平和祈念事業特別基金、戦後強制抑留史を公開

平和祈念事業特別基金が『戦後強制抑留史』を電子化して公開した(公開日不明)。『戦後強制抑留史』は1997年4月に編集が始められたもので、全8巻構成で昨年刊行されている。なお、総務省独立行政法人評価委員会の議事録によれば、同基金では

「戦後強制抑留史」を始めとして、ロシア連邦公的機関等から収集した資料など4,500件を超えるデータ登録を実施する。
総務省独立行政法人評価委員会(第9回)議事録(2005-09-24)

IT社会に備えましてデータベース化を行うということで、先ほどの戦後強制抑留史、あるいはこれから御説明をします「平和の礎」等の、これまで蓄積しました記録につきましては、中期目標の期間中に、2万点以上を電子データ化をするという目標をここで立てさせていただいております。
総務省独立行政法人評価委員会(第9回)議事録(2005-09-24)

という計画を持っているようだ。なお、谷博之参議院議員民主党)の「シベリア抑留及び旧ソ連邦による漁船だ捕・抑留に関する質問主意書」によると、『戦後強制抑留史』の編纂には約4000万円を要したという。ただし、この4000万円に電子化費用が含まれているかはわからない。
ところで、電子化された『戦後強制抑留史』には2点疑問がある。1つはこの資料の正誤表が公開され、

なお、別紙の正誤表を参照、確認の上、ご利用下さい。

と注記されていることである。せっかく電子化してインターネットで公開するのであれば、あらかじめ誤り部分を修正してしまえばよいのではないだろうか。正誤表付きで公開している事情も推測できる気もするが、その是非は別として『戦後強制抑留史』が正確な事実の把握と普及を目的として編纂されたのであれば、インターネット版では正確を期すべきではないだろうか。
もう一点は一貫して私がこだわってきていることだが、

なお、このHPにリンクをはる場合には、基金までお問合せ・ご確認をいただきたいと存じます。

という記述についてである。リンクを張るということは、肯定であれ、否定であれ、そのサイトを紹介するという行為である。なぜ、このような一文を入れて、みすみす紹介される機会を逸するようなことをしてしまうのだろうか。もちろん、リンクに条件をつけたり、禁止する法的な根拠がないことはいうまでもない。
今年もまた夏となり、テレビや新聞にはアジア・太平洋戦争を回顧する企画が増えている。ここはインターネットが出遅れている分野だろう。正確にいえば、意見表明や論評は限りない数であるが、そもそもの認識や議論の前提となる基礎資料がとにかく乏しい。『戦後強制抑留史』を基礎資料としてどの程度評価できるか、それはまた別問題であるが、それでもこのような資料が電子化され、インターネットで公開されていることの意義は評価したい。そして、官民を問わず、基礎資料の公開に一つの流れができてほしい。

・戦後強制抑留史
http://www.heiwa.go.jp/yokuryu/
総務省独立行政法人評価委員会(第9回)議事録(2005-09-24)
http://www.soumu.go.jp/singi/030924_1.html
・シベリア抑留及び旧ソ連邦による漁船だ捕・抑留に関する質問主意書
http://www.sangiin.go.jp/japanese/joho1/syuisyo/164/syuh/s164071.htm
谷博之
http://www.tani-hiroyuki.com/
・「戦後強制抑留史」正誤表
http://www.heiwa.go.jp/yokuryu/corrigenda.html
平和祈念事業特別基金
http://www.heiwa.go.jp/