明治学院大学図書館、『和英語林集成』デジタルアーカイブスを公開

明治学院大学図書館が『和英語林集成デジタルアーカイブスを公開した(2006-03-14)。同大学の創設者でもあるJ.C.ヘボン(James Curtis Hepburn、1815年〜1911年)が編んだ日本最初の和英辞典『和英語林集成』の全版と偽版を電子化している。偽版を含め、全ての版(初版、二版、三版、ロンドン版、ニューヨーク版、上海版、縮約丸善版、日盛堂偽版、東洋堂偽版)を所蔵しているのは同図書館しかなく、『和英語林集成デジタルアーカイブスの登場によって、これら諸版の比較研究が可能となった。
また、辞書以外に関連辞書年表、主要辞書目録、各版のローマ字対照表といった参考資料や解説記事も公開されており、『和英語林集成』をあらゆる角度から扱っている。
なお、言語学の知識が要求される高度な資料と思われるかもしれないが、辞書はいわゆるヘボン式のローマ字で記述されており、単に明治期の日本語がどのように英語で理解されていたのか、楽しみながら読むこともできる。まずは気軽にページをくってみてほしい。
さて、デジタルアーカイブとしてみた場合、二点多いに感心させられる。一つは、年表や目録からは同図書館のOPAC(蔵書検索)の検索結果にリンクしていることである。すばらしいデジタルアーカイブは多数あるが、しばしば既存の機能との連携を欠いている。それに対し、『和英語林集成デジタルアーカイブスは年表や目録からOPACへの移動が可能となっており、『和英語林集成デジタルアーカイブスをみて図書の借り出しへとつながる利用者の行動をきちんととらえている。図書館が有する資料を個別に独立した存在としてみるのではなく、相互に関連性のあるものとしてとらえた結果だろう。設計者の見識を讃えたい。
ただし、一つ要望すれば、逆の流れ、つまりOPAC(蔵書検索)から『和英語林集成デジタルアーカイブスへと移動するリンクも設けてほしい。たとえば、OPACで「和英語林集成」と検索すると、まさに今回デジタル化された「A Japanese and English dictionary, with an English and Japanese index」がみつかる。しかし、書誌情報には、「配置場所 7F貴重資料室」と記されているだけである。ここに『和英語林集成デジタルアーカイブスへのリンクを設ければ、利用者は貴重資料室の資料の貸し出しを申請する(そして、おそらく図書館員に『和英語林集成デジタルアーカイブスの利用を勧められる)手間なく、求める資料にたどりつける。
さて、感心させられたもう一つは、「デジタルアーカイブスの目的」と題したページに「『和英語林集成デジタルアーカイブス制作奥付」が設けられていることである。総合監修、指揮・制作、年表・目録制作、資料制作協力、アーカイブ画像撮影、Web・データベース制作、写真という項目ごとに、『和英語林集成デジタルアーカイブスの制作に寄与した個人と企業の名前が明記されている。特に実務面で多大な労力を払ったであろう図書館員一人ひとりの氏名が記されていることは特筆に価する。最近はこのようなスタッフロールを入れるサイトが増えてきているように感じるが、まだ実務担当者にきちんと光があてられているケースは少ない。その意味で指揮・制作にあたった同図書館の松岡良樹さんをはじめ、スタッフの氏名が記され、顕彰されていることはすばらしい。
なお、初版公開日が2006年2月28日と、明記されている点も評価したいが、『和英語林集成デジタルアーカイブスのトップページでは公開日が2006年3月22日、図書館トップページでは公開日が2006年3月14日と記述されており、日付が一定していないことが惜しまれる。いつを公開日とするか、その判断はわかれるところだろうが、外部からのアクセス制限を解除し、インターネットに接続した時点なりを正式な公開日として一つに定めてほしい。
なお、同図書館では、引き続き「幕末・明治期辞書コレクション」の公開に向けた作業を進めているという。それに際し、江戸時代から明治時代の辞書や古い外国語学習書の収集にあたっており、辞書の寄贈を求めている。心当たりがある方には、ぜひ協力してほしい。「幕末・明治期辞書コレクション」は2006年11月中旬の公開を予定しているという。

・『和英語林集成デジタルアーカイブ
http://www.meijigakuin.ac.jp/mgda/
デジタルアーカイブスの目的
http://www.meijigakuin.ac.jp/mgda/content_mokuteki.html
・辞書寄贈のお願い
http://www.meijigakuin.ac.jp/mgda/content_jishokizo.html
明治学院大学図書館
http://www.meijigakuin.ac.jp/tosho/