国立国会図書館、広報強化方針を公開

国立国会図書館が広報強化方針を公開した(2006-10-26)。推進する施策やその成果に対する理解の促進、事業の透明性や信頼性の向上、社会環境の変化への対応を理由に、次の5つの方針をうたっている。

  1. 広報の目標
  2. 能動的広報の強化
  3. 広報対象に応じた的確な広報
  4. 適切な広報手段・方法の活用
  5. 全館的な体制の強化
    1. 部局を超えた情報の発信
    2. 広報体制の再構築
    3. 広報マインドの向上

国立の機関がこのような方針を明示すること自体が稀であることを思うと、国立国会図書館の今回の発表は英断といっていいだろう。ここに至るまで内部で相当な議論があったことと想像する。関係者の尽力に敬意を払いたい。特に方針の5点目に挙げられている「全館的な体制の強化」に期待したい。徐々に改善されつつはあるものの、これまでの国立国会図書館の広報体制は部門単位の取り組みを外部に感じさせるものだった。たとえば、国立国会図書館の部門である国際子ども図書館のサイトの新着情報が国立国会図書館のサイトには掲載されなかったり、国内の公共図書館向けの新着情報が国立国会図書館のサイトのトップページには掲載されないことが多かった。こういった点が引き続き改善されるよう望みたい。
と、同時に各部局ごとの独自性や創造性を失うことがないように十分に配慮してほしい。広報強化を打ち出したものの、結果的に広報部門の管理体制だけが強まり情報発信の目詰まりを起こすことがあってはならない。たとえば、国立国会図書館関西館を中心に取り組まれている「Current Awareness Portal」のようなサイトでの発信内容を逐一広報部門が事前チェックするということになってはいけない。あくまで各部門に責任者を置き、自律・分散を原則に、広報部門が各部門の協調関係を育むという体制をとってほしい。自律・分散・協調という原則を維持してはじめて、広報の強化が実現されるはずだ。
なお、方針の4番目の「適切な広報手段・方法の活用」に、「広報目的に応じて有効な広報手段を使い分ける」という一文がある。両面に解釈できるので一概にはいえないが、開放的な方向に進んでほしい。現時点での課題として感じることを例に述べておこう。国立国会図書館は「図書館協力ニュース」というメールマガジンを発行している。このメールマガジンのページには「図書館あるいは図書館員であればどなたでも配信登録ができます」と記されている。配信登録をする際には、所属する図書館名や図書館の所在地、館種を入力しなくてはいけない。善意に解釈すれば、あくまで図書館関係者向けの情報であり、一般の市民が読んでも役に立たない、という判断があってこうなっているのだろう。だが、その判断をするのは情報を発信する側である国立国会図書館である必要はない。その情報を受け取るかどうかという判断は読み手にゆだねればよいことだ。「広報目的に応じて有効な広報手段を使い分ける」ということは当然のことではあるが、この考え方がこの情報を必要とするのは誰それである、という予断と結びつかないようにしてほしい。そして、図書館関係者向けのこの情報はメールマガジンで図書館員に配信し、一般の市民向けの図書館情報は別の手段で提供すればいい、という考えに行き着かないようにしてほしい。重ねて言うと、出せる情報、出したい情報、出すべき情報があれば、すべてを誰に対してでも発信し公開すればいいのであって、過度に利用者層を想定し、結果として限定し、特定の層だけに情報が発信されるということになってはならない。
先の一文は「広報目的に応じて有効な広報手段を使い分けるとともに、効果的・効率的に広報できるよう常に見直しを図る」と続いている。であれば、ぜひまずは「図書館協力ニュース」の配信方法を見直してほしい。方針の公表を受けて国立国会図書館には様々な声が寄せられるだろう。その負担の大きさはよくわかる。だが、こういった声一つひとつに主体的に応えていくことこそが、この方針が目的とする市民の理解や協力、市民による国立国会図書館の活用へとつながっていくはずだ。

・広報強化方針
http://www.ndl.go.jp/jp/aboutus/public_relations.html
・Current Awareness Portal
http://www.dap.ndl.go.jp/ca/
メールマガジン『図書館協力ニュース』
http://www.ndl.go.jp/jp/library/library_news_toroku.html
・『図書館協力ニュース』配信登録
https://blue.tricorn.net/ndl/mbr2.x
国立国会図書館
http://www.ndl.go.jp/