2007-06-02(Sat): 蔵書検索(OPAC)はどこに向かうのか−書誌調整連絡会議の報告を受けて

図書館関係者のブログで、国立国会図書館の平成18年度書誌調整連絡会議の報告内容が話題になっている。この会議は「国内の書誌調整および書誌データの標準化を図ることを目的に、書誌データの作成および提供に関する諸事項について関係諸機関と定期的に協議を行うもの」で、出席者は以下の通り。

研究者、ライブラリアン、書誌作成企業の社員、そして国立国会図書館の職員と、まさに書誌・目録のプロフェッショナルで構成されている。

さて、反響を呼んでいるのは書誌調整連絡会議にコメンテーターとして参加している上田修一さん(慶應義塾大学教員)の次の発言である。

また昨今、現在のOPACは時代遅れとして、Web2.0を意識したOPACの改善提案がなされたりしている。しかし、連想検索機能を持つWebcat Plusよりも従前のWebcatのほうが使われているとのアンケート結果(「Webcat および Webcat Plus のサービスに関するアンケート集計結果」)に見るように、OPACを改善したり、新しい機能を加える方向はさほど支持されていないと言える。

・平成18年度書誌調整連絡会議報告
http://www.ndl.go.jp/jp/library/data/h18_conference_report.html

昨今、現在のOPACは時代遅れとして、Web2.0を意識したOPACの改善提案がなされたりしている。しかし、連想検索機能を持つWebcat Plusよりも従前のWebcatのほうが使われているとの調査結果(「WebcatおよびWebcat Plusのサービスに関するアンケート集計結果」<http://webcatplus.nii.ac.jp/enquote_result.html>(2007-3-26現在))に見るように、OPACをアイディアだけで「改善」したり、新しい機能を加える方向は利用者にはさほど支持されていないと言える。

・平成18年度書誌調整連絡会議記録集【PDF】
http://www.ndl.go.jp/jp/library/data/h18_conference_kiroku.pdf

なお、会議が開催されたのは、半年以上前の2006年11月30日であり、これらの発言も半年以上前のものである。当時と現在とではWeb2.0に対する認識も変化していることは意識したほうがいだろう。

・上田修一ホームページ
http://www.slis.keio.ac.jp/~ueda/home.html

上田修一さんのこの発言に対して、まず

・「うぇぶ2.0の器量を伏して」(図書館退屈男、2007-05-31
http://toshokan.weblogs.jp/blog/2007/05/post_3cd0.html

が書かれ、次いで「うぇぶ2.0の器量を伏して」を受けて、

・「だから人の気持ちを分かれと」(図書館断想、2007-06-02)
http://d.hatena.ne.jp/katz3/20070602

が書かれている。

OPACや、図書館とWeb2.0について発言してきている私も何事かを述べるべきだろう。

まず、上田さんの発言についてだが、OPACの改善は支持されていない、特にWeb2.0的な取り組みは支持されていないと主張するのに際して、

WebcatおよびWebcat Plusのサービスに関するアンケート集計結果
http://webcatplus.nii.ac.jp/enquote_result.html

を根拠にするのは妥当ではないだろう。これはアンケート自体の設計の問題でもあるが、WebcatWebcat Plusは異なるコンセプトに基づくものである。現時点では、Webcatは明確な答えがある際に有用なOPACであり、Webcat Plusは明確な答えがない際に有用なOPACである。本来、WebcatWebcat Plusは直接比較して意味があるものではない。
また、Web2.0を定義することは難しいとはいえ、Webcat PlusWeb2.0の要素を特に備えてはいない。つまり、現時点ではWebcat PlusWeb2.0のサービスではない。そのWebcat Plusの不人気さをもって、Web2.0的なOPACは支持されていないと結論づけるのは根拠に欠ける。
また、そもそも、このアンケートは主に図書館関係者が回答しており、一般の利用者の受け取り方とは異なる可能性がある。もし、「新しい機能を加える方向は利用者にはさほど支持されていない」と結論づけるのであれば、ここでいう利用者とは図書館関係者であるという限定が必要だろう。

Webcat Plus
http://webcatplus.nii.ac.jp/
Webcat
http://webcat.nii.ac.jp/

とはいえ、上田さんの批判を建設的な方向で消化するためには、Web2.0的なOPACの意味するところを整理するべきだろう。論者によって見解は多様だろうが、私は次世代のOPACには、こうあってほしいと願っている。

  1. 平易なインターフェース
    • すでに2003年に述べているが、Yahoo!Googleのような検索エンジンと同様に、OPACの検索ボックスを一つにし、「検索項目」「検索値」「一致条件」「論理式」や「タイトル」「件名」「内容細目」「責任表示」といった専門用語を一掃してほしい。
      • 参考:「利用者の目からみた図書館の目録−評価する点、改善すべき点、期待する点」(「現代の図書館」41-4、日本図書館協会、2003-12)
  2. ユーザー参加によるデータ作成
    • 書誌単位でのトラックバックやコメントの受付、タギングによる件名付与を試行してみてほしい。どのような結果が生まれるか、正直定かではないが、農林水産研究情報センターではすでに試みられている。
  3. 集合知の活用
    • 公共図書館全体での年間貸出点数は書籍の年間販売点数に匹敵する。この巨大データを集合知として活用し、利用者への推薦やOPACの検索結果の向上につなげてほしい。
      • 参考:「Web2.0時代の図書館 −Blog, RSS, SNS, CGM」(『情報の科学と技術』56-11、情報科学技術協会、2006-11-01)
  4. データの開放

この区分はあくまで私の観点からのものであり、別の区分も充分に可能だろう。ともあれ、上田さんの批判をきっかけに議論を深めていくのであれば、Web2.0という言葉を実体のないまま語らず、そこでいうWeb2.0がどのようなものを想定しているのか、この点をお互いに明確にすることが必要だ。そして、願わくば、図書館関係者に閉じた形ではなく、利用者は誰か、ということを常に問いかけながら議論してほしい。OPACの将来を語る上で利用者を図書館関係者と考えることは実態に反するはずだ。Web2.0が提起する考え方の一つである「利用者中心」や「顧客志向」の意味を尊重した議論を望みたいし、私自身もそう努めたい。