2007-06-25(Mon): 「能力のある方が、公的な形で表にあらわれてこないのは、大学図書館界の損失」発言の反響を受けて

図書館員のブログに匿名が多いことは惜しいという思いを書こうと思っていたのだが、自分の発言に端を発して、

・katz3さん「事務職の憂鬱」(図書館断想、2007-06-21
http://d.hatena.ne.jp/katz3/20070621
・min2-flyさん「"Library Engineer"」(かたつむりは電子図書館の夢をみるか、2007-06-22)
http://d.hatena.ne.jp/min2-fly/20070622/1182467036
MIZUKIさん「図書館員の「評価」って?」(日々記―へっぽこライブラリアンの日常―、2007-06-24)
http://hibiki.cocolog-nifty.com/blogger/2007/06/post_9c84.html

と盛り上がっているので、まずはこのことについて。

先日6月9日に国立情報学研究所オープンハウスの一環として行われたCSIワークショップ「図書館目録の将来:ユーザの視点から、図書館の視点から」にスピーカーとして参加した。

・「国立情報学研究所オープンハウスで講演「図書館目録の将来:ユーザの視点から‐ユーザーの拡大を受けて」」(編集日誌、2007-06-09)
http://d.hatena.ne.jp/arg/20070610/1181443486

そのとき受けた質問に対して、

能力のある方が、公的な形で表にあらわれてこないのは、大学図書館界の損失。他にもたくさん埋没している人材が全国にいるはず。

と私が答えたのは、

・sinngetuさん「CSIワークショップ」(司書になりたい図書館員の日記、2007-06-08)
http://d.hatena.ne.jp/sinngetu/20070608/

にまとめられている通り。これを次々に受ける形で図書館関係者から、

研究開発を主にする部門がNIIだかNDLだかにできて、気骨あるクリエイティブな図書館員が集結するしか道はないのかな、なんて。

・katz3さん「事務職の憂鬱」(図書館断想、2007-06-21
http://d.hatena.ne.jp/katz3/20070621

「図書館」って枠を超えて「学術情報流通」ってことであれば、学術出版社系に飛び込む、とかいう戦略もあるのかも知れない。

・min2-flyさん「"Library Engineer"」(かたつむりは電子図書館の夢をみるか、2007-06-22)
http://d.hatena.ne.jp/min2-fly/20070622/1182467036

最大の問題っていうのは、かつての事務官、所謂一般職、事務職である図書館員が何か研究活動的なことを行ったとしても、教員あるいは研究機関の研究員と違って、それを「業績」「キャリア」としてカウントする制度がないということだと考えます。

MIZUKIさん「図書館員の「評価」って?」(日々記―へっぽこライブラリアンの日常―、2007-06-24)
http://hibiki.cocolog-nifty.com/blogger/2007/06/post_9c84.html

といった提案が出されている。どの案も一理あるが、まずは国立情報学研究所(NII)や国立国会図書館にここでこそナショナルセンターとしての力を発揮してほしいとは思う。実際、

・「「見えなかった情報」を可視化‐NII、論文300万件をGoogle検索対象に」(ITmedia News、2007-05-25)
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0705/25/news041.html

といった記事や、自分自身の見聞からすると、国立情報学研究所(NII)では職員が活躍できる可能性は結構大きいように思う。ただ、どうせならkatz3さんが指摘しているように「やるとなったら一日中没頭できる環境」は欲しい。たとえば、国立情報学研究所(NII)に新設された

・学術コンテンツサービス研究開発センター
http://www.nii.ac.jp/cscenter/

のような組織のメンバーに研究者だけではなく、別の職種の人間を集めてみることはできないのだろうか。学術コンテンツサービス研究開発センターの可能性ももっと広がると思うのだが。同センターのメンバーには、研究者としてだけでなく技術者としても優秀な方々が集まっているが、それだけでは足りないものがある。失礼を承知で、自分自身のIT企業でのプロデューサー経験に基づいていえば、やはり優れたプロジェクト研究が実際そうであることが多いように、

  • プロデューサーを務める人間
  • ディレクターを務める人間
  • エンジニアを務める人間
  • デザイナーを務める人間
  • カスタマーサポートを務める人間

と、多種多様な人材が揃っていたほうが、もっといいものができるに決まっている。必ずしも図書館員に限定する必要はなく、min2-flyさんがいうように「学術情報流通」という大きな枠で考えて、優秀な人材を集めてみてはどうだろう。図書館員にとっても福音となるのではないか。

しかし、ここまで書いてきてあらためて気づいたが、要は「研究開発」と「サービス提供」とが分かれていることに問題があるのではないか? 学術コンテンツサービス研究開発センターもそうだが、その組織の業務範囲を「研究開発」までと区切ってしまうと、いわゆる研究者だけですべてがまかなえるように思えてしまうのではないか? おそらく図書館員の方々は「研究開発」自体が目的ではなく、せっかくのアイデア、それも日常の業務の中での気づきから得られたアイデアを具体的な形で実現することを求めているのだろう。katz3さんの「必要なのはもっとプラクティカルなものだろ」という言葉はそういう意味として受けとりたい。であれば、まずは「研究開発」と「サービス提供」とが一体化している組織を求めることが先決かもしれない。まずこの点をクリアにしていくと、MIZUKIさんが指摘している「研究活動的なことを行ったとしても、教員あるいは研究機関の研究員と違って、それを「業績」「キャリア」としてカウントする制度がない」という問題もとらえ方の角度を変えて考えられそうだ。

と、きりがないので、まずはここまでにしたいが、こういう問題こそ、次の週末にある

2007-06-30(Sat):
第16回大図研オープンカレッジ「大学図書館は○○をアピールせよ!! わたしたちの「2007年問題」」
(於・神奈川県/鶴見大学
http://www.daitoken.com/events/events.html#doc

で議論されるべきではないか?

この催しでは、タイトルの○○部分を参加者にアンケートし、その結果をディスカッションのテーマに反映するという。いまの私のテンションであれば、ぜひ「大学図書館は人材をアピールせよ!!」を推したいところだが、さてどうなるだろうか。