2009-03-08(Sun): 公共図書館の源流を訪ねて(1)−掛川・報徳図書館

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2009-03-08(Sun)〜2009-03-10(Tue):
DEIMフォーラム2009(データ工学と情報マネジメントに関するフォーラム)
(於・静岡県ヤマハリゾートつま恋
http://db-event.jpn.org/deim2009/

に参加するため掛川を訪れる。フォーラムは午後からの開始なので、午前中早めに出て、掛川城大日本報徳社掛川市立中央図書館を訪ねてみた。

まずは掛川城

掛川城
http://lgportal.city.kakegawa.shizuoka.jp/kanko/center/kakejo/kakegawajou.jsp

天守閣は幕末に大地震で倒壊したものをごく最近再建しているが、御殿や大手門番所、太鼓櫓は江戸時代後期のものが現存している。特に御殿が残るのは、他に京都の二条城くらいで非常に貴重な江戸期の建造物。

1994年に再建された天守閣一帯には、再建時に掘り返した遺構に関する展示とセットになっており、先日訪れた高知城と似た雰囲気。

・「高知見聞記(1)−高知城跡三ノ丸石垣改修事業の現地展示」(編集日誌、2009-01-30)
http://d.hatena.ne.jp/arg/20090201/1233485425

天守閣から御殿へと抜けていくと、赤い橋が印象的な池の向こうに掛川市立図書館がみえてくる。

掛川市立図書館
http://library.city.kakegawa.shizuoka.jp/

館内も少しのぞいてみたが、天井からの採光を生かした木造りが素敵な建物だった。また、掘り下げ式の地下には休憩ラウンジが設けられている。なによりも感心したのは、玄関を入ってすぐ左に、つまり入館ゲートの前に生涯学習ホールという展示・催事のためのスペースが設けられていることだ。

今回やっていたのは作品の展示だったが、むしろ小規模な講演会のようなイベントで使うと良さそう。ぜひARGカフェをこのような場でやりたいものだ。ただ、残念なことに、

掛川図書館の行事案内
http://library.city.kakegawa.shizuoka.jp/kakegawa/event.html

には、今日開催されていたイベントの情報が出ていない。施設とウェブの一体的な運用をもっと強く意識してほしい。

なお、

・奥野寿夫「掛川市立中央図書館ができるまで」(『みんなの図書館』301、2002年5月)
http://www.jca.apc.org/tomonken/mi200205.htm

というレポートがあるようだ。

さて、市立図書館を出て向かいにある大日本報徳社と報徳図書館へ。

大日本報徳社
http://www4.tokai.or.jp/dainihonhoutoku/

は、二宮金次郎二宮尊徳)の指導を受けた岡田佐平治、岡田良一郎の父子が全国の報徳運動組織をまとめて設立したもので、敷地内にはいまなお使われている大講堂や、東京にあった有栖川宮邸を移築した仰徳学寮、仰徳記念館が残っている。大講堂の内部も見学し、写真を多数撮ったので、それは後日公開したい。和洋折衷の近代建築が好きな方にはたまらないと思う。

ちなみに、

岡田良一郎肖像画。洋画家・黒田清輝による肖像画は珍しい。

・黒田記念館
http://www.tobunken.go.jp/kuroda/

そして、最後に一番のお目当てである報徳図書館へ。報徳図書館は岡田良一郎の没後その功績を記念して設けられたもので、1927年に落成、1928年に開館している。ここで重要なのは、その後1952年までの24年間に渡って一般に開放されていたことだ。こういう場合、よく民間の図書館、私設の図書館と表現するが、つまりは公共図書館として機能していたわけだ。ちなみに1952年から1969年までは当時の掛川町(1954年以降、掛川市)の町立図書館として建物が利用されたという歴史もある。

さらに深くこの報徳図書館について知りたいのだが、ざっと調べた限りでは、いままで論文が書かれていないようだ。これは残念だが、非常に興味深いテーマを発見したと喜ぶべきかもしれない。日程的に余裕があれば、帰りがけにもう一回、掛川市立中央図書館に寄って郷土資料のコーナーで資料を漁ってみよう。とはいえ、

掛川市
http://lgportal.city.kakegawa.shizuoka.jp/bunka/culture_history/sisi/shishi.jsp

が電子化されてウェブ公開されていれば助かるのだが……。もうずいぶん前に、

読谷村
http://www.yomitan.jp/sonsi/index.htm

を紹介したことがあるが、市町村市の電子化とウェブ公開は遅々とした歩みだ。ざっと調べてみたところ、他に、

・デジタル八雲町史/デジタル熊石町史
http://www2.town.yakumo.hokkaido.jp/history/
函館市史デジタル版
http://www.city.hakodate.hokkaido.jp/soumu/hensan/hakodateshishi/shishi_index.htm
・芦屋市史など芦屋の資料
http://www.city.ashiya.hyogo.jp/welcome/history/shiryou.html
福井県文書館 デジタル歴史情報
http://www.archives.pref.fukui.jp/fukui/digitalarc.html

がある。その他、気になった事例をいくつか。

長岡京市
http://www.city.nagaokakyo.kyoto.jp/contents/09030001.html

は本文は公開されていないものの、長岡京市史索引が公開されている。

亀山市
http://www.kameyamarekihaku.jp/sisi/

では、市史編纂事業の途中成果を動画も交えて公開している。

・新「尼崎市史」編集事業
http://www.archives.city.amagasaki.hyogo.jp/shishi.html

「『図説』刊行後の新「尼崎市史」の事業計画」のところにこうある。

〔Web上における新「尼崎市史」〕
すでに公開しているWeb版尼崎地域史事典“apedia”に加えて、平成23年度をめどに『図説尼崎の歴史』Web版を構築・公開し、さらに所蔵写真などの画像や史料翻刻データ、聞き取り調査記録など、さまざまな歴史情報を相互に関連付けて公開する尼崎の総合的な歴史サイトづくりをすすめていきます。

2年後の公開を計画しているようだ。期待したい。

・Web版尼崎地域史事典“apedia”
http://www.archives.city.amagasaki.hyogo.jp/apedia/

また、長野県の「信州・フレッシュ目安箱」では、2005年に以下のようなやりとりがされていて、非常に参考になる。

・「長野県史全文のインターネット公開における諸問題について」
http://www.pref.nagano.jp/soumu/koho/meyasu/shosai/koukai/2005/02/2005_007824.htm
・「長野県史のインターネット公開の具体的許諾の手続きについて」
http://www.pref.nagano.jp/soumu/koho/meyasu/shosai/koukai/2005/03/2005_007918.htm

閑話休題

知識の経営と図書館 (図書館の現場8)

おりしも

・柳与志夫著『知識の経営と図書館』(勁草書房、2009年、2520円)
http://www.amazon.co.jp/gp/product/4326098341/arg-22/

を読んだ直後だったので、報徳図書館の見学は非常に刺激的だった。公共図書館の源流を訪ねる旅の第一弾として、これ以外の事例も探していこう。

なお、大講堂や報徳図書館をご案内いただいた佐藤幸子さん(大日本報徳社参事講師、全国報徳女性部部長)にはここに記して感謝したい。