2009-09-12(Sat): 日本社会情報学会(JSIS & JASI)合同研究大会で泉田裕彦さん(新潟県知事)の講演を聴講し、新潟県立図書館を訪問

早朝に家を出て上越新幹線で新潟へ。


2009-09-12(Sat)〜2009-09-13(Sun):
2009年日本社会情報学会(JSIS & JASI)合同研究大会
(於・新潟県新潟大学
http://www.human.niigata-u.ac.jp/~2009jsis-jasi/

に参加するためだ。ここでは明日ワークショップのコメンテーターを務める。社会情報学会の会員ではないのだが、多方面でお世話になっている小笠原盛浩さん(東京大学)からご依頼いただいたのだ。しかし、社会情報学会に来るのは実は今回が初めてではない。4年前に京都で開催された

2005-09-12(Mon)〜2005-09-14(Wed):
社会情報学フェア2005
(於・京都大学吉田キャンパス
http://www.lab7.kuis.kyoto-u.ac.jp/sifair2005/index_j.html

の中で行われた

・第3回情報知財フォーラム「コンテンツ・アーカイブ知財
http://i.coe21.kyoto-u.ac.jp/event/sifair2005/chizai/

で、当時在籍していたYahoo! JAPANの立場で「Webアーカイブの可能性と課題−事業者の視点から」という講演を行っている。その流れで社会情報学会の研究報告も聴講させていただき、懇親会にも参加させてもらった。

・2005-09-12の編集日誌
http://d.hatena.ne.jp/arg/20050918/1134798526

さて、今回の2009年日本社会情報学会(JSIS & JASI)合同研究大会の最大の目玉は、新潟県知事である泉田裕彦さんの講演「災害時にIT(情報技術)の果たすべき役割」だろう。

新潟県知事公式ホームページ(海彦、山彦、裕彦)
http://chiji.pref.niigata.jp/
・個人サイト
http://home.r00.itscom.net/izumida/
・後援会サイト
http://www.h-izumida.jp/

2004年の知事就任の直前に発生した中越大震災、2007年の中越沖地震という二度に渡る震災に知事としてどのように思考し行動したのか、を主にメディアとITの観点から語られた。最も印象的だったのは、季節、時代、場所、タイミングによって、災害はすべて異なり、ここが災害の恐ろしさだと語った点。また、手書きボード、広域ラジオ、テレビ、コミュニティーFM、インターネットといったメディアごとに、震災時の活用ポイントを整理していたのは、非常に勉強になった。泉田さんによれば、発生直後に最も有用なのは、避難所における手書きボードであるという。電気が復旧していない地域が多い段階では、テレビやインターネットは機能せず、広域ラジオのほうが役立つらしい。しかし、電気の復旧後はテレビによる映像の力で避難が順調に進んだり、復旧段階に進むと個別情報を届けやすいインターネットが生きてくるという。そして、全体的に生活再建が進んでくると、コミュニティーFMが機能してくるとまとめていた。

もう一つ、大いに学ばされたのが、被災に対応したチームを他県での災害発生時に支援に送り込んでいるという話だ。もちろん、中越の際の恩返しという意識もあるが、同時に他県の災害救助に関わることで、新潟県職員の災害対策スキルを維持する狙いもあるという。知識や経験の伝承方法として非常に賢明な手法と感じられた。

さらにもう一つ。これは不勉強で知らなかったが、大学との連携によって取り組んだGIS地図が復旧対策を練る上で非常に有用だったとのこと。

平成19年新潟県中越沖地震におけるGISを利用した地図作成について
http://www.pref.niigata.lg.jp/bosai/1202835666699.html

さて、講演を聴いた後は、市内中心部に戻った。

理由は新潟県立図書館を見学するため。

新潟県立図書館
http://www.pref-lib.niigata.niigata.jp/

新潟県立図書館は、1月に参加した

2009-01-15(Thu):
全国公共図書館サービス部門研究集会・近畿公共図書館協議会研究集会「新たな地域の情報拠点をめざして−図書館活動と情報発信」
(於・奈良県奈良県立図書情報館)
http://www.library.pref.nara.jp/event/kenkyu.html

で館長の安藤哲也さんにお目にかかり、ずいぶんと活発に業務改善に取り組んでいる図書館という印象を受けていたから。

・「全国公共図書館サービス部門研究集会・近畿公共図書館協議会研究集会で講演」(編集日誌、2009-01-15
http://d.hatena.ne.jp/arg/20090116/1232057666
・「引き続き、 全国公共図書館サービス部門研究集会・近畿公共図書館協議会研究集会に参加」(編集日誌、2009-01-16)
http://d.hatena.ne.jp/arg/20090119/1232321268

実際に訪れたみた上での印象は、安藤さんにうかがっていた以上に素晴らしかった。

新潟県立図書館は市の中心部からはやや離れており、バスで30分程度かかる。しかし、その不便さにも関わらず、利用者でごった返していた。建物は新潟県立鳥屋野潟公園の中にあり、隣には新潟県立自然科学館が立っている。

新潟県立鳥屋野潟公園
http://www.toyanogata-park.com/
新潟県立自然科学館
http://www.lalanet.gr.jp/nsm/


大きな地図で見る

図書館は新潟県立文書館と一体で運営されており、両館の館長を安藤さんが兼任している。

新潟県立文書館
http://www.lalanet.gr.jp/npa/

さて、まず目に入ったのが、館内にあるライブラリーカフェmicicocoで駐日オーストラリア大使の来訪を記念して特別メニューを出すというポスター。

・micicoco
http://www.micicoco.com/
・ライブラリーカフェ micicoco
http://micicococafe.blog73.fc2.com/

図書館での喫茶文化に憧れる身としては、図書館見学より先にまずコーヒーを一杯。店内にはカフェが自前で用意した本も置かれており、読み聞かせをしている親子の姿がある。
カフェは業者の独自運営だが、図書館側でも「新潟県立図書館オーストラリアフェア」と称して本の紹介をしていた。

見事な連携プレー。後ほど、同館に勤める知り合いのライブラリアンにうかがったところでは、カフェを経営する姉妹がオーストラリアに留学した経験があり、その縁での大使来訪を聞きつけて急遽テーマ展示を組んだという。

テーマ展示は、他にも工夫が凝らされており、「政権交代」「国際天文年」「高校野球準優勝 日本文理高校」といった展示がされていた。

特に「政権交代」は政治的なテーマであり、公共図書館で特集を組むには、自己規制が働きやすいテーマだろう。しかし、いまの話題でもあり、図書館の役割を見事に発揮しているように思う。

次に目についたのが、「公開書庫」という言葉。

・公開書庫オープン
http://www.pref-lib.niigata.niigata.jp/oshirase/koukaisyoko%20.html

訪問して初めて知ったが、この7月から従来の閉架書庫への入室を実施しているとのこと。

感心したのは、書架の間に通り名をつけていること。「郷土通り」「全集通り」「文学通り」「史学通り」「芸術通り」「政経通り」と命名されている。分類記号は図書館側の都合に過ぎず、利用者にはわかりづらいことを踏まえた工夫にうならされた。


公開書庫で感心したもう一つの点が、郷土資料の貸出方針について、現時点での考えを説明していたことだ。

何事も、現時点でできることと、できないことがある。それはやむをえない。だが、そのとき説明を一切省いてしまうのではなく、できない理由を説明し、今後の方向性を示すのは、非常に重要なことだ。些細なことに見えるかもしれないが、こういった点にこそ、新潟県立図書館の利用者との対話姿勢が際立って感じられる。

座る環境にもこだわっている。様々な形の椅子が至る所に置かれ、ついつい読書にふけってしまう設計がなされている。

持ち込みPCを電源付きで利用できる席やオアシスコーナーと命名されたゆるやかな読書空間もあり、決して広くはない館内を有効に使っているように感じられた。

利用者の目線でサービスが設計され、実施されていることをうかがわせる点として、カートを用意している点も素晴らしい。

細部に至るまで丁寧に、かつ徹底してサービスを考えていることをつくづく実感させられた。今後の動きに注目していきたい。

ちなみに、館長の安藤さんと出会った全国公共図書館研究集会の次回は来年1月に新潟で開催される。

2010-01-14(Thu)〜2010-01-15(Fri):
平成21年度全国公共図書館研究集会(サービス部門 総合・経営部門)・関東地区公共図書館協議会運営研究会「出版文化の危機と新しい図書館像」
(於・新潟県新潟市民プラザ)
http://www.pref-lib.niigata.niigata.jp/oshirase/h21-zenkokushukai.html

新潟県立図書館の見学も計画に組み込まれているので、関心をお持ちの方はぜひご参加を。なお、参加は図書館関係者に限られておらず、希望者はどなたでも参加できるようだ。