国立国会図書館、国立国会図書館デジタルアーカイブポータル(PORTA)を公開(2007-10-15)
国立国会図書館が国立国会図書館デジタルアーカイブポータル(PORTA)を公開した(2007-10-15)。PORTAは2005年5月から2007年9月までプロトタイプシステムとして公開されてきたNDLデジタルアーカイブポータルをリニューアルしたもので、今回正式版として公開されている。NDLデジタルアーカイブポータルと同様に国立国会図書館のコンテンツと国立国会図書館外の協力機関のコンテンツを横断して検索できる。検索できるのは、国立国会図書館内のコンテンツが12種類、国立国会図書館外の協力機関が提供するコンテンツ8種類の計20種類で、内外のコンテンツをあわせると約800万件のデータを検索できるという。検索対象となっているコンテンツの内訳は以下の通り。
- 国立国会図書館内
- 貴重書画像データベース
- 近代デジタルライブラリー
- 児童書デジタル・ライブラリー
- 貴重書サンプル
- 蔵書目録 (和図書・和雑誌)
- 雑誌記事索引 (2003年以降分)
- プランゲ文庫雑誌・新聞目録
- 児童書総合目録
- Dnavi(データベース・ナビゲーション・サービス)
- WARP(インターネット情報選択的蓄積事業)
- カレントアウェアネス
- レファレンス協同データベース
- 国立国会図書館外(協力機関)
国立国会図書館はPORTAの特徴として、
以上の3点を挙げているが、ブログやソーシャルブックマークで話題となっているように、今回のリニューアルの最大の特徴は、ユーザ登録を行えばパーソナライズ機能やブックマーク機能を利用できることだろう。特にソーシャルブックマークの開始は大きな衝撃だ。ここ数年、日本の図書館の世界でもWeb2.0への関心が高まり、ユーザー参加型のサービスの可能性が危惧とともに語られてきたが、いきなり一足飛びに実現したことに驚かされる。国立国会図書館が一躍、図書館のウェブ利用のトップランナーに躍り出た格好であり、それだけ反響も呼んでいる。これはこれで喜ばしい。だが、同時に忘れてはならないのは、ここに至るまでには様々な先行例があったことだ。たとえば農林水産研究情報センターによるMAFFIN News Feeds Centerである。先見性と一歩先に踏み出す勇気を備え、かつその過程と成果を惜しげなく共有してくれる先行事例抜きにはPORTAの登場を語ることはできない。この点はあらためて述べておきたい。
さて、サイトとしてみたPORTAについて数点記しておこう。ソーシャルブックマークは衝撃ではあるが、サービスとしてはまだ実用的ではない。まだ試行段階に留まるといえるだろう。そもそもソーシャルブックマークは一定の利用者数を確保しない限り、有効に機能しないという問題もあるが、それ以前の問題として使い勝手がよくない。このままでは利用者数が限られてしまう。最終的に図書館サイトにおけるソーシャルブックマークの可能性までが否定される結果にならないようなるべく早く改善してほしい。特にブックマークしたURLごとの個別ページを持たない構造は改善すべきだろう。一般的なソーシャルブックマークのサービスでは、
・はてなブックマーク - PORTA(国立国会図書館デジタルアーカイブポータル)
http://b.hatena.ne.jp/entry/http://porta.ndl.go.jp/
・Yahoo!ブックマーク - PORTA(国立国会図書館デジタルアーカイブポータル)
http://bookmarks.yahoo.co.jp/url?url=http://porta.ndl.go.jp/
という形でブックマークされたURLごとに個別ページを持ち、そのページに関連するブログ記事を取り込むなどして情報を集約している。このような構造がソーシャルブックマークの成功には不可欠と思われる。
その他、細かな点を挙げればきりがないが、あえて指摘すればJavaScriptを多用しすぎている点も大きな課題だろう。本来、リンクを何回もクリックし何枚ものページを移動する手間を省くために役立つJavaScriptだが、これほど多用してしまうとかえって使いづらさが増してしまう。
逆に感心するのは、収録しているデータが代わる代わる表示される「資料ピックアップ」の存在だ。800万件という巨大なデータを単なる数量にしてしまうのではなく、一件一件どのようなデータなのか、その顔が感じられるようになっている。今回の大リニューアルからすれば小さな点に思われるかもしれないが、中身を見せる工夫、想像させる工夫として実に秀逸だ。
また、PORTAとの連携が準備されており、今後に大いに期待させられる。「このサイトについて」以下で詳しく説明されているが、外部からPORTAの検索対象となるための方法、つまりPORTAにデータを提供する方法、そして外部からPORTAを検索する方法、つまりPORTAのデータを利用する方法が追って公開されるようだ。後者は一般にAPI(Application Programming Interface)と呼ばれ、近年非常に注目されている方法である。おそらくNDL-OPACや近代デジタルライブラリー、レファレンス協同データベースといった国立国会図書館の巨大なデータベースを外部から利用できるようになるのだろう。国立国会図書館以外の組織や個人が独自の付加価値をつけたサービスを開発・公開できるということであり、国立国会図書館の役割も根本的に変わる可能性がある。国立国会図書館の有する膨大なデータを用いて多様なサービスが続々と生み出されるように、ぜひAPIの利用に過大な制限を設けないようにしてほしい。
ただ、データの提供と利用が進んでいくと、PORTAの方向性も問われることだろう。単独のサービスとして機能や魅力の向上に取り組んでいくのか、それともデータプロバイダーとしての役割に特化していくのか、ということだ。もちろん、両者を均等に実現していくという選択肢もあるが、国立国会図書館としてはどのような選択をするのだろうか。最終的にはこの点に注目が集まるだろう。国立国会図書館には、ぜひその方向性についても積極的に情報を発信し、利用者の声に耳を傾けつつ、意志決定をしていくよう願いたい。
なお、PORTAの公開については、国立国会図書館がここに至るまでの過程に注目した記事を別に書き上げている。掲載・配布される段階でまた追ってご案内したい。
・国立国会図書館デジタルアーカイブポータル(PORTA)
http://porta.ndl.go.jp/
・「国立国会図書館デジタルアーカイブポータル「PORTA」の公開について(付・プレスリリース)」(国立国会図書館、2007-10-15)
http://www.ndl.go.jp/jp/information/news.html#071015_01
・「国立国会図書館デジタルアーカイブポータル「PORTA」の公開について」【PDF】
http://www.ndl.go.jp/jp/information/pdf/pr_071016.pdf
・「NDL、デジタルアーカイブポータル「PORTA」公開」(カレントアウェアネス-R、2007-10-15)
http://www.dap.ndl.go.jp/ca/modules/car/index.php?p=4308
・国立国会図書館
http://www.ndl.go.jp/
・「国立国会図書館、NDLデジタルアーカイブポータルの閉鎖を予告」(新着・新発見リソース)
http://d.hatena.ne.jp/arg/20070924/1190606551
・MAFFIN News Feeds Center
http://www.affrc.go.jp/ja/rss/
・農林水産研究情報センター
http://ss.cc.affrc.go.jp/ric/home.html
・「国や公共機関、約800万件のデジタルコンテンツを一元検索できる「PORTA」」(マイコミジャーナル、2007-10-16)
http://journal.mycom.co.jp/news/2007/10/16/027/
・「国会図書館、約800万件のデジタルデータを検索できるポータル「PORTA」」(INTERNET Watch、2007-10-16)
http://internet.watch.impress.co.jp/cda/news/2007/10/16/17199.html
・「国会図書館が書籍検索ポータル開設 ソーシャルブクマ・RSSリーダー付き」(ITmedia News、2007-10-17)
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0710/17/news075.html
・「国立国会図書館がソーシャルブックマークを始めると誰が予想しえたのか。」(図書館退屈男、2007-10-15)
http://toshokan.weblogs.jp/blog/2007/10/post_4226.html
・「眠れる巨人が目覚めた?」(ダメな図書館員の日々、2007-10-16)
http://d.hatena.ne.jp/garugon/20071016
・「やりやがった、NDL」(かたつむりは電子図書館の夢をみるか、2007-10-15)
http://d.hatena.ne.jp/min2-fly/20071015/1192466048
・「ぽ☆るた(PORTA)」(日々記−へっぽこライブラリアンの日常−、2007-10-15)
http://hibiki.cocolog-nifty.com/blogger/2007/10/post_9c5c.html
・「話題のNDL・PORTAを使ってみた!」(HVUday、2007-10-17)
http://hvuday.seesaa.net/article/61074020.html
・「国立国会図書館「PORTA」がスタート」(WIRED VISION / 関裕司の「サーチ・リテラシー」、2007-10-18)
http://wiredvision.jp/blog/seki/200710/200710181100.php