2008-07-03(Thu): 深見嘉明著『ウェブは菩薩である−メタデータが世界を変える』(NTT出版、2008年、1575円)

すでに一戸信哉さんが紹介しているが、

・「深見嘉明「ウェブは菩薩である」」(ICHINOHE Blog、2008-06-29)
http://shinyai.cocolog-nifty.com/shinyai/2008/06/deepen_yoshiaki_a610.html

ウェブは菩薩である

・深見嘉明著『ウェブは菩薩である−メタデータが世界を変える』(NTT出版、2008年、1575円)
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4757102410/arg-22/

を読む。

書名の「ウェブは菩薩である」はいささかトリッキー。副題の「メタデータが世界を変える」のほうが内容を正確に表している。

目次は以下の通り。

  • プロローグ:ウェブの本質は細部に宿る
  • 第1章:「才能の無駄遣い」というラベル
  • 第2章:空気の読めないグーグル先生
  • 第3章:プッシュからプル、ふたたびプッシュへ
  • 第4章:代理人(エージェント)はメタデータで動いている
  • 第5章:フォルダを捨て去ったグーグル
  • 第6章:アマゾンはワタシよりもワタシの好みを知っている?
  • 第7章:合コンでのアドレス交換とマイクロフォーマットの意外な関係
  • 第8章:「これはひどい」で共振するコミュニティ
  • 第9章:人の目線でものを見る方法
  • 第10章:デルのリアルとアマゾンのリアル
  • 第11章:意図せざる協働
  • エピローグ:メタデータが世界を変える

具体的な事例をわかりやすいイラストを添えながら非常に丁寧に解説している。もっともウェブのソーシャル化をすでに実感している人には当然と思える話が多いだろう。だが、まだ実感できていない層には、いま起きているウェブの変化・進化が理解しやすい一冊だ。とはいっても初心者向けと限定する必要はない。著者は本書の対象をこう記している。

この本は

  • 日常的にウェブを利用しているけれど、いまいちそのしくみがよくわからないと思っている方
  • ウェブの進化、次世代ウェブと呼ばれるプラットフォームに興味・関心がある方

はもちろん、

  • 情報システムやウェブ関連の仕事に携わっている方
  • ウェブサービスを設計したり、提供したりしている方

にも読んでいただきたいです。

・「いよいよ明日、6月30日発売です。」(deepen〜Yoshiaki FUKAMI's view、2008-06-29)
http://d.hatena.ne.jp/yofukami/20080629/1214736973

自分の場合は「ウェブサービスを設計したり、提供したりしている方」にあたるが、あらためていまの事象を整理する上で大きな助けとなった。この点では、少し前に刊行された

新・データベースメディア戦略。オープンDBとユーザーの関係が最強のメディアを育てる

橋本大也・宇佐美進典・潮栄治・佐藤崇著『新・データベースメディア戦略−オープンDBとユーザーの関係が最強のメディアを育てる』(インプレスジャパン、2008年、1890円)
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4844325329/arg-22/

よりはるかにわかりやすい。

本書を読みとおしていただければ、今ウェブで生じている現象、そしてこれから先ウェブで実現されること、さらにウェブの進化が現実社会に及ぼす影響まで見通すことのできる見取り図を手に入れていただけると自負しています。

・「いよいよ明日、6月30日発売です。」(deepen〜Yoshiaki FUKAMI's view、2008-06-29)
http://d.hatena.ne.jp/yofukami/20080629/1214736973

という著者の狙いはかなりの程度達成されていると思う。

次の課題と感じたことを一点だけ記しておこう。本書ではメタデータの意義が大いに語られているが、そのメタデータ集合知の関係がまだ語りつくされていないように思う。世界を変えていくであろうメタデータが、どのように構築されるべきなのか、この内実にもっと踏み込んでいってほしい。

ところで、巻末にある國領二郎さんによる解説文にこうある(215頁)。

深見論文の発表会で、同僚の研究者が「分類は権力だ。分類の大衆化は革命だ」と喝破したのが印象的だった。

この同僚の研究者とはどなただろう。非常に気になる。