2007-04-24(Tue): 全国大学職員録の廃刊

朝日新聞夕刊(2007-04-23)の「窓 論説委員室から」によれば、「全国大学職員録」が昨年度版限りで廃刊となり、編集・刊行してきた廣潤社も解散したという。個人情報保護法を理由にデータの提供を断る大学が増えたためという。ちょうど2年前の編集日誌で懸念した事態がいっそう深刻になっているようだ。

東北大学が研究者紹介の公開を一時停止した。「独立行政法人等の保有する個人情報の保護に関する法律」の施行に基づく措置という。再開する方針とのことだが、再開する際は希望者のみの掲載にとどまるという。研究の公開性が損なわれる。

・「3/31『東北大学研究者紹介』を一時休止いたします」(東北大学広報・情報部広報課)
http://web.bureau.tohoku.ac.jp/koho/newtopics/new.htm#2005331
・行政機関・独立行政法人等の個人情報の保護(総務省行政管理局)
http://www.soumu.go.jp/gyoukan/kanri/kenkyu.htm

2005-04-24(Sun)の編集日誌
http://d.hatena.ne.jp/arg/20050501/1134800493

資料としての「全国大学職員録」だが、国立国会図書館が提供する「テーマ別調べ方案内」の「教職員名簿」の項目で、

大学の教職員名簿については、『全国大学職員録』(「国立大学編」と「私立大学編」に分冊刊行:廣潤社 年刊)があります。

http://www.ndl.go.jp/jp/data/theme/theme_honbun_102025.html

と真っ先に名前が挙がっているように、その価値と評価は確たるものがある。そう思うと廃刊は実に残念だ。

他方、科学技術振興機構JST)が提供する

・研究開発支援総合ディレクトリ(ReaD)
http://read.jst.go.jp/

が充実してきたこともあり、冊子体の『全国大学職員録』はその必要性が薄れつつあったのかもしれない。だが、研究開発支援総合ディレクトリ(ReaD)には、常に情報が更新されるという表裏一体のメリット、デメリットがある。都度データが更新されるため、経年的なデータの蓄積はされていかない。つまり、たとえば、1973年に全国の大学で情報処理を専門に掲げていた研究者の人数や氏名を調べるといったことはできない。解決策として、研究開発支援総合ディレクトリ(ReaD)が改善されていくという方向もあるだろうが、同時に『全国大学職員録』の継続も必要な方向性と思う。話を元に戻せば、廃刊に至る理由とされる各大学の個人情報の保護方針はやはり行き過ぎであり、見直されるべきではないか。研究者の場合、氏名や職位はもとより、学位や学歴、専門分野や生年月日といったデータが本当に個人情報にあたるのだろうか。

・『全国大学職員録(国公立大学編・私立大学編)〈平成18年版〉』(廣潤社編集部、2006年、35490円)
http://www.amazon.co.jp/gp/product/4875080719/arg-22/