国立科学博物館、タイプ標本データベースを公開

国立科学博物館がタイプ標本データベースを公開した(2007-03-01)。タイプ標本は生物の新種を発表する際にその基準として指定される標本のことという。このデータベースでは、タイプ標本として国立科学博物館が有する標本を画像と共に検索できる。画像を検索できる意義については、「タイプ標本データベース公開について」の中にある「画像データベースの意義」の項目に詳しい。

分類学的研究を行う中で、既知種と異なると思われる生物を発見することがあります。その場合、自分が採集した生物と似た生物を比較して、手元にある標本が新種なのか、既知種の変異個体であるかを決めなければなりません。既知種は過去に新種として報告されたことのある種のことです。新種発表の論文を読んで、既知種の特徴と手元の標本を比較することによって問題が解決することもありますが、既知種のタイプ標本を調べなければ結論を出せないこともあります。タイプ標本を調べるために博物館を訪問すると時間や経費が必要です。また、タイプ標本を郵便や宅配便で研究者に送ると、郵送途中でタイプ標本が傷んだり、失われる危険があります。実際、過去にタイプ標本が輸送中に失われた例があります。
このような問題を解決するために、国立科学博物館ではタイプ標本の画像をインターネット上に公開することにしました。画像を見れば、標本の重要な特徴を知ることができます。もちろん、インターネット上に公開された画像によって、すべての問題が解決するわけではありません。しかし、詳細な画像と論文に記載された情報を比較することが可能となるため、研究者にとって大いに役立つことは間違いありません。

タイプ標本データベースの意義が語りつくされている。非常にわかりやすい文章がすばらしい。この文章がデータベースの魅力を増しているだけに、データベースそのものが英語版でしか提供されていないのは残念。データベースの性格上、英語サイトとならざるを得ない理由は理解できるが、一般利用者向けに日英両語の併記といった形に改善されていくとうれしい。

なお、タイプ標本のデータベースは各地の大学や博物館で公開されており、日本分類学会連合では日本国内で所蔵されているたいぴ標本を検索できる日本タイプ標本データベース(JTYPES)を2003年に公開している。その後も各地でタイプ標本のデータベースが公開されていることを考えると、今後は複数のタイプ標本やその所在情報を横断的に検索する仕組みが必要とされそうだ。

・タイプ標本データベース
http://www.type.kahaku.go.jp/TypeDB/
・「タイプ標本データベース公開について」(国立科学博物館、2007-03-01)
http://www.kahaku.go.jp/news/2007/0301info.html
国立科学博物館
http://www.kahaku.go.jp/
・日本タイプ標本データベース(JTYPES)
http://foj.c.u-tokyo.ac.jp/jtypes/index-j.html
・日本分類学会連合
http://wwwsoc.nii.ac.jp/ujssb/