2009-07-25(Sat): 情報処理学会 第83回人文科学とコンピュータ研究会発表会に参加、帝塚山大学東生駒キャンパス図書館を見学

今年度から、

情報処理学会 人文科学とコンピュータ研究会
http://jinmoncom.jp/

の運営委員になった関係で、

2009-07-25(Sat)〜2009-07-26(Sun):
情報処理学会 第83回人文科学とコンピュータ研究会発表会
(於・奈良県帝塚山大学 東生駒キャンパス)
http://jinmoncom.jp/

に午後から参加。場所は奈良県帝塚山大学東生駒キャンパス。考えてみれば、この1年で奈良は3回目だ。

さて、研究会初日はセッション2(時空間分析システム)とセッション3(古地図の蓄積・分析)を聴講。研究発表は以下の通り。適宜関連するサイトへのリンクを補っておこう。

もっとも感動したのが、平井松午さんの発表。

screenshot screenshot

上にあげた

徳島大学附属図書館所蔵貴重資料高精細デジタルアーカイブ
http://www.lib.tokushima-u.ac.jp/~archive/
徳島大学附属図書館所蔵蜂須賀家家臣団家譜史料データベース
http://www.lib.tokushima-u.ac.jp/dbhachi/hachi.html

を活用して研究に取り組まれていることがよくわかる内容だった。その前のセッションで歴史系のデータベースは研究用途のものと、教育・一般用途のものとにわかれるのかどうか、という議論があったのだが、その議論への間接的ながら明瞭な回答になっていたと思う。

ちなみに、

徳島大学附属図書館所蔵貴重資料高精細デジタルアーカイブ
http://www.lib.tokushima-u.ac.jp/~archive/

のトップページ右下に「関連論文」というリンクがあり、ここをクリックすると、

徳島大学所蔵の古絵図・古地図に関連する論文
http://www.lib.tokushima-u.ac.jp/~archive/ronbun/ronbun.html

に移動する。発表者の平井さんの論文も掲載されており、徳島大学附属図書館が図書館に関わる研究成果を大切にしていることがうかがえる。これはみならいたい点。大学図書館は様々な学術資源を構築・公開しているわけだが、それに関わる研究成果、そしてそこから出てきた研究成果を学術資源と結びつけてまとめていくことが必要だろう。

・「徳島大学附属図書館、蜂須賀家家臣団家譜史料データベースを公開(2007-12-01)」(新着・新発見リソース、2007-12-16)
http://d.hatena.ne.jp/arg/20071216/1197812497

さて、人文科学とコンピュータ研究会の研究発表会には以前も参加しており、その時の印象をやや手厳しく日誌に書いたことがある。

・「研究会文化の違い−情報処理学会 人文科学とコンピュータ研究会第78回研究発表会に部分的に参加して」(編集日誌、2008-05-24)
http://d.hatena.ne.jp/arg/20080525/1211727053

別に私の指摘を受けてというわけではないだろうが、今回はコメンテーターを設ける形式での運営だった。セッションごとにまず発表者が発表し、その後、コメンテーターがまとめてコメントし、以降はパネルディスカッション風に進むという流れだった。セッションごとにテーマがあるとはいえ、最初はうまくいくのか案じたが、結果としては非常にいい進行になっていたと思う。これは座長やコメンテーター、そして論点をある程度集約しようと務めた発表者の努力によるところが大きいが、そのおかげで聴衆にとっても非常に収穫の多い研究集会だった。

さて、セッション間の休憩時間に、帝塚山大学東生駒キャンパス図書館を見学してきた。

帝塚山大学図書館
http://opac.tezukayama-u.ac.jp/lib/

残念ながら館内の写真を撮れなかったので、実際の風景は、

帝塚山大学東生駒キャンパス図書館 施設案内
http://opac.tezukayama-u.ac.jp/lib/hfloor_tbl.html

を参考にしてほしい。

感心した点がいくつかあった。

まずは、地球儀の話から。2階の閲覧室のレファレンスコーナーには地球儀が2つ置かれていた。それも小さなものではない。直径50センチ以上はあろうかという大きなものだ。確かに地球儀は決して飾りではなく、重要なレファレンス資料であることに気づかされた。

2つ目は、4階にある長沢文庫。この文庫は元教員の故・長沢信寿さんの旧蔵書とのこと。調べてみると長沢さんは、西洋古代哲学や宗教等、幅広い研究に取り組まれた方だったようだ。さて、文庫だが、一般の書架の中に、そこだけガラス張りの本棚が並べられ、そこに収められている。この種のコレクションは保存・管理の観点から、別の部屋に置くことも多いが、こうやって利用者の目にふれやすいところに置くのも一つの見識。

最後は、2階の新着図書コーナーにあった「借り出し可」という表記だ。講演や講義の際にふれることがあるが、図書館の不思議用語の一つに「貸出」がある。利用者ではなく、図書館やライブラリアンを主語にしたいささか古めかしい表現。図書館やライブラリアンの潜在的な意識を変えていくためにも「貸出」ではなく「借出」という表現がふさわしいと思っているのだが、よい実例がみつかった。ちなみに完全に統一はされていないものの

帝塚山大学図書館
http://opac.tezukayama-u.ac.jp/lib/

でも「借出」という表現が多々見られる。帝塚山大学図書館ではある程度意識して、「借出」という表現を用いているのだろう。実際のところを、ぜひ帝塚山大学図書館のライブラリアンの方にうかがってみたいものだ。