2006-06-28(Wed): 文化の存在感 −故宮博物院@台北中正国際空港

書き忘れていたが、先日台湾を訪れた際に印象的なことがあった。台湾の海外への玄関口である中正国際空港の出国・出発エリアに故宮博物院が出展・出店していたことだ。出国審査後のエリアに故宮博物院ミュージアムショップがあり、その脇にはショップの倍くらいの敷地に故宮博物院の収蔵物のレプリカが展示されていた。ミュージアムショップの存在は事前に知っていたのだが、レプリカ展示はショップを訪れて初めて知ったことだ。台湾滞在中、故宮博物院はあいにく工事中で展示内容が限られていると聞いていたので、見学をあきらめていた。せめてもと思ってミュージアムショップに赴いたのだが、レプリカの展示は思いがけないプレゼントのような驚きとうれしさがあった。
よくよく考えてみると、この出展は実によい試みではないだろうか。自分のように故宮博物院を訪れなかった旅行者には新鮮な感動を与え、故宮博物院を訪れた旅行者には再び感動を呼び覚ます。いずれにせよ台湾に伝わる文化と、その文化の担い手である故宮博物院の存在をよく伝えているわけだ。
さて、同じことを日本でもできないだろうか。国立博物館国立科学博物館国立国会図書館国立公文書館は貴重な資料を数多く所蔵している。その一部でも、あるいはでも、成田空港に展示スペースを設けて紹介してはどうだろうか。もちろん、国際空港に限ることはない。国内線の空港でも、その地の博物館や科学館、図書館や資料館が出展すれば、存在感を発揮できるはずだ。
ちなみに中正国際空港やサンフランシスコ国際空港には、航空博物館が併設されている。空港にあればこそ、利用者の関心を引くことができる。潜在的な利用者にみつけてもらい、訪れてもらうために、立地を含めて「関連性」を考慮しているのだろう。賢い。
日本の成田空港はつい先日第一ターミナルがオープンしたが、台北やサンフランシスコのような取り組みは行われていないようだ。空港に文化施設が進出する良い機会であっただけに残念。日本のミュージアム関係者や図書館関係者の間では、このような可能性は検討されているのだろうか。検討はしているが実現が難しいのだろうか。それともすでに実現しているところがあるのだろうか。事情をご存知の方、ぜひ教えてほしい。

・中正国際空港(中正国際機場)
http://www.cksairport.gov.tw/
故宮博物院
http://www.npm.gov.tw/
サンフランシスコ国際空港
http://www.sf-japan.or.jp/