2006-01-20(Fri):

英国滞在5日目。ハロッズ(Harrods)、セント・ポール大聖堂(St Paul's Cathedral)、タワーブリッジ(Tower Bridge)あたりをうろうろし、夜の便で日本に向けて出発。

さて、昨日訪れた英国図書館(British Library)だが、一言でいうと「BL」というブランドが意識して形作られているという印象を持った。館内、館外の至るところでみかける「THE BRITISH LIBRARY - The world's knowledge」というキャッチフレーズや赤地に白抜きされた「BRITISH LIBRARY」という文字など、コーポレートアイデンティティ(ライブラリーアイデンティティ)が、しっかりと築かれている。館内には書店が設けられており、英国図書館が発行したものをはじめ、さまざまな書籍やCD、DVDが販売されている。また「BRITISH LIBRARY」というロゴをあしらったペンなどのグッズも販売されている。見事な徹底ぶり。

その他、リアルな施設について少々。まず入館自体には手続き不要というのがうれしい。実際に蔵書を請求・閲覧するReading Roomへの入室には別途手続きが必要だが、施設の一部は手続きなしで利用できる。たとえば、基本的な質問をしたり、Bookshopで本を買ったり、レストランで食事をしたり、といったことは誰でも自由にできる。また、「Beautiful Minds: Capture the spirit of Nobel achievement」のような展示会を閲覧することもできる。これは入館資格を定め、面倒な入退館手続きを必要とする日本の国立国会図書館との大きな違いだろう。英国図書館のこの仕組みは、図書館の敷居を下げている。実際、私はレストランで食事をし、Bookshopでペンを買っただけである。しかし、図書館にはこのような楽しみ方があっていいだろう。

さて、調べてみたところ、英国図書館はやはり戦略的にブランディングに取り組んでいるようだ。南山宏之さんの「経営戦略としての図書館ブランディング−英国図書館のリ・ブランディング事例から−」(「カレントアウェアネス」283、2005-03-20)によれば、2000年からリ・ブランディング(ブランド再構築)のプロジェクトに取り組んでいるという。そして、このプロジェクトを主導する戦略マーケティング・コミュニケーション局長のジル・フィニーさんは、民間会社から登用されたプロのマーケターという。ちなみに幹部人材には、すべて外部の専門家が登用されている。国立国会図書館にも英国図書館に劣らないブランディングを期待したいが、まずは英国図書館並みの思い切った人材登用(外部・若年)を行なうべきだろう。

ところで、英国図書館のサイトはドメインに「bl.uk」を使っている。政府系の機関を示す「bl.gov.uk」や学術系の機関を示す「bl.ac.uk」ではない。フランス国立図書館(Bibliotheque nationale de France)やドイツ図書館(Die Deutsche Bibliothek)も同様で組織属性を持たない汎用ドメインを使っている。汎用ドメイン「bl.uk」の使用は、「BL」のブランディング強化と結びついているのだろう。さて、日本の行政機関でこのようにブランディングを意識した汎用ドメインの使用例はあるのだろうか。現在思いつく範囲では、理化学研究所宇宙航空研究開発機構JAXA)、高エネルギー加速器研究機構KEK)がある。他に該当する事例があれば、お教えください。

ハロッズ(Harrods)
http://www.harrods.com/
セント・ポール大聖堂(St Paul's Cathedral)
http://www.stpauls.co.uk/
タワーブリッジ(Tower Bridge)
http://www.towerbridge.org.uk/
・英国図書館(British Library)
http://www.bl.uk/
・The British Library - Book Shop
http://www.bl.uk/acatalog/
・Beautiful Minds: Capture the spirit of Nobel achievement
http://www.bl.uk/onlinegallery/features/beautifulminds/homepage.html
国立国会図書館
http://www.ndl.go.jp/
国立国会図書館 - 東京本館:入館資格・入退館手続
http://www.ndl.go.jp/jp/service/tokyo/in.html
国立国会図書館 - 関西館:入館資格・入退館手続
http://www.ndl.go.jp/jp/service/kansai/in.html
・南山宏之「経営戦略としての図書館ブランディング−英国図書館のリ・ブランディング事例から−」(「カレントアウェアネス」283、2005-03-20)
http://www.ndl.go.jp/jp/library/current/no283/CA1550.html
・柳与志夫「BLの新幹部人事体制固まる―すべて外部の専門家に!―」(「カレントアウェアネス」265、2001-09-20)
http://www.ndl.go.jp/jp/library/current/no265/doc0002.htm
・『カレントアウェアネス』『カレントアウェアネス-E』テーマ別記事一覧(BL)
http://www.ndl.go.jp/jp/library/current/casearch/1/kiji000.html#001005
・フランス国立図書館(Bibliotheque nationale de France)
http://www.bnf.fr/
・ドイツ図書館(Die Deutsche Bibliothek)
http://www.ddb.de/
・Webドメインマーケティング
http://www.webdom.jp/
理化学研究所
http://www.riken.jp/
宇宙航空研究開発機構JAXA
http://www.jaxa.jp/
高エネルギー加速器研究機構KEK
http://www.kek.jp/