2009-02-11(Wed): それであなたはなにがしたいのか−田中敦司「図書館は利用者の秘密を守る−カウンターで感じた素朴な疑問から−」に感じた根本的な疑問
id:yoshim32さんの
・「図書館は利用者の秘密を守る−カウンターで感じた素朴な疑問から−」(読書ノートのつもり?なつれづれ日記、2009-02-09)
http://d.hatena.ne.jp/yoshim32/20090209/1234159904
に触発され、
・田中敦司「図書館は利用者の秘密を守る−カウンターで感じた素朴な疑問から−」(「みんなの図書館」370、2008-02)
http://www.jca.apc.org/tomonken/mi200802.html
を自分でも読んでみた。内容は、id:yoshim32さんが的確にまとめている通りだ。
さて、結論から言うと、これは単なる個人の信仰告白だ。そもそも文章が十分に練られておらず、結局何を主張したいのか、それもわかりづらいのだが……。
・「図書館は利用者の秘密を守る−カウンターで感じた素朴な疑問から−」(読書ノートのつもり?なつれづれ日記、2009-02-09)
http://d.hatena.ne.jp/yoshim32/20090209/1234159904
を読んだ上で目を通していただくことを前提にいくつかコメントしておこう。
まず、田中さんは日本国憲法や地方公務員法を根拠に、公共図書館は平等を旨としなくてはいけない、だから利用者によって対応に差があってはいけないとしているが、平等という言葉をもう少し丁寧に考えたほうがよい。
たとえば、平等は機会平等と結果平等という2つに分けて考えることができる。誰もが公共図書館のサービスを利用できるという機会の平等は保障されなければいけない。だが、その先で得られるサービスは、どうあったところで差がついて当たり前だ。いや、それは差ではなく違いだろう。機会の平等の先にある結果は利用者一人ひとりが違う人間であるように、一人ひとり違ってくる。それのなにが問題なのだろうか。
脊髄反射的な反応・反論は欲しない。田中さんには平等という言葉をきちんと定義した上で、もう一度考えを組み立てて欲しい。
また、田中さんや田中さんの主張に賛同する方々がそれでよければ、私はそれはそれで別に構わないのだが、「図書館員が他人であることが必要である」という主張は、自らの立場を危うくする論理に思える。私であれば、以下のような展開を想像してしまう。
なるほど、図書館員は他人でなければいけない。
↓
うむ、図書館員が同じ職場に長年居続けることはよくない。
↓
では、専門職採用はやめて、各部署を転々とする一般職採用にしよう
↓
いや、いっそすべて外部委託にして1年ごとに図書館員を入れ替えよう。
さて、いくぶん話題を広げ、常々思っていることをもう少し書いておこう。
仮に一歩、いや一無量大数くらい譲って、法が禁じていると理解したとしよう。一つうかがいたい。そこで思考停止でいいのだろうか。法は変えられるということを知っているのだろうか。法を変えようとは考えないのだろうか。法が禁じているから、やらない/やれない、ではなにもできない。それは、あまりにも非生産的な考え方だ。
もう一つ。もし、田中さんが真剣に警鐘を鳴らそうと思うなら、「みんなの図書館」ではなく、せめて「図書館雑誌」に寄稿・投稿したほうがよかったのではないか。別に「みんなの図書館」を貶める気はないが、発行団体である図書館問題研究会の性格を考えると、「みんなの図書館」の読者の多くは田中さんの主張に賛同するだろう。議論が巻き起こることは考えにくい。
率直に言えば、内輪に閉じこもって発言しても、意味がない。それが冒頭で個人の信仰告白と評した理由だ。
・「みんなの図書館」
http://www.jca.apc.org/tomonken/mitosyo.html
・図書館問題研究会
http://www.jca.apc.org/tomonken/
と、思ったことを書き綴ってみた。ただ、本当はこんなに言葉は必要ない。田中さんの文章を読んで、私が感じた根本的な疑問はただ一つ。その疑問で締めくくろう。
それであなたはなにがしたいのか。