2006-12-31(Sun): 2006年を振り返る −ACADEMIC RESOURCE GUIDE(ARG)と岡本真にとっての2006年

2006年の終わりにあたり、−ACADEMIC RESOURCE GUIDE(ARG)と自分自身について、この一年を振り返っておこう。

ちなみに、2006年1月1日の編集日誌では、次のような抱負を述べている。

  1. 年間を通して定期発行し、ISSN(国際標準逐次刊行物番号)を取得する。
  2. 『これからホームページをつくる研究者のために』(仮題)を出版する。
  3. 複数のテーマについて調査報道と呼ぶに値する記事を執筆し、発表する。
  4. 「インターネットの学術利用」をテーマにしたシンポジウムを開催する。
  5. 主として研究者を対象としたインターネットサービスを新たに開始する。

以上5点。数字は優先順位。

まとめれば、ACADEMIC RESOURCE GUIDE(ARG)の活動をより明確に目に見えるものとして、知る人ぞ知るという段階から一歩先に進めていこう。
http://d.hatena.ne.jp/arg/20060104/1136301343

さて、1年を経て実際はどうだったろうか。

「年間を通して定期発行し、ISSN(国際標準逐次刊行物番号)を取得する」については、2006年は毎月5日、15日、25日発行は実現できなかったものの、月3回の発行は維持し年間を通して36回の発行となった。編集者としての責任という意味では、最低限のレベルはクリアと自分では思いたい。

さて、寄稿記事では非常にすばらしい論考に恵まれた。2006年に掲載した寄稿記事は次の6本になる。

  1. 林賢紀・兼宗進「新着だけではもったいない −学術分野でのRSS普及に向けて」(対談)(第241号、2006-05-05
  2. 松岡良樹「デジタルで広がる『和英語林集成』の世界」(第242号、2006-05-10
  3. 古賀崇「『入門・アーカイブズの世界』刊行に寄せて―記録とアーカイブズの新たな地平をひらくために―」(第249号、2006-07-17
  4. 筑木一郎「図書館ニュースを届ける:カレントアウェアネス-Eの編集経験とカレントアウェアネス-Rへの道のり」(第251号、2006-08-06
  5. 安藤和実「新しい図書館の情報発信として −ブログとSNSの可能性を探る−」(第260号、2006-11-05)
  6. ジャパンファウンデーション国際交流基金)第1期ブログチーム「「地球を、開けよう。」ブログをめぐる冒険 −JFブログチームの一年間」(第265号、2006-12-26)

特に下半期は、古賀崇さん(1974年生まれ)、筑木一郎さん(1978年生まれ)、安藤和実さん(1978年生まれ)、ジャパンファウンデーション国際交流基金)第1期ブログチームと、私よりも若い世代に執筆いただけたことがうれしい(もちろん、林賢紀さんや兼宗進さん、松岡良樹さんにも心から感謝している)。
思えば、25歳の頃にACADEMIC RESOURCE GUIDE(ARG)を始めた当初は、周囲の方々から私自身が「ずいぶんとお若い方だったのですね」といわれることが多かった。しかし以来8年。私は33歳となり、まだまだ若輩ではあるものの、決して若いほうでもなくなってきた。このことは方々で様々な方々にお目にかかるたびに実感する。話をしている相手方が聞けば自分と同年代やさらに数年若い世代であることが珍しくなくなってきた。
そして、25歳から33歳に至るまでの若い私に多くの先輩方が機会を与えてくださったように、私も自分より若い世代の意思と才能にあふれる方々に少しでも多くの機会を提供させていただきたいと思っている。それだけにこの2006年に、1970年代生まれの6名の執筆者を迎えられたことがうれしいのである。

ところで、目標として掲げたISSN(国際標準逐次刊行物番号)だが、実はまだすべての手続きを終えていない。これは明年早々に完了させよう。

二番目の「『これからホームページをつくる研究者のために』(仮題)を出版する」は、当初の予定よりも遅れはしたが、2006年8月に無事刊行することができた。

・『これからホームページをつくる研究者のために −ウェブから学術情報を発信する実践ガイド』(築地書館、2006年8月)
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/480671335X/arg-22/

執筆にご協力いただいた方々、小著をお読みいただいた方々に感謝したい。これまでのところ、

  1. 「読売新聞」
  2. 出版ニュース
  3. 「情報管理」
  4. 漢字文献情報処理研究
  5. 「コンピュータ&エデュケーション」
  6. 「レコード・マネジメント」

と、計6媒体で紹介・書評していただいているほか、数多くのブログで言及していただき、各地の図書館に所蔵していただいている。

三番目の「複数のテーマについて調査報道と呼ぶに値する記事を執筆し、発表する」と、四番目の「インターネットの学術利用」をテーマにしたシンポジウムを開催する」は、残念ながらまったく手つかずだった。

他方、執筆や講演の機会を数多くいただき、執筆では、

  1. 「『これからホームページをつくる研究者のために』刊行を前にして ―いまなぜ研究者の個人ホームページなのか」(『情報管理』49-2、科学技術振興機構2006-05-01
  2. 「インターネットが研究を変えるために−業績評価サイクルの確立を目指して」(『情報管理』49-6、科学技術振興機構2006-09-01
  3. 「総論「価値観の交差点」」(『情報の科学と技術』56-9、情報科学技術協会、2006-09-01
  4. 「個人発の言論空間よ、再び−『これからホームページをつくる研究者のために』の刊行に寄せて」(メールマガジン「日本国の研究 不安との訣別/再生のカルテ」411、猪瀬直樹事務所、2006-09-14
  5. Web2.0時代の図書館−Blog, RSS, SNS, CGM」(『情報の科学と技術』56-11、情報科学技術協会、2006-11-01)

といった成果を、講演では、

  1. 「情報の流通とアクセス−これからの図書館をめぐって−」(公開シンポジウム「デジタル時代における図書館の変革 − 課題と展望 −」、2006-01-26、於・国立国会図書館東京本館新館講堂)
  2. Web2.0時代の図書館 −Blog、RSSSNSCGM」(情報科学技術協会 (INFOSTA)第49回通常総会・講演会・懇親会、2006-05-23、於・文京区民センター)
  3. 「インターネットは学術研究を変えるのか −研究者による個人サイトの公開事例に基づいて」(IIJ Webマーケティング勉強会2006年5月例会、2006-05-31、於・神保町三井ビルディング
  4. 「インターネット上での学術情報の収集・活用・発信 −三位一体のサイクルをめざして」(神奈川県資料室研究会2006年6月月例会、2006-06-16、於・神奈川県立川崎図書館2Fホール)
  5. 大学図書館問題研究会第37回埼玉大会課題別分科会「図書館システム」へのコメント(大学図書館問題研究会第37回埼玉大会、2006-08-06、於・さいたま共済会館)
  6. 「インターネットによるアウトリーチ活動の過去と未来:ウェブから学術情報を発信する実践講座」(第8回科学技術コミュニケーションデザインセミナー、2006-09-20、於・大阪大学吹田キャンパス先端科学イノベーションセンターVBL棟)
  7. 「図書館・図書館員のためのWebの情報発信」(大学図書館問題研究会京都支部京都ワンディセミナー、2006-09-23、於・京都市国際交流会館)
  8. 「ウェブで広がる図書館サービスの可能性 −Web2.0時代に向けて」(専門図書館協議会特別セミナー、2006-10-12、於・日本図書館協会会館)

といった成果を、それぞれ残すことができた。

私に機会を与えてくださった方々、私が書いたものを読んでくださった方々、私の話したことを聞いてくださった方々に感謝したい。

とはいえ、「複数のテーマについて調査報道と呼ぶに値する記事を執筆し、発表する」について、なにもできなかったわけではないかもしれない。たとえば、編集日誌では「政治の一貫性 −前知事のウェブ発信の削除と保存」を、これまで5回に渡って書き綴っている。

2006-10-09(Mon)の編集日誌
「政治の一貫性 −前知事のウェブ発信の削除と保存」
http://d.hatena.ne.jp/arg/20061011/1160503807
・2006-10-16(Mon)の編集日誌
「政治の一貫性 −前知事のウェブ発信の削除と保存(2)」
http://d.hatena.ne.jp/arg/20061019/1161188813
2006-11-07(Tue)の編集日誌
「政治の一貫性 −前知事のウェブ発信の削除と保存(3)」
http://d.hatena.ne.jp/arg/20061108/1162921614
2006-11-23(Thu)の編集日誌
「政治の一貫性 −前知事のウェブ発信の削除と保存(4)」
http://d.hatena.ne.jp/arg/20061125/1164424030
2006-12-07(Thu)の編集日誌
「政治の一貫性 −前知事のウェブ発信の削除と保存(5)」
http://d.hatena.ne.jp/arg/20061208/1165513723

本来であれば、このようなテーマを掘り下げて、記事としてまとめあげるべきであっただろう。

最後の「主として研究者を対象としたインターネットサービスを新たに開始する」も着手できないまま終わってしまった。だが、開始にまでは至らなかったものの、構想の一端は、

  1. 「インターネットが研究を変えるために−業績評価サイクルの確立を目指して」(『情報管理』49-6、科学技術振興機構2006-09-01

と、元旦に公開される

  1. 「学術研究プラットフォームとしてのネットサービスを夢見る −新たな学術コミュニティーと学術コミュニケーションに向けて」(『情報管理』49-10、科学技術振興機構2007-01-01

とで示すことができたのではないか。

以上、反省点も多々あるが、初の自著の刊行というニュースがあったことを思えば、まずは自分として満足すべきところだろうか。

最後になるが、ACADEMIC RESOURCE GUIDE(ARG)と私に関心を寄せてくださった方々へ1年分の感謝を申しあげたい。ありがとうございました。