2009-04-02(Thu): インターネット時代のライブラリアンを育てるために必要なこと−勇気ある2軍落ち、あるいは勇気ある選手交代を求めたい

日本経済新聞の朝刊に興味深い記事が出ていた。

ネット時代の図書館司書を育てるため、文部科学省は司書の養成課程を大幅に見直す。「図書館情報技術論」「情報サービス演習」といった新しい科目を設けるとともに、資格が得られる大学の科目を見直し、単位数も現行の20から24に増やす。情報化社会の進展で司書の仕事そのものが多様化していることに対応する。3年後の実施を見込んでいる。

・「ネットに強い司書育成 文科省、養成課程見直し」(日本経済新聞2009-04-02
http://www.nikkei.co.jp/news/shakai/20090402AT1G1603B01042009.html

日本経済新聞のサイトで公開されている記事はリード部分のみだが、記事全体ではさらに詳しい話が載っている。たとえば、「具体的にはデータベースや検索エンジンの仕組みや使い方を学ぶ「図書館情報技術論」や、情報を探す能力を実践的に育てる「情報サービス演習」を新設」など。

要するに、

・司書資格取得のために大学において履修すべき図書館に関する科目の在り方について(報告)
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/shougai/019/gaiyou/1243330.htm

を受けてのことだが、果たしてこれで何かが変わるだろうか。もし、これまでの司書教育に関わってきた方々がそのままその任にあたる限り、私は何も変わらないと思う。現にこれまで教えてこれなかった人々が新たな内容を教えることができるという根拠がない。

おそらく、検索エンジンの仕組みというのも、検索エンジンには2種類あり、1つがYahoo!に代表されるディレクトリ型検索エンジン、もう1つがGoogleに代表されるロボット型検索エンジン……という教育が引き続くのだろう。

これまで、この問題はあえて指摘してこなかったが、いい機会なのでふれておこう。日本の様々な大学図書館公共図書館でライブラリアンが情報検索ガイド本をつくっている。そして、それを用いて学生や利用者向けの講習を行っている。そこで用いるテキストには、検索エンジンディレクトリ型のYahoo!とロボット型のGoogle云々と出てくるわけだ……。この情報は明白に誤りなのだが、ライブラリアンは気づいておらず、その証拠にいつになっても改訂されない。司書を養成する場においても、あるいはそこで養成された司書が利用者に情報リテラシーを講釈しようとする場においても、無責任な情報が再生産され続けている。

閑話休題。話を戻そう。こういう状況をみると、「データベースや検索エンジンの仕組みや使い方を学ぶ「図書館情報技術論」や、情報を探す能力を実践的に育てる「情報サービス演習」を新設」するくらいでは何も変わらないとしか思えない。必要なことは、カリキュラムの見直しに加えて、新カリキュラムの要求水準に見合った講師の起用だ。これまでその任にあった方々には悪いが、カリキュラムが変わるのに講師の身がそのまま保障されるということはおかしいだろう。講師もきちんと勉強し、教えることができるレベルの知識と経験を本当に積んでいるのかを検証すべきだ。結果的にはいわば2軍落ちしてみっちりとトレーニングを積んでもらわなくれはいけない人もいるだろう。あるいはより優秀な人材と交代していただかざるをえない場合もあるだろう。だが、それくらい勇気ある一歩を踏み出さない限り、何も変わらないと思う。