2006-02-03(Fri): 喜びを感じさせる発想 −Under the Blue Sky

昭和女子大学がUnder the Blue Skyというサイトを公開していることを知る。「昭和女子大学内に限らず多くの方々に、暗いニュースが日々飛び交うなか少しでも喜びを感じてもらいたい」という目的で企画されたもので、絵本やスクリーンセーバー、壁紙やペーパークラフトを公開している。公開は2003年とずいぶん前のことだ。このようなサイトの存在を今日まで知らなかったとは……。不明を恥じるばかり。
・Under the Blue
http://www.swu.ac.jp/bluesky/
昭和女子大学
http://www.swu.ac.jp/

2006-02-02(Thu): 国立国会図書館、独立行政法人化構想に接して

産経新聞のスクープ(?)。「国会図書館、独法化へ 自民行革本部、国会改革の目玉に」という記事が出る。詳細は記事を参照してほしいが、自民党行政改革推進本部が、2008年度を目途に国立国会図書館独立行政法人化することを求める方針を決めたという。報道によれば、「政府の公務員総人件費削減に合わせたもので、行政機関よりも遅れている国会(立法機関)の改革を進めるための目玉に位置づける」とのことだが、まさに目玉としてねらわれた印象を受ける。

ところで、記事では、「国会図書館の本来業務は、国会議員の立法、調査活動の補佐」とし、「資料の収集、整理や一般への閲覧などの司書業務」や関西館、国際子ども図書館の運営、そして電子化事業を「副業」と扱っている。しかし、国立国会図書館法ではその第二条に

国立国会図書館は、図書及びその他の図書館資料を蒐集し、国会議員の職務の遂行に資するとともに、行政及び司法の各部門に対し、更に日本国民に対し、この法律に規定する図書館奉仕を提供することを目的とする」

と掲げている。国会への貢献が国立国会図書館の主たる役割ではないことは、この条文に明らかだろう。国立国会図書館が、「国立図書館」なのか、「国会図書館」なのか、この点は長年議論になっているところだ。議会に仕える図書館としての役割を重視する考えもあれば、議会への奉仕とは軽視しないものの、唯一の国立図書館として国民に奉仕することもあわせて重視する考えもある。おそらく産経新聞の記者は国立国会図書館法に一瞬目を通すこともなく、取材先である自民党で聞かされた話をそのまま記事にしてしまったのだろう。せっかくのスクープではあるが、その価値を損なう恥ずかしい記事ではないだろうか。

話を国立国会図書館に戻そう。じきに日本図書館協会のような業界団体や一人ひとりの図書館員から声があがるだろうが、私の感想を述べておきたい。

行政改革の一環として国会事務局の改革に取り組むことは、もはや動かしがたい流れだろう。衆議院参議院で別々に事務局を持ち、組織や人員が重複している点は確かに改められるべきことだ。だが、その流れのなかに、国会に属するからといって、国立国会図書館を含めるという前提がそもそも間違っている。地味な衆参両院の事務局を改革するより、国立国会図書館独立行政法人化するほうが、政治的なインパクトが大きいという判断、苦戦しそうな事務局改革より国立国会図書館独立行政法人化はたやすい、という判断が透けて見える。

記事では、「独法化は国会職員の非公務員化と、不透明とされていた運営内容の情報開示を促進するのが主な狙いだが、問題視されていた副業拡大を自由に行えるメリットも生まれてくる」と述べられているが、運営内容の情報開示が不透明である、副業拡大が問題視されている、ということであれば、いっそ一連の行政改革とは別に国立国会図書館だけを対象に本格的な改革に取り組んではどうだろうか。それこそ国立国会図書館の本来業務は何か、という論点にも決着がつけられるというものだ。

今後出されるであろう多くの批判は、おそらく国立国会図書館の文化的な価値や役割を強調するものが多いだろう。社会的な使命を重視する論調も少なくないだろう。私はそのような論点を軽視するわけではないが、国立国会図書館を改革の対象とすることには賛成だ。だが、その改革は国立図書館の使命や役割を根源的に問う発想から生まれなくてはいけない。目玉というのであれば、日本の文化政策・文化行政の改革の目玉という発想で取り組むくらいの覚悟が必要だろう。

それくらいの熱い思いが自民党行政改革推進本部にあるのなら話は違うが、「国会改革の目玉」程度の発想から始まっている今回の提案はとうてい受け入れられない。国立国会図書館から図書館奉仕の提供を受ける権利を持つ日本国民の一人として強くそう思う。

・「国会図書館、独法化へ 自民行革本部、国会改革の目玉に」(産経新聞2006-02-02
http://www.sankei.co.jp/news/060202/sei028.htm
自由民主党行政改革推進本部
http://www.jimin.jp/jimin/gyo/
国会図書館
http://www.ndl.go.jp/
国立国会図書館に関する法規
http://www.ndl.go.jp/jp/aboutus/laws.html
国立国会図書館法
http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S23/S23HO005.html

2006-02-01(Wed): 「インターネット入試の現状と課題」のその後

読者の方からメールをいただく。第114号(2001-11-06)と第076号(2000-09-25)に掲載した「インターネット入試の現状と課題」の続きをご希望という。いっとき非常に関心を持って調べたテーマだが、その後の追加レポートをするにはいたっていない。関心の薄れや多忙さということも理由の一つだろうが、なによりも最近ではインターネット入試というものを新たにみかけないのだ。新たな実施校がないのか、それとも世間の関心を呼ばなくなり、目にする機会がないのか、どちらだろうか。少し調べてみたが、第114号の「インターネット入試の現状と課題」(2002年度版)で紹介して以降、新たな実施校は実はほとんどないのではないか。みつかったのは、聖心ウルスラ学園短期大学だけである。他に新たな実施校はみあたらない。むしろ、これからは第114号に書いたように、

インターネット入試を導入している各校には、受験生のプライバシーに配慮しつつ、試験の実施状況から合格者の入学から卒業までの状況を把握すること、そしてその情報を広く公開していくことが望まれる。公開された情報を元に制度のあり方が研究者によって検討され、また受験生自身を含めた市民の評価にさらされてこそ、インターネット入試はその存在意義を語れるようになる。

という視点が必要なのかもしれない。すでに導入校の多くでインターネット入試で入学した学生を卒業させている。ぜひインターネット入試の功罪を本格的に論じられるようなデータの公開を望みたい。

聖心ウルスラ学園短期大学
http://www.ursula.jp/examinationliterature/
・岡本真「インターネット入試の現状と課題」(2002年度版)(第114号、2001-11-06)
http://www.ne.jp/asahi/coffee/house/ARG/114.html
・岡本真「インターネット入試の現状と課題」(第076号、2000-09-25)
http://www.ne.jp/asahi/coffee/house/ARG/076.html

2006-01-31(Tue): ワーキングペーパーとディスカッションペーパーの違いとは

専門家の方々からすると、きわめて初歩的な質問で恐縮だが、「ワーキングペーパー」と「ディスカッションペーパー」は同じもの? 違うもの? それぞれどういう意味だろう。

真剣な疑問です。ご存知の方、教えてください。

2006-02-04(Sat): 政治談話録音のインターネット公開を望む

年始早々の1月6日に国立国会図書館から、「「賀屋興宣政治談話録音」および「市川房枝政治談話録音」の公開(利用提供開始)について」というお知らせが出ている。政治談話録音とは、1961年から1987年まで、戦前・戦中・戦後の政治史に関して計10人にヒアリングした録音資料のことだ。原則的に録音から10年が経過すると、カセットテープと、テープから文字起こしをした「談話速記録」が公開される。今回、公開されたのは、第1次近衛文麿内閣と東条英機内閣で蔵相を務めた故・賀屋興宣さんと、婦人運動を起こし、後に参議院議員を務めた故・市川房枝さんの談話である。
さて、思うのだが、カセットテープと文字起こしをした「談話速記録」は国立国会図書館の東京本館憲政資料室で公開されるということだが、これこそインターネットで公開してもらえないだろうか。もはや歴史上の人物であるだけに、肉声を聞ける音声ファイルが公開されていると相当インパクトがあるはずだ。また、インターネットでの公開は一部にとどめ、DVDやCDにして販売できないだろうか。さまざまな制約があることは容易に想像できるが、ぜひ検討してほしい。
なお、政治談話録音には他に故・町野武馬さん(戦前の張作霖爆死事件関連)、故・牟田口廉也さん(蘆溝橋事件関連、インパール作戦関連)、故・今村均さん(陸軍軍制関連)といった旧日本軍の軍人や故・鈴木茂三郎さん(戦前の社会主義運動関連)、故・木戸幸一さん(「木戸日記」に関連した秘史関連)、故・迫水久常さん(2.26事件関連、終戦関連)、故・勝間田清一さん(企画院事件、日本社会党の分裂と統一関連)といった政治家・官僚からの聞き取りがあり、これらはすでに公開されている。残るは、故・藤山愛一郎さん(東条内閣倒閣運動、日中関係関連)で、2011年に公開される見込み。
国会図書館には他に「日本国憲法制定に関する談話録音」という録音資料がある。これもあわせ、ぜひ電子媒体での公開に取り組んでほしい。

・「賀屋興宣政治談話録音」および「市川房枝政治談話録音」の公開(利用提供開始)について
http://www.ndl.go.jp/jp/information/press.html#060106
・政治談話録音(テーマ別調べ方案内)
http://www.ndl.go.jp/jp/data/theme/theme_honbun_301041.html
国立国会図書館東京本館憲政資料室
http://www.ndl.go.jp/jp/service/tokyo/constitutional/
日本国憲法制定に関する談話録音(テーマ別調べ方案内)
http://www.ndl.go.jp/jp/data/theme/theme_honbun_301040.html
国立国会図書館
http://www.ndl.go.jp/