産業技術総合研究所、「Synthesiology(シンセシオロジー)−構成学」を創刊、全文を公開

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産業技術総合研究所が雑誌「Synthesiology(シンセシオロジー)−構成学」を創刊し、全文を公開した(2008-01-21)。

・「Synthesiology(シンセシオロジー)−構成学」
http://www.aist.go.jp/synthesiology/
産業技術総合研究所
http://www.aist.go.jp/

発刊の趣旨でこう述べている。

研究成果を社会に活かすために行うべきことを知として蓄積する、すなわち当為的知識を集積することを目的として、ここに新しい学術ジャーナルを発刊する。自然についての知の獲得というこれまでの科学に加えて、科学的知見や技術を統合して社会に有益なものを構成するための学問を確立することが、持続的発展可能な社会に科学技術が積極的に寄与するための車の両輪となろう。

・発刊の趣旨
http://www.aist.go.jp/synthesiology/intent.html

なお、査読プロセスや査読者氏名を公開し、場合によっては「査読者とのやり取り中で、論文の内容に関して重要な議論については、そのやり取りを掲載することにする。さらには、論文の本文には記載できなかった著者の考えなども、査読者とのやり取りを通して公開する」(編集方針・投稿規定・執筆要件と査読基準)としている。

・編集方針・投稿規定・執筆要件と査読基準
http://www.aist.go.jp/synthesiology/regulation.html

実際、創刊号に掲載されたすべての論文

  • 不凍蛋白質の大量精製と新たな応用開拓
  • 高齢者に配慮したアクセシブルデザイン技術の開発と標準化
  • 高機能光学素子の低コスト製造へのチャレンジ
  • 異なる種類のリスク比較を可能にする評価戦略
  • 個別適合メガネフレームの設計・販売支援技術
  • 耳式赤外線体温計の表示温度の信頼性向上

の末尾に「査読者との議論」が設けられ、論文の執筆者と査読者の間で交わされたやりとりが公開されている。

産学連携やサイエンスコミュニケーションの一環として、産業技術総合研究所自らが媒体を持つ試みといえるだろうか。雑誌自体の位置づけや査読の体制は、従来なかったものであり、まずは今後に期待したい。ただ、一点考えてしまうのは、この雑誌の発行形態である。全文がPDF形式で公開されているものの、紙媒体でも発行していくようだ。まだまだ、紙媒体が有効なケースもあるだろうが、新たな雑誌という位置づけを考えれば、全面的にウェブで発行するという位置づけでスタートしてもよかったのではないだろうか。