国立情報学研究所(NII)、博士論文ニーズ調査(利用面・発信面)アンケートの結果を公開(2008-10-20)

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国立情報学研究所(NII)が博士論文ニーズ調査(利用面・発信面)アンケートの結果を公開した(2008-10-20)。

・博士論文ニーズ調査(利用面・発信面)結果報告
http://www.nii.ac.jp/irp/archive/report/dissertation.html
・「博士論文ニーズ調査(利用面・発信面)の結果を公開しました」(学術機関リポジトリ構築連携支援事業、2008-10-20)
http://www.nii.ac.jp/irp/2008/10/post_5.html
・学術機関リポジトリ構築連携支援事業
http://www.nii.ac.jp/irp/
国立情報学研究所(NII)
http://www.nii.ac.jp/

このアンケートは2008年5月26日(月)から6月20日(金)の間に行われ、1273件の有効回答を得ている。アンケートの内容は以下の通り。

  1. 職業を選んでください。
  2. 国内博士論文をどのくらい検索することがありますか?
  3. 国内博士論文の検索にご利用の方法を教えてください。
  4. 国内博士論文の検索、本文入手の目的について教えてください。
  5. 国内博士論文の本文が必要な場合、どのような手段で入手しますか?
  6. 国内博士論文の検索、本文入手でお困りのことはありますか?
  7. 博士論文の利便性向上に必要と思われることは何ですか?
  8. ご自分が書いた博士論文を、他の人に読まれたいと思いますか?
  9. ご自分が書いた博士論文を、他の人から読みたいと言われたらどうしますか?
  10. 国内博士論文の検索・利用・本文の電子的発信・入手等についてご意見をお聞かせください。

興味深いところでは、「国内博士論文の検索にご利用の方法を教えてください。(いくつでも)」に対して、1位が「NDL-OPAC」(552件/20.6%)、2位が「Google検索から」(494件/18.4%)と、3位の「NII-DBR」(467件/17.4%)を上回っていることや、「博士論文の利便性向上に必要と思われることは何ですか?(いくつでも)」に対して、「博士論文の本文の電子化・公開」(945件/34.2%)、「博士論文を網羅的に検索できるデータベース」(938件/33.9%)と答えていることだろうか。

また、「ご自分が書いた博士論文を、他の人に読まれたいと思いますか?」という質問に対して、

  • 同じ分野の研究者に読まれることを「望む」:972件/82.8%
  • 他の分野の研究者に読まれることを「望む」:880件/75.0%
  • 大学院生に読まれることを「望む」:961件/82.0%
  • 学生に読まれることを「望む」:901件/76.8%
  • 企業の研究者に読まれることを「望む」:872件/74.5%
  • 一般の人に読まれることを「望む」:752件/64.2%

に留まることに驚かされる。博士論文は、学位規則(文部省令第9号、1953-04-01)において、

博士の学位を授与された者は、当該学位を授与された日から一年以内に、その論文を印刷公表するものとする。ただし、当該学位を授与される前に既に印刷公表したときは、この限りでない。

と公表・公開が義務づけられており、また、「博士の学位授与に関する報告等について(文大大第150号文部省大学局長から大学院の博士課程を置く各国公私立大学長あて通知)」(1975-03-18)において、国立国会図書館への寄贈が定められている。

つまり、博士論文は公開が前提とされている論文である。今回の調査結果はあくまで意向の調査であるとはいえ、自身の博士論文を読まれたくないと考える研究者が決して少なくないことは残念というほかない。博士号という学位によって社会的な地位を主張したり、実際に獲得することを思えば、その地位の説明責任として博士論文の公開が求められることは当然だろう。

ところで、今回の調査結果ではふれられていないが、たとえば「博士論文の利便性向上に必要と思われることは何ですか?」という質問に対して、「博士論文の本文の電子化・公開」と答えている回答者が、「ご自分が書いた博士論文を、他の人に読まれたいと思いますか?」という質問にどう答えているのだろうか。このようなクロスした観点でみた調査結果の公開も期待したい。

なお、博士論文のインターネットでの公開については、

・「博士論文のインターネット上での公開に関するアンケート調査報告書」(北海道大学附属図書館、2007-01-31
http://eprints.lib.hokudai.ac.jp/dspace/handle/2115/18639

が、電子化については、

・「国立国会図書館大学図書館との連絡会「学位論文電子化の諸問題にかんするワーキング・グループ」中間報告」(2008-03-27)【PDF】
http://www.jaspul.org/event/08gakuiwg.pdf

がそれぞれ発表されている。

・「国立情報学研究所(NII)、博士論文のニーズ調査(利用面・発信面)アンケートを開始(2008-05-26)」(新着・新発見リソース、2008-06-17)
http://d.hatena.ne.jp/arg/20080617/1213628737