2009-01-02(Fri): 木村忠正さんの講演会レポート

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12月2日(火)に開催された講演会「集合知、あるいは、新自由主義の文化的論理−Wikipediaにみる社会知の変容とネットワーク社会としての日本社会」のレポート。筆者は小口峰樹さん。

・「【報告】木村忠正講演会「集合知、あるいは、新自由主義の文化的論理〜Wikipediaにみる社会知の変容とネットワーク社会としての日本社会〜」」(東京大学グローバルCOE「共生のための国際哲学教育研究センター」(UTCP)、2008-12-15)
http://utcp.c.u-tokyo.ac.jp/blog/2008/12/post-160/
・小口峰樹さん
http://utcp.c.u-tokyo.ac.jp/members/data/oguchi_mineki/

あいにく当日は別の予定があり参加できなかっただけに、詳細なレポートの存在はありがたい。これに限らず、東京大学グローバルCOE「共生のための国際哲学教育研究センター」(UTCP)は催しのレポートを必ず公開してくれるのでありがたい。

東京大学グローバルCOE「共生のための国際哲学教育研究センター」(UTCP)
http://utcp.c.u-tokyo.ac.jp/

以下、自分のためのメモとして気になった個所を抜粋しておく。

木村氏はウィキペディアを分析するにあたり、組織の構成原理として「ガバメント原理」と「ガバナンス原理」を区別する。

木村氏によれば、ウェブに見られる様々な集合知は次の三つの要素に分解できるという。それは、「三人文殊知」、「フィードバック知」、「マイニング知」である。

木村氏は、これら「三人文殊知−フィードバック知−マイニング知」の相互連関が21世紀の社会知を構成し、こうした社会知の動的な生成と変遷が人々の関心(attention)をめぐるゲームとして社会的現実を織り成してゆくと述べる。

以上の分析を踏まえ、木村氏は次のように現状の診断を行う。日本社会においては、現実社会そのものというよりは、メディアを通じて形成される現実社会の「イメージ」を主要な参照対象としてネット上での活動が展開されており、しかもこうした活動への参与は現実社会とは切り離された匿名性という様態において遂行されている。これらは相まって、ネット社会と現実社会との間におけるダイナミクスの不在という結果を招いている。したがって、われわれにとっての課題は、われわれが志向する集合知のかたちを描き出すとともに、ネット社会と現実社会との間にダイナミクスを生み出し、集合知を有益な仕方で生成・循環してゆく回路を整備することにあると言えるだろう。

「匿名性」が重要な論点となっているが、木村さんがどのような定義をしたのかがわからず、そこだけは残念。ところで木村さんとWikipediaとの関係だが、

ウィキペディア革命―そこで何が起きているのか?
・ピエール・アスリーヌ他著・佐々木勉訳『ウィキペディア革命−そこで何が起きているのか?』(岩波書店、2008年、1785円)
http://www.amazon.co.jp/gp/product/4000222058/arg-22/

の解説を書いている。この解説で木村さんはWikipediaの参照法を提案しているのだが、その内容がご本人のサイトにも掲載されている。

ここでは、学術的情報源としてのウィキペディアに対する言及の仕方について、 解説文で提案した方法を公開したい。

・解説 ウィキペディアと日本社会−集合知、あるいは新自由主義の文化的論理
http://www.ne.jp/asahi/kiitos/tdms/work/wikirevolution.html

私は非常に納得感がある提案なのだが、みなさんはどう思われるだろうか。

・木村忠正の仕事部屋
http://www.ne.jp/asahi/kiitos/tdms/hp.j.html