2006-08-13(Sun): 「金成マツノート」の翻訳打ち切り

朝日新聞に「アイヌの遺産「金成マツノート」の翻訳打ち切りへ」という記事。アイヌ民族叙事詩ユーカラ」をローマ字で表記した「金成マツノート」の翻訳に対する助成を文化庁が打ち切るという。

・「アイヌの遺産「金成マツノート」の翻訳打ち切りへ」(朝日新聞2006-08-12
http://www.asahi.com/culture/update/0812/011.html

記事を読む限り、北海道庁はあくまで文化庁の支援打ち切りを受け入れるだけで、独自の支援策を検討していくようだ(と、読みたい)。難しい話ではなく、せっかく30年近く続けてきた事業をいまさら取りやめるのは、単純にもったいなくないだろうか。
さて、記事によれば、補助の原資は文化庁民俗文化財調査費をあてている。さらに記事では次のような文化庁の見解が紹介されている。

文化庁は、「一つの事業がこれだけ続いてきたことは異例」であり、特定の地域だけ特別扱いはできないという。

だが、1979年5月1日に文化庁長官の裁定によって定められた民俗文化財調査費国庫補助要項には、特に期間についての定めはない。朝日新聞の取材を信じれば、文化庁は「一つの事業がこれだけ続いてきたことは異例」としているようだが、要項は国庫補助の長期利用を禁じていない。であれば、文化庁の見解は恣意的なものではないだろうか。「特定の地域だけ特別扱いはできない」という理由にしても、他の地域の文化とアイヌ民族の文化を同じ枠組みで語るべきだろうか。そもそもの出発点が間違っているのではないだろうか。

・「アイヌの遺産「金成マツノート」の翻訳打ち切りへ」(朝日新聞2006-08-12
http://www.asahi.com/culture/update/0812/011.html
民俗文化財調査費国庫補助要項
http://www.mext.go.jp/b_menu/hakusho/nc/t19790501019/t19790501019.html
・財団法人アイヌ無形文化伝承保存会
http://www17.ocn.ne.jp/~aynukor/
・『浅井タケ昔話全集I、II』(村崎恭子編訳)
http://www3.aa.tufs.ac.jp/~mmine/kiki_gen/murasaki/