2008-05-10(Sat): 大阪府労働情報総合プラザ・大阪社会運動資料センターの存続を巡って(2)

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・「大阪府労働情報総合プラザ・大阪社会運動資料センターの存続を巡って(1)」(編集日誌、2008-04-26)
http://d.hatena.ne.jp/arg/20080428/1209310367

の続き。

自分としては極めて異例なことだが、私は

・大阪の社会・労働関係専門図書館の存続を求める会
http://rodoshomei.web.fc2.com/
http://rodoshomei.blog17.fc2.com/

の主張を支持し、大阪府労働情報総合プラザ・大阪社会運動資料センターの存続を望むことをここに明記しておきたい。

まず、大阪府労働情報総合プラザ・大阪社会運動資料センターという組織がどのような位置づけにあるかを確認しておこう。少しややこしいが、

・大阪社会運動協会
http://www2.ocn.ne.jp/~shaunkyo/
公益法人データベース - 財団法人大阪社会運動協会
http://www.koeki-data.soumu.go.jp/info.aspx?KeySeiri=225559

によれば、大阪社会運動協会は1978年に設立された公益法人。設立には労働組合労働福祉事業団体、研究者や弁護士が関わり、大阪府出資法人ではない。その大阪社会運動協会は、大阪社会運動資料センターを自ら運営するとともに、大阪府から委託を受けて大阪府労働情報総合プラザを運営している。

・大阪社会運動資料センター
http://www2.ocn.ne.jp/~shaunkyo/center.html
大阪府労働情報総合プラザ
http://www2.ocn.ne.jp/~shaunkyo/plaza.htm

これら2つの図書館は

大阪府立労働センター(エル・おおさか)
http://www.l-osaka.or.jp/

に同居して、いわば2つの図書館が有機的に運営されている。その様子は最近発表された

・谷合佳代子「二つの図書館の有機的運営−大阪社会運動資料センターと大阪府労働情報総合プラザの取り組み」(「びぶろす-Biblos」40、国立国会図書館総務部、2008-04)
http://www.ndl.go.jp/jp/publication/biblos/06.html

に詳しい。

さて、

大阪府が発表した

財政再建プログラム試案
http://www.pref.osaka.jp/zaisei/kaikaku-pt/shian/

では、

財政再建プログラム試案資料編 - 事務事業 - 商工労働部【PDF】
http://www.pref.osaka.jp/zaisei/kaikaku-pt/shian/06.pdf

の5頁で「労働情報総合プラザ事業費」が挙げられ、以下のように結論づけられている。

廃止(20年度)
事業効果を検証し、見直しを求めるもの

なお、労働情報総合プラザ事業費は大阪府一般財源から2008年度は約2000万円が充てられている(20,049,000円)。上記の箇所が根拠となり、大阪府労働情報総合プラザは廃止の方向が濃厚となっているようだ。伝え聞くこところでは、この方針の見直しがない限り、この7月末には大阪府労働情報総合プラザは廃止されてしまうという。

要するに、財政再建の一環として行われる経費節減の対象として、労働情報総合プラザ事業費が選ばれたということだ。だが、大阪府労働情報総合プラザはそもそも民間への委託事業として運営されており、委託先の大阪社会運動協会は大阪府の出資を受けていない独立した財団法人である。委託することで一定程度の経費節減がなされるからこそ、大阪府は事業の委託を行ってきたのではないのだろうか。そうであれば、いまここでいきなり事業そのものを廃止する必然性がみえてこない。また、運営側の2つの論考で語られているように、大阪府労働情報総合プラザの運営は、経費を抑えつつも最大限の効果を発揮するよう多大な努力をもって行われている。

・谷合佳代子「二つの図書館の有機的運営−大阪社会運動資料センターと大阪府労働情報総合プラザの取り組み」(「びぶろす-Biblos」40、国立国会図書館総務部、2008-04)
http://www.ndl.go.jp/jp/publication/biblos/06.html
・谷合佳代子「大阪府労働情報総合プラザにおける環境整備」(「専門図書館」227、2008-01)【PDF】
http://www2.ocn.ne.jp/~shaunkyo/227_25-30.pdf

このような経緯を顧みることなく性急に廃止を決定してしまえば、今後、府の事業を民間に委託しようとする際のリスクを生むだけではないだろうか。年度中に突如として事業が廃止されるというリスクを負ってまで、府の事業委託を担える民間組織がはたしてあるだろうか。あるとすれば、それは大阪府出資法人に限られるのが落ちだろう。こう考えてくると、大阪府労働情報総合プラザの性急な廃止決定は、年間2000万円の経費節減によるメリットよりも、財政再建を進める大阪府がこの先、事業の民間委託を進めていく上での阻害要因になるデメリットのほうが大きいのではないだろうか。

なお、蛇足だが、そもそも年度途中での委託の打ち切りは、大阪府と大阪社会運動協会の間の契約上、可能なのだろうか。両者の間の契約は1年契約とのことだが、年度中での一方的な契約解除について大阪府が違約金を支払うという条項はないのだろうか。もし、違約金の支払いが規定されていたら、2000万円をまるまる削減できるわけではなく、むしろ本来不要な新たな負担が生じしてしまうのではないだろうか。

さて最後に、今回私がなぜ

・大阪の社会・労働関係専門図書館の存続を求める会
http://rodoshomei.web.fc2.com/
http://rodoshomei.blog17.fc2.com/
の主張を支持し、大阪府労働情報総合プラザ・大阪社会運動資料センターの存続を望む

ことを明言することにしたのか、その理由を記しておきたい。

私はACADEMIC RESOURCE GUIDE(ARG)をメディアと位置づけていることもあり、制度や組織の改廃に関わる賛否を直接表現することは極力避けてきたつもりだ。特にACADEMIC RESOURCE GUIDE(ARG)の立場では署名活動に加わったことはない。だが、先に

・「大阪府労働情報総合プラザ・大阪社会運動資料センターの存続を巡って(1)」(編集日誌、2008-04-26)
http://d.hatena.ne.jp/arg/20080428/1209310367

で記したように、

大阪府労働情報総合プラザ・大阪社会運動資料センターはウェブ活用に熱心な数少ない専門図書館の一つである。その大阪府労働情報総合プラザ・大阪社会運動資料センターがなくなってしまうのだとしたら、ここ数年専門図書館の世界に対して一生懸命発信してきた成果の一つを失ってしまう。それは避けたい。

という思いがある。今回はこの思いが特に強い。大阪府労働情報総合プラザ・大阪社会運動資料センターがブログを公開してから約1年。

大阪府労働情報総合プラザ・大阪社会運動資料センター
http://shaunkyo.exblog.jp/
・「大阪社会運動協会、大阪府労働情報総合プラザ・大阪社会運動資料センターのブログを公開」(新着・新発見リソース、2007-02-08
http://d.hatena.ne.jp/arg/20070208/1170888303

この1年間の活動は、私自身が主張してきた専門図書館はウェブを積極的に活用すべきであるという提案に応えてくれるものでもあった。

・「ウェブで広がる図書館サービスの可能性−Web2.0時代に向けて」【PPT】(専門図書館協議会特別セミナー、2006-10-12、於・日本図書館協会会館)
http://www.ne.jp/asahi/coffee/house/doc/sentokyo(20061012).ppt
・「専門図書館協議会特別セミナー「ウェブで広がる図書館サービスの可能性 −Web2.0時代に向けて」」(編集日誌、2006-10-12
http://d.hatena.ne.jp/arg/20061016/1160931320
・「ウェブで広がる図書館サービスの可能性−Web2.0時代に向けて」【PPT】(専門図書館協議会関西地区協議会新春特別講演会、2007-01-26、於・大阪商工会議所
http://www.ne.jp/asahi/coffee/house/doc/sentokyo_kansai(20070126).ppt
・「専門図書館関西地区協議会で講演」(編集日誌、2007-01-26)
http://d.hatena.ne.jp/arg/20070127/1169858359

また、

・「うれしい言葉」(編集日誌、2007-12-05)
http://d.hatena.ne.jp/arg/20071210/1197214932

でこう述べている。

谷合佳代子氏(財団法人大阪社会運動協会)の「二つの図書館の有機的運営―大阪社会運動資料センターと大阪府労働情報総合プラザの取り組み―」は、指定管理者制度の下、文字通りワンパーソン・ライブラリーにあって、利用者の利便性を図りさまざまな取り組みを行なっている当事者による「奮闘記」。とにかくアグレッシブな姿勢と発想(=ひとりでもここまでできる!)には頭が下がる。このひともわたし同様、岡本真さん(ARG編集長)のアジテーションを真に受けた一人という。同志的親近感を覚えた。

・「全国図書館大会平成19年度(第93回)東京大会」(ライブラリー/アーカイブズ/ドキュメンテーション自習室、2007-11-30)
http://blog.livedoor.jp/hirodos_zioz/archives/50738142.html

そして、自分の言葉がどなたかの行動の源になっているのであれば本望だ。

自分の言葉が大阪社会運動資料センターや大阪府労働情報総合プラザの運営に携わる方々の行動になにがしかの影響を与えることができたのであれば、なおさらその行く末を見届けたいと思う。

そして、ただ座視せず、明確に廃止反対を訴えるのは、努力し、結果を出した者が報われないことには納得がいかないからだ。上に挙げた谷合さんの論考にあるように、大阪社会運動協会は大阪府の委託によって運営する大阪府労働情報総合プラザを活性化するために大小様々な努力を続けてきた。さらに谷合さんが

財団法人大阪社会運動協会(略称社運協)が大阪府の委託を受けて大阪府労働情報総合プラザ(以下、プラザ)の運営にあたるようになったのが2000年4月。以来、右肩上がりで利用者数が増え続けている。1999年度の来館者数は3515人であったが、2006年度には14051人、と4倍になっている。

・谷合佳代子「二つの図書館の有機的運営−大阪社会運動資料センターと大阪府労働情報総合プラザの取り組み」(「びぶろす-Biblos」40、国立国会図書館総務部、2008-04)
http://www.ndl.go.jp/jp/publication/biblos/06.html

と述べているように、数値で把握できる成果も挙げている。限られたリソースの中で試行錯誤し、大阪府にとっても望ましい成果を挙げつつある機関が廃止されようとしていることは、経済的に合理性や妥当性に欠けるのと同時に、正義や公正を欠くものだ。重ねて言おう。「努力し、結果を出した者が報われない」ようなことは、あってはいけないことなのだ。

以上、様々な思いと理由を書いたが、財政再建という大きな掛け声に唯々諾々と頷いてしまうのではなく、そこで挙げられた案の一つひとつを丁寧に見つめ直すよう自分自身心がけたいと思うし、読者の方々にもそのようにお願いしたい。