日経BPコンサルティング、「全国大学サイト・ユーザビリティ調査2008/2009」を発表(2008-12-04)

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日経BPコンサルティングが「全国大学サイト・ユーザビリティ調査2008/2009」を発表した(2008-12-04)。

・全国大学サイト・ユーザビリティ調査2008/2009
http://www.nikkeibpm.co.jp/bz/chosa/uschosa/
・全国大学サイト・ユーザビリティ調査2008/2009の概要
http://consult.nikkeibp.co.jp/consult/sales/uni/2008/
・「日経BPコンサルティング調べ「全国大学サイト・ユーザビリティ調査2008/2009」より 大学サイトの「使い勝手」を横断的に評価 ベスト3は前回と同じ顔ぶれ。公立大学全体の総合スコアが二ケタの伸び」(日経BPコンサルティング2008-12-04
http://consult.nikkeibp.co.jp/consult/release/uni081204.html
日経BPコンサルティング
http://consult.nikkeibp.co.jp/consult/

調査期間は2008年9月9日から2008年11月4日。調査対象となった大学は、

ただし、医科大学、歯科大学、薬科大学、医科歯科大学、獣医大学、畜産大学、看護大学、保健大学、芸術大学、体育大学、その他の単科大学は対象から外されている。なお、全200校は、

・調査対象大学一覧(50音順)【PDF】
http://consult.nikkeibp.co.jp/consult/sales/uni/2008/list.pdf

として公開されている。

評価項目は以下の通り。

  1. トップページ・ユーザビリティ
    • トップページの使い勝手を評価する
  2. サイト・ユーザビリティ
    • サイト全体が使いやすい構造になっているかどうかを評価する
  3. メインコンテンツへのアクセス
    • 受験生を中心にした大学サイトのターゲットの関心が高いコンテンツにつき、トップページから探しやすいかどうかを評価する
  4. アクセシビリティ
    • 視覚障害者を中心に誰にでもサイトが使いやすいかどうかを評価する
  5. インタラクティブ
    • 大学への訪問がしやすいか、大学への問い合わせがしやすいかどうかを評価する
  6. プライバシーポリシー
    • サイト利用者が提供する個人情報について、サイト運営者(大学)の保護方針を評価する

さて、注目の結果だが、ベスト10は、

となっている。ちなみに、過去4回の順位は以下の通り。

今回のベスト10大学のサイトを以下に挙げておこう。

  1. 徳島大学
  2. 明治学院大学
  3. 沖縄国際大学
  4. 富山大学
  5. 福岡工業大学
  6. 静岡県立大学
  7. 立正大学
  8. 武蔵大学
  9. 明海大学
  10. 一橋大学

この種のランキングについては、これまで、

・「ゴメス・コンサルティング、「2007年8月大学サイトランキング」を発表」(新着・新発見リソース、2007-09-09)
http://d.hatena.ne.jp/arg/20070909/1189268499
・「愛媛大学広報シンポジウムで講演とディスカッション」(編集日誌、2007-12-06)
http://d.hatena.ne.jp/arg/20071210/1197214983
・「日経BPコンサルティング、「全国大学サイト・ユーザビリティ調査2007/2008」を発表」(新着・新発見リソース、2008-01-17
http://d.hatena.ne.jp/arg/20080117/1200498560

で、その限界を指摘しているので、ここでの詳しい論評は控えたいが、少しだけ述べておこう。

この種のランキングは大学という多面的な組織の一部しかとらえていないことに注意したい。既存のランキングは、基本的には大部分の大学の目下最大の関心事である受験生獲得を意識してつくられている。当然、学術的な研究や社会への貢献という側面はあまり顧みられていない。

また、「ユーザビリティ(使いやすさ)」もあくまである一つの観点からの評価に過ぎないことも意識しておきたい。「ユーザビリティ(使いやすさ)」という言葉はしばしば用いられるが、その意味合いは非常に多義的であり、変化に富む。たとえば、今回のランキング発表を受けてランクインした各大学の対応をみてみよう。

徳島大学(1位)「本学ウェブサイトが「全国大学サイト・ユーザビリティ調査2008/2009」において、昨年に続き国公私立大学中1位になりました。」(2008-12-05)
http://www.tokushima-u.ac.jp/article/0013409.html
明治学院大学(2位)「「全国大学サイト・ユーザビリティ調査2008/2009」で私立大学1位を連続受賞」(2008-12-10)
http://www.meijigakuin.ac.jp/news/archive/2008-12-10.html
沖縄国際大学(3位)「全国大学サイトユーザビリティ調査2008/2009」で総合スコア第3位(2年連続)!!」(2008-12-04
http://www.okiu.ac.jp/topics/detail.jsp?id=67
富山大学(4位)「富山大学ウェブサイトが『全国大学サイト・ユーザビリティ調査2008/2009』において、国公立大学中第2位の評価を受けました」(2008-12-11
http://www.u-toyama.ac.jp/jp/news/081211/
立正大学(7位)「日経BPコンサルティング「全国大学サイト・ユーザビリティ調査」にて私立大学4位になりました」(2008-12-04
http://www.ris.ac.jp/news/contents_info.php?contents_id=282
武蔵大学(8位)「武蔵大学最新ニュース : 「全国大学サイト・ユーザビリティ調査2008/2009」で第8位!」(2008-12-04
http://www.musashi.ac.jp/modules/musashi_news/index.php?page=article&storyid=125
トップ10校のうち6校が、「全国大学サイト・ユーザビリティ調査2008/2009」についての記事を公開している。だが、調査結果が発表された20008年12月4日に即座に記事を公開しているのは、1位の徳島大学や2位の明治学院大学ではなく、3位の沖縄国際大学や7位の立正大学、8位の武蔵大学だ。速報性や迅速性も「ユーザビリティ(使いやすさ)」の一環であると思うと、このランキングが決して万能なものではないと思えはしないだろうか。
そして、「ユーザビリティ(使いやすさ)」をもう少し幅広くとらえてみるとどのような景色が見えてくるだろうか。たとえば、今回ランキング1位の徳島大学や2位の明治学院大学のサイトには、次のような記述が見受けられる

このウェブサイトへのリンクは、営利を目的としない場合に限り自由です。ただし、徳島大学に不利益を及ぼす恐れのある内容を含むサイトからのリンクは固くお断りします。

徳島大学 - リンクについて
http://www.tokushima-u.ac.jp/article/0011196.html

明治学院大学公式ホームページへのリンクは、営利を目的としない場合に限り、自由に行っていただいて結構です。リンクを張られた場合は、広報室広報課まで、その旨ご連絡ください。

明治学院大学 - リンクについて
http://www.meijigakuin.ac.jp/general/about.html

徳島大学のリンク規定は「自由」を謳いながら、「徳島大学に不利益を及ぼす恐れのある内容を含むサイトからのリンクは固くお断りします」という制約を設けている。明治学院大学はリンクに際しての報告を義務づけるかのような文面になっている。いずれもインターネット、特にWWWの本質であるリンクの機能に制約を設けるものだ。リンクする側にとっては面倒極まりない規定であり、利用者によっては圧迫を感じる言辞だろう。気軽にリンクの1つも張れないサイトが果たして「ユーザビリティ(使いやすさ)」が高いと言えるだろうか。

一つの目安として、この種のランキングが受け入れられるのはやむを得ない。むしろ、その必要性もあるだろう。だが、ランキングだけを金科玉条のごとくにしないという理性と良識も求められるだろう。