2006-11-27(Mon): サイエンスアゴラ2006をふりかえって

さて、本日で終了したサイエンスアゴラ2006について、オーガナイザーとして参加した立場からコメントしておきたい。実際に参加された方々を中心に様々な批判もあるようだが、まずは初めての試みとして実施されたことを評価すべきだと思う。実際、ほうぼうのブログで厳しいコメントをみかけるが、そのような批判が生まれるきっかけになったという意味だけでも、サイエンスアゴラ2006という催しが開催された意味がある。批判の声を上げる方々には、この点は考えていただきたい。
誤解のないように、先に私とサイエンスコミュニケーションの関わりについて記しておこう。NPO法人サイエンス・コミュニケーションサイコムジャパン)には、その設立当初から会員として参加はしている。だが、この立場は正直にいって幽霊部員に近い。おそらくサイコムジャパンの活動を積極的に支えているメンバーの多くは、私の存在を知らないくらいだろう。もう一つ、ACADEMIC RESOURCE GUIDE(ARG)とは直接関係しない職業人としての業務において、いわゆるサイエンスカフェに出演したことが一回ある。サイエンスコミュニケーションへの私の関わりは、この2つに限られており、自分自身の実感としてはかなり距離がある。以上を前提とした上で、サイエンスアゴラ2006を通して感じたことを記しておこう。
すでに関係者の間でも指摘されているようだが、3日間のイベントを通して発信する側が比較的限られた人々に集中していたとは感じた。なんとも言い表しがたいのだが、要するにサイエンスコミュニケーションという比較的狭い世界の人脈で事が進んでいたように思う。懇親会の場で強く感じたことだが、ほとんどの方々は知り合い同士であり、逆に自分はやや浮いている存在であったように思う。別の言い方をすれば、顔見知り同士が集う学会の懇親会に近い雰囲気は確かにあった。この訳をサイエンスコミュニケーションに関わる人間がまだ少ないから、サイエンスアゴラという人々が一堂に会する場であったから、と説明はできるだろうが、サイエンスアゴラ2007があるのだとしたら、改善すべき点の一つだと思う。サイエンスコミュニケーションの中心にいる人々には、「サイエンス」よりも「コミュニケーション」の部分に力点を置き、幅広い関心を持って周囲を見渡してほしかった、というのが正直な感想だ。
そこでサイエンスアゴラ2007はあるのか、という問いにつながるのだが、私はぜひ来年も継続するよう願っている。大きな理由としては、自分自身の体験を踏まえても、このようなイベントは人と人との出会いの機会という意味があるからだ。この意味はけっして小さくない。また、自分自身のワークショップについては準備段階ですでに消化不良気味であり、反省点が多い。次の機会があるなら、そこに向けて一年がかりで準備していきたいとも思うからだ。科学技術振興機構JST)が主催するということで、税金を用いて行うイベントであるわけだが、1回限りで成果を問われるのは酷という気がする。よく科学者の方々がいわれるように、科学の多くは一朝一夕で結果が出るものではない。良い結果であれ、悪い結果であれ、結果が出るまでに相応の年月と費用を要するものだ。その気持ちをサイエンスコミュニケーションやサイエンスアゴラにもぜひ向けてほしいと思う。

NPO法人サイエンス・コミュニケーションサイコムジャパン)
http://www.scicom.jp/
サイエンスアゴラ2006
http://www.scienceagora.jp/