2007-05-20(Sun): 病院機能評価や認定医の仕組みを活用できないだろうか

1週間ほど前に日本病院ライブラリー協会の研修会で講演させていただいた。

・「日本病院ライブラリー協会第32回総会および2007年度第1回研修会1日目」(編集日誌、2007-05-11)
http://d.hatena.ne.jp/arg/20070511/1178883071
・「日本病院ライブラリー協会2007年度第1回研修会で講演」(編集日誌、2007-05-12)
http://d.hatena.ne.jp/arg/20070512/1178958638
・「日本病院ライブラリー協会の後日譚」(編集日誌、2007-05-13)
http://d.hatena.ne.jp/arg/20070516/1179268812

その時から継続して考えていることに、病院に必須の機能として病院ライブラリーをどう位置づけられるか、ということがある。要は病院にとって、そこで働く医師や看護師に対して情報提供を行うライブラリー機能が必要であること、そのためにライブラリアンを雇用することが必要であることを対内・対外の両面でどうアピールできるか、ということだ。これを考えるヒントは日本病院ライブラリー協会の懇親会で、ある会員の方から病院ライブラリーを有しているということは、それだけ経営に余力があり、医療の充実を考えている病院といえるのではないか、と示唆していただいたところにある。

さて、日本では財団法人日本医療機能評価機構が病院機能評価という一種の審査を行っており、最近病院に行った方は、その認定証を目にしたことがあるかもしれない。

・財団法人日本医療機能評価機構
http://www.jcqhc.or.jp/

実はこの評価の中では「図書室機能」も評価対象となっている。評価項目の適用方法には細かな条件があるのだが、とりあえず詳細は以下の通り。

4.15 図書室機能

4.15.1 図書室機能が確立している

4.15.1.1 必要な施設・設備、人員等が整備されている
(1)図書室機能が整備されている
(2)担当者が配置されており、その業務内容が明確になっている
(3)病院設備として文献検索のCD-ROM、あるいは外部の文献情報センターにアクセス可能な病院のコンピューターシステムがある
◇図書室機能とは、書籍・雑誌の収納、全職員による閲覧が可能なことなどを指す

4.15.1.2 必要な図書・雑誌が確保されている
(1)図書購入の予算が確保されている
(2)各部門の要望に基づいて購入されている

4.15.2 図書室が適切に運営されている

4.15.2.1 図書室の利用促進と便宜が図られている
(1)各職種の職員が利用可能となっている
(2)24時間いつでも利用できる
(3)文献検索の手続きや費用負担を病院が支援している
(4)関連する大学図書館や他の病院の図書室から必要な文献が容易に入手できる

4.15.2.2 図書部門の業務手順が確立している
(1)全病院の書籍・雑誌を図書室で一括管理している
(2)新着図書リストなどを各部署に定期的に配布・伝達している
(3)図書カードや図書台帳により一定方式で分類・整理している
◇各部門・部署で必要な図書が保管されている場合は図書室で保管場所を把握している
◇管理・購入・図書についての職員への情報提供の手順などを確認する

4.15.2.3 図書部門の業務改善の仕組みがある
(1)図書委員会などが設置され、業務の改善を検討する場がある

(書面審査 自己評価調査票 一般病院版V5.0)

これだけをみれば、綿密な評価のように思えるが、病院機能評価自体が相当大掛かりなものなので、残念ながら図書室機能の評価の相対的な地位は低くなっているというのが実態のようだ。とはいえ、公的にもオーソライズされている評価指標が定まっていることの意味は小さくない。そこで思うのだが、この指標を土台にして、たとえば日本病院ライブラリー協会のような学協会が独自の病院ライブラリー認定制度を設けられないだろうか。手前味噌との批判はもとより承知の上だが、病院ライブラリアンたちが自らあるべき病院ライブラリーの要件を満たしている病院を認定し、資格証を発行していくことで、病院という組織の中で、ひいては社会の中で、病院ライブラリーというものの存在とその意義を訴えていく一つの手段とならないだろか。

では、このような病院ライブラリーの認定制度が病院にとって意味を持つだろうか。私は十分に価値があると思う。実際に病院を訪れたり、病院のサイトをのぞいてみればよくわかるが、いま病院は他の病院との差別化に必死な様子がひしひしと伝わってくる。病院機能評価の結果を掲出・掲載するのにとどまらず、学会認定医がいることや、衛生管理やプライバシー保護に関する国際規格を取得していることなど、いかにその病院が他と異なる特性を有しているかをアピールすることに汲々とすらしている。そこに一つ趣向の異なる認定病院ライブラリー設置病院といった肩書きが加わることは十分に歓迎されるのではないだろうか。部外者のとんちんかんな提案かも知れないが、ぜひ認定制度の可能性を考えてみてほしい。

この話は決して病院ライブラリーに限られた可能性ではないだろう。企業内図書館や大学図書館にも応用可能であると思う。関心のある方のご意見をぜひうかがいたい。

なお、病院機能評価の結果は日本医療機能評価機構によって公開されている。決して使い勝手のいいものではなく、この情報公開姿勢は大いに不満だが、それでもないよりはまだましかも知れない。

・病院機能評価結果の情報提供
http://www.report.jcqhc.or.jp/