2009-11-22(Sun): Wikimedia Conference Japan 2009に参加−基調講演等のセッション開催に協力

1週間のイベントラッシュも今日で小休止。今日はセッション協力として関わっている

2009-11-22(Sun):
Wikimedia Conference Japan 2009
(於・東京都/東京大学 本郷キャンパス
http://www.wcj2009.info/

へ。

冒頭にWikipedia創設者の一人であるJimmy Walesジミー・ウェールズ)さんによるビデオメッセージが流れ、次いでJay Walsh(ジェイ・ウォルシュ)さん(ウィキメディア財団広報部長)による基調講演1"Helping you build Wikipedia: How the Wikimedia Foundation supports the growth of Wikipedia and our free knowledge projects around the world "が行われた。

・「First Wikimedians' Conference in Japan」(Wikimedia blog、2009-11-21
http://blog.wikimedia.org/2009/11/21/first-wikimedians-conference-in-japan/

ウォルシュさんの話は主にWikipediaの歴史とグローバルな展開についてといったところだろうか。Wikipediaに詳しい方々にとっては物足りない内容だったかも知れないが、Wikipediaに関する最初の大規模な催しというこのイベントの性格を考えると妥当だったと思う。以下、自分のメモとして。

・「20億の文字、1400万の記事、400万の画像、250の言語で構成されているのが、Wikipediaであり、世界最大の百科事典」
http://twitter.com/arg/status/5933991203
・「Wikipediaのお誕生日は2001年1月15日」※誤変換修正済み
http://twitter.com/arg/status/5934010010
・「"Asuume Good Faith" and "Be Bold" Become Key Ideas.」
http://twitter.com/arg/status/5934078920
・「Common Questions: Who is in charrge?, Why do people edit?, Who fact-checks Wikipedia?, How can you operate without experts?, Why are there no ads?」
http://twitter.com/arg/status/5934140896
http://twitter.com/arg/status/5934191441

各言語ごとのWikipediaを比較すると、日本のWikipediaポップカルチャーに関する記事が突出して多いという発言があった。すでにしばしば指摘されている点ではあるが、他の言語と比較したグラフだったので衝撃的だったようだ。そもそもポップカルチャーへの偏重の善悪を論じることにあまり意味を感じないのだが、個人的にはウェブ情報におけるWikipedia以外のポップカルチャー情報の量や、日本語版Wikipediaが手薄とされるジャンルの情報がWikipedia以外のウェブにどれくらい存在するのか、といった観点での調査は面白いのではないだろうか。

この後は、長尾真さん(国立国会図書館)による「辞書・事典とは何か−その体系性・網羅性・信頼性を求めて」と題した講演。

副題にある通り、「体系性」「網羅性」「信頼性」という3つの観点から、「辞書・事典とは何か」を論じ、それらの議論を踏まえた上でWikipediaのさらなる向上のために「体系性」「網羅性」「信頼性」という観点からの課題を指摘されたという感じだろうか。また、これはまだ感覚的な印象に過ぎないが、長尾さんは「信頼性」という言葉と、「正確性」という言葉を、意識的に使い分けていたように思う。これは機会があれば、一度ご本人にうかがってみたい。

さて、コーディネーターとしては、NHKニュースによる

国立国会図書館の長尾真館長が「ウィキペディアは誰でも記事を書けるだけに、まちがった記事も多く、学問の世界でそのまま利用することは難しい。便利なサービスだが、利用者は記事の内容を別の文献で再度チェックするなど注意する必要がある」と課題を指摘しました。

・「ウィキペディアを考える催し」(NHKニュース、2009-11-22)
http://www.nhk.or.jp/news/t10013948991000.html

というまとめ方は、それこそ正確性に欠け、メディアとしての信頼性を疑うというのが正直な感想。考えようによっては、Wikipediaとは別のドメインに存在するメディアが今回のイベントをどのように報道するかを注視すると、「信頼性」や「正確性」を考える上での良い教材になるのかも知れない。

その後は、人文セッションの会場にほぼ常駐し、吉川仁さん(京都大学) 、當山日出夫さん(立命館大学)、三宅なほみ(東京大学)Ks aka 98さんによる「ウィキペディアと「学び」」、黒木重昭さん(ネットアドバンス)による「紙の百科事典からデジタル百科事典への歩み−一出版人からのレポート」、津野海太郎さんによる「百科事典とコンピュータ文化」を拝聴。

なお、

・「Wikimedia Conference Japan 2009へのセッション協力」(編集日誌、2009-10-03
http://d.hatena.ne.jp/arg/20091005/1254674387

の時点ではプログラム未定のため明かせなかったが、結局今回セッション協力としてお手伝いしたのは、

・基調講演2「辞書・事典とは何か−その体系性・網羅性・信頼性を求めて」
・人文セッション「ウィキペディアと「学び」」
・人文セッション「紙の百科事典からデジタル百科事典への歩み−一出版人からのレポート」
・ポスター・デモ展示(国立国会図書館科学技術振興機構国立情報学研究所、ネットアドバンス)

の4点。ポスター・デモ展示は来客が少ないのではないかと案じていたが、関心が高かったようでなにより。


全体的な感想としては、基調講演以降は6つのセッションの並行開催ということで来場者の分散を恐れていたが杞憂に過ぎなかった。恐らく終日では300名近い参加者だったのではないだろうか。雨も降り、師走並みの寒さの中、これほどの人数が集まったことに感動する。また、参加者も多様だった。Wikipedianのみならず、研究者、技術者、ジャーナリスト、編集者、ブロガー等、他のイベントではなかなか類をみない顔ぶれだったと思う。イベントに対して問題点や課題を挙げることは簡単だが、とにもかくにも開催にこぎつけ、事故なく無事開催をやり遂げたことにまず拍手したい。そして、なによりも基調講演の間も、各セッションの間も、受付等の事務に走り回っていたWikipedian有志の方々と東京大学知の構造化センターの方々に感謝したい。Wikipediaがそうであるように、Wikimedia Conference Japan 2009もその裏にいる人々の行為があればこそ存在しているのだから。