2009-04-08(Wed): 自分の基盤を考える−図書館論
ここしばらく考えていること。
図書館の専門家でも実務家でもないにも関わらず、ここ数年は図書館業界で活動することが多いのだが、自分の図書館論の基盤は何なのだろうか。以下、メモとして。
大学に入るまでは横浜市内で育ったが、確か小学生になる頃までは住んでいた区内には公共図書館がなかった。小学校の低学年の頃だったか、母親の友人たちが設置運動を展開し、横浜市図書館の分館が設置されたことを覚えている。
幼少期の図書館体験として、もう一つ重要なのは、
・神奈川県立金沢文庫
http://www.planet.pref.kanagawa.jp/city/kanazawa.htm
の存在。
いまではすっかりと立派な建物になったが、当時はずいぶんと老朽化した戦前の建物が現役で使われていた。神奈川県立金沢文庫は鎌倉幕府の執権を出した金沢氏の菩提寺である称名寺に隣接しており、小学生の頃は日がな一日お寺の池でザリガニ釣りに興じていたものだ。
ライブラリアンでは経験者も多いであろう図書委員だが、中学校のときに一度やったような記憶はあるが、高校ではやっていない。一浪して国際基督教大学(ICU)に入学し、ここで学生証による入退館ゲートやOPACの衝撃を味わう。いずれも自分が入学したちょうどその頃に導入されたばかりのシステムだったはずだ。
在学中は、
・国際基督教大学図書館(ICU図書館)
http://www-lib.icu.ac.jp/
にずいぶんとお世話になった。なにせ貸出冊数に制限のない図書館である。我ながら非常によく勉強し出した大学3年生の頃は常時100冊近くを借りていた。また、ライブラリアンの方々に非常にお世話になったことも確かだ。前館長の長野由紀さんをはじめ、以前書評させていただいた『図書館の再出発−ICU図書館の15年』の著者はどなたもお顔が思い浮かぶ。
・「黒澤公人、畠山珠美、松山龍彦、久保誠、長野由紀、山本裕之、浅野智美著『図書館の再出発−ICU図書館の15年』(大学教育出版、2007年、2100円)」(編集日誌、2007-12-09)
http://d.hatena.ne.jp/arg/20071210/1197214980
・書評「図書館の再出発−ICU図書館の15年」(「情報の科学と技術」58-3、情報科学技術協会、2008-03-01)
http://ci.nii.ac.jp/naid/110006646613/
ICU図書館絡みでいえば、在学中の1995年に、
・多摩アカデミックコンソーシアム図書館サービス
http://www-lib.icu.ac.jp/TAC/
が始まったことも印象的だった。もの珍しさもあって、東京経済大学図書館に自転車で何度か行ったことを覚えている。
さて、ここまではあくまで経験の話なのだが、自分として一つ画期的な出来事だったのは、大学3年生の折に立川明教授の授業「日本教育史」で"Education in Japan"(1946年2月発表)と『アメリカ教育使節団報告書』(1946年4月発表)を読んだことだ。
・『アメリカ教育使節団報告書』(村井実訳、講談社学術文庫、1979年、672円)
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4061582534/arg-22/
は比較的よく知られているだろうが、"Education in Japan"はこの時代に関心のある方でなければまず知らない資料だろう。"Education in Japan"は、GHQ/SCAPに置かれた民間情報教育局(Civil Information & Education Division)によって教育使節団受け入れのためにまとめられており、『アメリカ教育使節団報告書』の源流ともいえるものだ。この2つの報告書を読んだ衝撃は大きかった。おりにふれて図書館は民主主義の砦といわれるが、この2つの報告書にはその考えが色濃く出ている。ライブラリアンで、特に公共図書館のライブラリアンで、「図書館は民主主義の砦」論に依って立つ方がいるなら、最低限『アメリカ教育使節団報告書』は読んだほうがいい。
なお、これらの資料の位置づけについては、根本彰さん(東京大学)らによる
・占領期図書館史プロジェクト
http://plng.p.u-tokyo.ac.jp/text/senryoki/
・「占領期における図書館政策の推移−CIE関係文書による」
http://plng.p.u-tokyo.ac.jp/text/senryoki/gakkai99p.html
に詳しいのでご参照いただきたい。
そうこうしているうちに、1995年のWindows95ブーム、それに引き続くインターネットブームが到来し、大学を卒業する頃には、Webcatが登場してきたわけだ。大学卒業後は図書館から徐々に遠ざかっていくわけだが、インターネットの普及とともにインターネットで再び図書館に出会うようになったということだろう。
しかし、こうやって振り返ってみると、なにが自分の図書館論の核になったのだろう。まだ答えは見つからない。