2009-06-04(Thu): 英国旅行7日目−St Pancras Library / British Library
昨日は図書館訪問はなく、最終日の今日、まとめて2館を訪問。基本的にはBritish Libraryに行く予定だったのだが、9:30の開館時間まで若干余裕があったので、British Libraryの前にあるSt Pancras Libraryをのぞいてみた。
・St Pancras Library
http://www.camden.gov.uk/ccm/navigation/leisure/libraries-and-online-learning-centres/st-pancras-library/
とはいえ、こちらの開館時間は10:00。見ることができたのは、あくまで入口付近のみだが、最近気になっている図書館による観光支援の可能性を考える上での具体例を目にすることができた。
・「第17回京都図書館大会で「いま図書館に求められる新たなウェブ活用戦略」と題して講演」(編集日誌、2008-09-03)
http://d.hatena.ne.jp/arg/20080908/1220885898
・「図書館による観光支援の可能性と実施例」(編集日誌、2008-10-10)
http://d.hatena.ne.jp/arg/20081011/1223715473
・「図書館による観光支援の可能性と実施例(2)」(編集日誌、2008-12-23)
http://d.hatena.ne.jp/arg/20081227/1230348108
・「図書館による観光支援の可能性と実施例(3)−奈良県立図書情報館による観光支援」(編集日誌、2009-01-19)
http://d.hatena.ne.jp/arg/20090123/1232665312
・「「図書館が欲しい場所」を考える」(編集日誌、2009-03-10)
http://d.hatena.ne.jp/arg/20090317/1237221461
・「県立図書館間の観光支援」(編集日誌、2009-05-11)
http://d.hatena.ne.jp/arg/20090518/1242584042
・「仙台にライブラリーホテルを発見」(編集日誌、2009-05-17)
http://d.hatena.ne.jp/arg/20090518/1242584290
写真の左手に「The Travel Information」とあるのがわかるだろうか。この建物は行政サービスの窓口と図書館が一体になっており、入口を入って右手にインターネット接続コーナー、左手に「The Travel Information」、その奥に行政窓口、さらにその奥に図書館が配置されている。残念ながら内部の写真撮影許可をもらえなかったのだが、「i」というマークを冠した観光案内所が普及しているイギリスの場合、このマークをみて観光客が足を運んでくる可能性が高い。基本的な観光ガイドを「The Travel Information」で行いつつ、必要があれば図書館に誘導できるなら、すばらしい導線となるだろう。
さて、その後は、道路を一つ渡って、
・British Library
http://www.bl.uk/
へ。
壁に掲げられたバナーの言葉に、British Libraryに来たことを実感する。ちなみにBritish Library訪問は2006年1月以来、約3年ぶり。
・2006-01-20の編集日誌
http://d.hatena.ne.jp/arg/20060409/1144509408
今回は前回入れなかった
・Reading Room
http://www.bl.uk/reshelp/inrrooms/stp/stpancrasrr.html
の見学を手配してあるのでBritish Libraryに近くづくほどに期待が高まってくる。
門の手前は右手に再度バナーが掲げられ、また左手には来館者向けの電子掲示板がある。バナーには、
Step inseide -
knowledge freely available.
と、
電子掲示板には、
Welcome to the British Library
What can you do here?
と代わる代わるメッセージが映し出されている。そして、建築物としても名高いBritish Libraryらしいのがゲートのデザイン。
よくみると、
BRITISH
LIBRARY
BRITISH
LIBRARY
BRITISH
LIBRARY
BRITISH
LIBRARY
BRITISH
LIBRARY
BRITISH
という模様になっているのがわかる。
館内に入ると、
正面に受付があり、
右手にはフレンズ制等の支援受付コーナーが、左手にはライブラリーショップがある。
待ち合わせ時間まで多少余裕があったので、先に少しだけ館内を見て回る。まず目を引いたのが、
「New Ways of Reading」と題して電子書籍リーダーを展示しているコーナーだ。
展示されているのは、イギリス国内ですでに販売されている
・iRex - iLiad
http://www.irextechnologies.com/products/iliad
http://www.est.co.jp/iliad/
・iRex - Digital Reader series
http://www.irextechnologies.com/irexdr1000
・Sony - Reader Digital Book
http://www.sony.co.jp/Fun/design/activity/product/prs-505_01.html
の3機種。なお、AmazonのKindleはまだイギリス国内では販売されていない。
各端末は実際に手にとって操作でき、利用者からのフィードバックを受け付けている。
もう少し時間があったので、ビートルズの直筆歌詞やマグナカルタといった貴重資料を収めているThe Sir John Ritblat Galleryも見学。資料を所蔵するだけではなく、見せるということが徹底して行われている。写真撮影不可なため内部の様子を紹介できないが、資料保存のために明かりを落とした展示室はそれだけ特別感を醸し出している。
さて、10時になったところで、日本研究部長のHamish Toddさんに連絡し、迎えに来ていただく。Toddさんとは、3月にシカゴで開催されたThe annual meeting of the Committee on Japanese Materialsで知り合い、今回の訪問にあたって見学を受け入れてくださった。
・「The annual meeting of the Committee on Japanese Materialsで講演」(編集日誌、2009-03-26)
http://d.hatena.ne.jp/arg/20090327/1238161317
カウンターでビジター用の名札を受け取り、まずは館員用のスペースへ。
最初はToddさんのデスク近辺であらためて挨拶し、British Libraryにおける日本語資料の歴史や現状をうかがった。
そして、いよいよ念願のReading Roomである。ちなみに前回来たときは、Reading Roomに入れなかったのだが、その訳は入室資格の厳しさにある。
・Registering for a Reader Pass
http://www.bl.uk/reshelp/inrrooms/stp/register/stpregister.html
に詳しく書かれているが、British Libraryの場合、Reading Roomの利用者になるには、相応の資格と手続きが必要になる。前回の私と同様、ふらりと訪れても入室できないので、この日誌を参考にして訪問を計画される方はご注意を。
さて、見学させていただいたのは、
・Asian & African Studies Reading Room
http://www.bl.uk/reshelp/inrrooms/stp/rrbysubj/aasrr/aasrr.html
・Humanities Reading Rooms
http://www.bl.uk/reshelp/inrrooms/stp/rrbysubj/humrr/humrr.html
・Rare Books & Music Reading Room
http://www.bl.uk/reshelp/inrrooms/stp/rrbysubj/rbmusicrr/rarebksmusic.html
の3室。
残念ながら、Room内部の写真撮影はできないので、サイトを見てほしい。どの部屋も興味深かったが、特に印象的だったのは、Asian & African Studies Reading RoomにあるIndia Office Recordsだ。India Officeは1858年から1947年まで置かれたインド省のこと。当時インドに住んでいたイギリス人に関わる資料が膨大に収められており、現在は先祖の来歴を調査するために使われることが多いという。
ちなみに、ライブラリアン用のスペースやReading Roomには、当時のインド省から持ち帰られた調度類が飾られている。
また、各部屋に共通する機能だが、Reading Roomの各キャレルには自分が書庫からの取り出しを依頼した資料が出庫されると、点灯して知らせてくれる一種のアラーム装置がついている。日本の国立国会図書館の場合、各所に設置された電子掲示板に番号が表示される仕組みだが、これはBritish Libraryの仕組みがうらやましい。
Reading Roomに続き、
・Business & Intellectual Property Centre
http://www.bl.uk/reshelp/inrrooms/stp/rrbysubj/busiprr/busiprr.html
も見学したのだが、こちらも興味深かった。。日本でいうところのビジネス支援機能に特化したセンターだが、写真とともに紹介したい。顕著な特徴は、
- 利用者間のコミュニケーションの促進
- 先行する利用者による成功事例の紹介
の2点。
飲食可能なテーブルが置かれており、実際に利用者同士がディスカッションに夢中になっていたり、利用者同士で自らのスキルをアピールしあう掲示板が設けられている。
すでにこのセンターを活用して一定の成功を収めている利用者たちによるメッセージや開発した商品が展示されている。Toddさんにうかがったところでは、たとえば、Business & Intellectual Property CentreからToddさんのほうに廻されてきた利用者に、アジアの古い文様を紹介し、それが実際の商品開発につながったケースもあるという。すばらしい。
Reading Room等の見学を終えて、
次はパブリックスペースにあるThe King's Libraryへ。
アメリカの植民地領を失った時代の王であるJohn the Lacklandが収集した図書をまとめられている。その壮大さは感動的。一見したところ、装飾のように見えるが、必要がある際は収められている書籍を取り出すこともできるという。
ここでToddさんと別れて、後は引き続き自由見学。
British Libraryの土台となる蔵書群の寄贈者たちの彫像や、テーマ展示、本にまつわる調度類の展示を見てから、楽しみにしていたレストランへ。
カフェテリア方式なうえ、
味も量も大満足。
館内に面したテーブルや屋内の席もあるが、ここはやはりテラス席へ。
ちなみに味に定評があるのは、
・PEYTON AND BYRNE
http://www.peytonandbyrne.com/
が出店しているため。食の大切さは言うに及ばないことであって、この点は、国立国会図書館をはじめとする日本の図書館にはもっと頑張ってほしいところだ。
最後に、ショップでつい勢いで買ってしまったBritish Library仕様のテディベアをBritish Libraryを背景に記念撮影して訪問終了。ショップで購入したお土産の数々の話は「つづく」ということで。
ご多忙にも関わらず、当方の訪問にご配慮くださった館長のLynne Brindleyさん、そしてご対応くださったHamish Toddさんに心から感謝したい。