2005-03-11(Fri):

今日の朝日新聞夕刊によれば、井上史雄さんが東京外国語大学を定年退職するという。井上史雄さんは『新方言辞典稿』(1996年版・暫定公開用)を公開してきた方である。これは1980年代から収集してきた「新方言」とは、主唱者の井上さんらによれば、
・「若い世代に向けて増えている」
・「標準語/共通語と語形が一致しない」
・「地元でも方言扱いされている」
という特徴を持った新しい方言のことをいう。井上さんはこの新方言と関連する文献の一覧を『新方言辞典稿』としてはやくからインターネットで公開し、またその内容を発展させた『辞典〈新しい日本語〉』(井上史雄・鑓水兼貴編著、東洋書林、4725円)を出版している。書籍出版後もサイトの更新を続け、インターネットと書籍の双方を関連させながら活用してきた実績を持っている。こういう方が定年退職を迎えるのは、やはりさびしい思いがする。1942年生まれというお年から考えて、別の大学に移り、教育と研究を続けると思われるが、さらなるご活躍を祈りたい。ちなみに、朝日新聞の報道や東京外国語大学のサイトによれば、最終講義は「経済言語学の視点」と題して行われたという(2005-02-18)。数年前にこのテーマで新書を出しており、新方言に加えて新たな研究テーマに取り組んでいるご様子に感心する。
ところで、この話題とは直接関係しないが、朝日新聞の記事は、井上さんの最終講義をベースに書かれているのだが、最終講義が行われた日時が記されていなかった。いつ、どこで、だれが、なにが、なぜ、どのようにあったのか(4W1H)を正確に伝えることは報道の基本である。この記事に日時が不要と判断したのはなぜだろうか。

新方言のページ
http://triaez.kaisei.org/~yari/Newdialect/
・井上史雄のホームページ
http://www.tufs.ac.jp/ts/personal/inouef/
・鑓水兼貴のホームページ
http://triaez.kaisei.org/~yari/
・『辞典〈新しい日本語〉』(井上史雄・鑓水兼貴編著、東洋書林、4725円)
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4887215320/arg-22
・『日本語は生き残れるか 経済言語学の視点から』(井上史雄著、PHP新書、693円)
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4569617271/arg-22