525円)
http://www.amazon.co.jp/gp/product/4888883599/arg-22/
校正記号の使い方―タテ組・ヨコ組・欧文組
日本エディタースクール編『校正記号の使い方 第2版 タテ組・ヨコ組・欧文組 JIS2007年改正対応』(日本エディタースクール出版部、2007年、525円)
http://www.amazon.co.jp/gp/product/4888883769/arg-22/

のように手元に置いておけばたいていのことは、その一冊で解決する日本エディタースクール出版部の500円シリーズの1冊である。引用方法に関する記述がないことは、500円シリーズとしては一冊での完結性に欠ける印象を持つ。ここは日本エディタースクール出版部の編集者がもう少し頑張るところではなかったか。

ところで、第5章「インターネット・リソースの活用」の「c 学術情報探索支援サービス」で(42頁)、

図書館以外で学術情報全般の案内をしているサイトとしては、人文リソースのリンク集"ARIADNE"http://ariadne.jp/や「Coffee House『知の銀河系』」http://www.ne.jp/asahi/coffee/house/が挙げられる。

としてご紹介いただいている。感謝したい。ただ、これも一つ要望すると、最終更新が1999年6月6日と私自身ですらすでに存在を忘れつつある

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・Coffee House「知の銀河系」
http://www.ne.jp/asahi/coffee/house/

よりは、

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・ACADEMIC RESOURCE GUIDE (ARG)
http://www.ne.jp/asahi/coffee/house/ARG/

をそのままご紹介いただいたほうが、読者にとって適切ではなかっただろうか。改訂の折には見直していただけるとうれしい。

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なお、本書の刊行について著者の西岡さんが自らのサイトでコメントしている。

・(出版情報)『オンライン情報の学術利用−文献探索入門』
http://www.geocities.co.jp/CollegeLife-Labo/9671/2-2topics08.html#07
・国際政治・アメリカ研究・西岡達裕のページ
http://www.geocities.co.jp/CollegeLife-Labo/9671/