2008-11-26(Wed): 図書館総合展1日目−Library of the Year 2008で審査員

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記念すべき第10回を迎えた図書館総合展。今回は3日間皆勤という怒涛のスケジュール。この日は昼過ぎに会場となるパシフィコ横浜へ。

図書館総合展
http://www.j-c-c.co.jp/library/

入口で受付をするわけだが、自分は「一般」の入場証。

・「第10回図書館総合展に向けて−ささやかな願い」(編集日誌、2007-11-12)
http://d.hatena.ne.jp/arg/20071113/1194907239

の2008年版を書く際にあらためてふれたいが、この入場証の区分−公共図書館関係者、機関・企業図書館関係者、大学・短大・高専図書館関係者、小・中・高学校図書館関係者、一般−は再考が必要かもしれない。特に利用者という区分があるとよさそうな気がしている。

さて、まずは展示ホールで出展各社のブースをのぞきつつ、知りあいに挨拶しつつ、上記の「第10回図書館総合展に向けて−ささやかな願い」で提案した

学生用の展示ブースを設けよう。出展することは予算面で苦しいという学生は多いはず。彼ら・彼女らを支援して、図書館の若い力を育みアピールしよう。

を受け入れて設けてただいたポスターセッションへ。

ポスターを展示しているのは学生だけでなく、明治学院大学図書館や渋沢栄一記念財団 実業史研究情報センターなどの図書館やOCLCの坂口泉さんなど、多種多彩。正直、ポスターの出来栄えにはかなりばらつきがあり、またポスターの前に説明員が待機しているところ、期間中まったく誰もいなかったらしいところと熱意にも差があった。論外だったのは、ポスターセッションの意味を取り違えたのか、単なる広報用ポスターを張り出していたところだろう。さすがにここで名指しはしないが、あれでは効果はなく、かえって自らにネガティブキャンペーンを仕掛けているようなものだ。来場者を馬鹿にしており、猛省してほしい。また、事務局再度からの指導も必要だろう。

とはいえ、光るポスターも少なくない。たとえば、

坂口泉さん(OCLC)のポスターは、写真のように達筆な字で描かれたタイトルが非常に印象的で人を惹きつける。また、ご本人は多忙で不在である分、ポスターの下に来場者が持ち帰れる資料をピン留めしていた。持ち帰り資料を用意しておくのは、ポスターセッションではセオリーの一つ。ここはさすが坂口さんというべきだろう。

また、明治学院大学図書館による2種類のポスター「和英語林集成デジタルアーカイブス」と「横浜とヘボン博士」も素晴らしかった。ポスターの前には2年半ほど前に

・松岡良樹「デジタルで広がる『和英語林集成』の世界」(本誌第242号、2006-05-10
http://archive.mag2.com/0000005669/20060511010007000.html

を書いていただいた松岡良樹さん(図書館次長)がいらっしゃり、自ら熱心に説明されていた。ポスターは今後の再利用を前提に広報予算を使ってかなり立派なものにしたという。図書館だけの取り組みにせず、大学広報をうまく巻き込んでいる。また、横浜で開催の図書館総合展ということも意識して、明治学院初代総理であるヘボンにちなむ横浜市内の旧跡を紹介していたのは着眼点が良い。ともあれ、ここでは松岡さんにお目に書かれたのが良かった。

明治学院大学図書館
http://www.meijigakuin.ac.jp/tosho/

逆に手作り感あふれるポスターだったのは、渋沢栄一記念財団 実業史研究情報センター。

右のほうの写真をよくみてほしい。注目すべき個所には、ポスターとは異なる色合いの紙とフォントで吹き出しがついている。

渋沢栄一記念財団 実業史研究情報センター
http://www.shibusawa.or.jp/center/

その他、佐浦敬之さんをはじめ、メンバーが熱心に説明していた

・SLiiiC
http://www.sliiic.org/
・「図書館総合展−初日」(SLiiiCメンバーの日誌、2008-11-26)
http://www.sliiic.org/modules/journal/journal_detail.php?block_id=170&news_id=154&op=comment#170

や、図書館総合展と同様、10周年を迎えた

・図書館サポートフォーラム
http://www.nichigai.co.jp/lib_support/index.html

が印象的だった。

一通り見て回った後、意中のポスターに投票し、その後はLibrary of the Year 2008の最終選考会(第2部)で審査員をするため、フォーラム会場へ。しかし、今回はブース会場の展示ホールとフォーラム会場であるアネックスホールの距離が遠すぎる。会場間が分断されてしまい、せっかくの来場者が分散してしまった……。

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ともあれ、15時30分からは知的資源イニシアティブ(IRI)主催の

Library of the Year 2008−最終選考会(第2部)
http://www.iri-net.org/loy/loy2008.html

の始まり。3回目となるLibrary of the Yearの今回の最終ノミネートは

恵庭市立図書館
http://www.city.eniwa.hokkaido.jp/www/genre/0000000000000/1201850892860/
・旅する絵本カーニバル
http://www.kodomo-project.org/index.php?id=9
ジュンク堂池袋本店
http://www.junkudo.co.jp/
千代田区千代田図書館
http://www.library.chiyoda.tokyo.jp/

の4つ。それぞれの候補について、以下の4名のプレゼンテーターが推薦のスピーチを行い、その後、私も壇上にあがって簡単な質疑・討論。

ちなみに審査は会場からの投票に2票を、審査員である以下の5名に1票ずつ割り当てられ、合計7票での投票という形式。

質疑・討論では、審査員の立場から各プレゼンテーターの1つずつ補足説明をお願いした。

プレゼンテーターの方々には急な質問であったかとも思うが、みなさんに適切に対応していただけたと思う。また、自画自賛めいて恐縮だが、会場の一般審査員の方々にとって、最初のプレゼンテーションでは説明不足・アピール不足であった点をもう一度確認できる機会にもなったのではないか。

最後に自分自身の意見として、大賞受賞館は意識しなくてもロールモデル化することを考えると、図書館関係者や利用者が気軽に受賞館の取り組みを調べられる必要があること、その意味ではウェブでの発信状況を重視したい旨を述べた。この発言は明らかに千代田区千代田図書館を推す結果となったろうし、その直後に言い切ったように今回は千代田区千代田図書館が大賞受賞館にふさわしかったと思う。

さまざまな意見があるだろうが、私としては千代田区千代田図書館の受賞はやはり妥当なところだったと思う。この件は後日、賛否がほうぼうのブログで書かれると思うので、その際にまたふれることとしたい。ともあれ、大賞を受賞した千代田区千代田図書館の方々をはじめ、恵庭市立図書館、旅する絵本カーニバルジュンク堂池袋本店のみなさんにはお祝い申し上げたい。

そして、来年のLibrary of the Year 2009に向けて、各地の方々に自らの置かれた状況に見合った取り組みに励むようお願いしたい。Library of the Yearは、「全国の知的情報資源に関わる機関を対象として授与する賞」であって、「全国の公共図書館を総合的に評価して、ベストの図書館を決めるものでは」ない。今回の最終ノミネートが示すように図書館施設だけが対象となるわけではない。以下の選考基準を参考にして、どうすればノミネート対象になれるのか、関係者で議論してみてもいいだろう。もちろん、ノミネートや受賞はあくまで結果であって、それが目的となっては本末転倒だが、目標の一つとしてLibrary of the Yearを意識することは決して悪いことではないと思う。

  1. 今後の公共図書館のあり方を示唆する先進的な活動を行なっている。
  2. 公立図書館に限らず、公開された図書館的活動をしている機関、団体、活動を対象とする。
  3. 最近の1〜3 年間程度の活動を評価対象期間とする。

そういえば、この条件に照らせば、ACADEMIC RESOURCE GUIDE(ARG)も選考対象になるのだろうか。自分も来年は審査する側ではなく、審査される側に回りたいものだと思った最終選考会であった。運営にあたった知的資源イニシアティブのみなさんにも感謝。

Library of the Year 2008
http://www.iri-net.org/loy/loy2008.html
・知的資源イニシアティブ
http://www.iri-net.org/

その後、会場でみつけた佐藤翔さん(id:min2-fly)らを誘って、10人ほどの20代〜30代メンバーで一杯やって1日目は終了。