2007-10-15(Mon): 藤田節子著『キーワード検索がわかる』(ちくま新書、2007年、756円)

キーワード検索がわかる (ちくま新書)

刊行前から気になっていた

・藤田節子著『キーワード検索がわかる』(ちくま新書、2007年、756円)
http://www.amazon.co.jp/gp/product/4480063854/arg-22/

を読む。自分には良くも悪くも期待通り、想定通りだった。

図書館情報学における「情報検索」については非常に良い手引きとなっている。コンパクトな新書という形で刊行された意義も大きい。この点においては本書は図書館関係者を中心に一読を勧めたい一冊である。

だが、他方、本書の帯にある「情報のプロが書いたネット検索の技術」というキャッチコピーに代表される、本書がインターネット検索の手引書であるかのようなアピールには懸念も持つ。

藤田さんは本書において、インターネットの情報検索の検索対象を

  1. デジタルコンテンツの集合体
  2. データベース

に分けて考えているが(32〜34頁)、そもそもこの定義に無理を感じる。データベースの例に挙げられている日経テレコン21のような有料のデータベースを検索することを、インターネットでの情報検索というだろうか。それはあくまでインターネットを経由した情報検索に過ぎず、インターネットそのものを検索する情報検索とはまったく次元が異なる話だ。この面での本質的な差を説くことなく、インターネットの情報検索の検索対象はデジタルコンテンツの集合体とデータベースであるとするのは乱暴過ぎる。

その他、こまごまとは挙げないが、本書におけるインターネット理解には危うさを感じるところが少なくない。このテーマで本を書くのであれば、図書館情報学の枠内にとどまっていてはいけない。たとえば検索エンジンについて、その仕組みや現状を正面から理解する努力が求められるだろう。